上海領事館から下記のメールを受信した方も多いと思います。

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在上海日本国総領事館からのお知らせ
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香港における上海ガニからの基準を超えるダイオキシン検出について

香港において、中国江蘇省の水産業者2社が養殖した上海ガニから基準を超えるダイオキシンが検出されたことにより、当該水産業者2社が養殖した上海ガニの香港への輸入・販売を停止する事件が判明しました。
香港特別行政区政府・食物環境衛生署食物安全中心(食物安全中心)の発表によれば、中国江蘇省の水産業者である「呉江万頃太湖蟹養殖有限公司」と「江蘇太湖水産有限公司」が養殖した上海ガニを食物安全中心が検査したところ、
5つのサンプルのうち2つから基準を超えるダイオキシンが検出されたため、食物安全中心は、当該水産業者2社が養殖した上海ガニについて、香港への輸入・販売を停止するとともに、輸入業者に回収を指示し、11月3日までに約800キログラムが回収されたとしております。(以下略)

こういうメールはありがたいですね。でもちょっぴり残念なことに、どのくらい危険なのかが書かれていない

 

写真はこちらのHakkasanのHPから引用。これ見たら食べに行きたくなる。

 

◆  今回の蟹のダイオキシン量について

 

他の報道で調べると、今回2つの蟹サンプルから検出されたダイオキシンは1g当たり11.7または40.3pgTEQでした(pgTEQというのはダイオキシン類が単一の物質でないので、換算の上、総量を表す単位だと思っていい)。香港の検出基準は1gあたり6.5pgTEQですから、この2つのサンプルはそれをオーバーしている。決まりは決まりですから、これらの基準値を超えた蟹は回収するしかないですね。

 

日本では香港とちがい、食品基準は設定されていない(環境基準値はある)のですが、1日の耐容摂取量として、体重1kgあたり4pgTEQという値があります。体重60kgの人では1日耐容摂取量は240pgTEQになる。上記の蟹の濃度の高い方だと、(たった)6g相当の蟹を食べると、この基準をオーバーします。

 

少し小さめの「毛がに」は可食部が120gくらいです。上海蟹はそれより小さいので、1杯の食べられるところを多めに見積もって100gと仮定すると、上記の蟹(40.3pgTEQ/g)に含まれるダイオキシンは4030pgTEQとなり、体重60kgの人の1日耐容摂取量17日分になる…と計算はできますが…。

 

◆  で、食べたらどうなるのか

 

いま問題になっている上海蟹を食べてもすぐには何も起こらないでしょう。即死することもありません。

 

ダイオキシン類の研究は遅れていて、いまのところ、人の致死量はわかっていません。しかし今までの研究から、4030pgTEQを一気に食べても死ぬことはありません。

 

そうすると耐容摂取量って何なんだという話になります。

 

◆  耐容摂取量とは

 

これは、毎日継続して食べ続けると健康被害が出る(危険性が高まる)と考えられる量の目安です。一時的に多くなっても、心配ありません

 

ただし当然ですが、耐容摂取量までなら食べても安全という意味ではありません。ダイオキシン摂取は限りなく少ない方がいいに決まっている。

 

◆  ダイオキシンの何が問題か

 

ダイオキシンは、それ自体が発がん物質でなく、まわりの発がん物質の作用を強める物質と考えられています(ここは研究者により異論があります)。

 

ダイオキシンはとても安定した物質で、脂肪によく溶け、人でも動物でも体内に入ると脂肪組織に蓄積します。1度体内に取り込まれると半分になるまでに5~10年もかかるといわれます。

 

ですので、将来、がんにかかるリスクを減らすには、摂取を減らした方がいいのです。

 

ただ、ダイオキシン摂取はゼロにできません。私たちは毎日、知らずにダイオキシンを食べています。人間の体に入るダイオキシンはほとんどが食物由来で、特に魚介類からです。たとえばマグロは、ものによって1gあたり0.025から(なんと)26pgTEQのダイオキシンを含みます。上の理由で、脂の乗った部位ほどダイオキシンが多いです。

 

寿司屋で中トロも食べられないなら、日本人やってられませんよね。要はバランスよく食べ、1つのものを摂取し続けないことが大事なのです。

 

◆  もっと問題なこと

 

自分はもっと別のことが気がかりです。

 

①ダイオキシンよりも問題なのは、養殖場で不適切に投与されたり、環境中に排出され続けている抗生物質が、どのくらい蟹などの食品に含まれるのかということ。環境中に不必要な抗生物質があると、耐性菌が出現する可能性が高まります。

 

痛風発作を起こし、赤くはれた足の親指つけねの関節。こちらのHPから引用。

 

②蟹の季節に、痛風の患者さんが増えること。蟹の内臓には、尿酸の増加による関節痛=痛風を悪化させるプリン体がわりと多い。上海蟹のプリン体の量はすごく多くはないのですが、一緒に飲酒もするし(アルコールは尿酸値上げる)、その他のつまみ類にもプリン体が多いものがあるので、結果として痛風になる人が出ます。ダイオキシンも大事ですが、関節の激痛も困りものです。駐在員のおとうさん、蟹+アルコールのとりすぎは注意ですよ。

 

今回の上海蟹は大きな騒ぎにならないといいですね。

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