人間が手を加えた蚊が、蚊によって広まる病気―ジカ熱、デング熱、日本脳炎などを減らすかもしれません。

 

ボルバキア(Wolbachia)という細菌(正確にはリケッチア)は昆虫に寄生してその性質を変えてしまうことが知られています。この話はオスの蚊にボルバキアを持つように「加工」して、それを野外に放つことで、ウイルス(デングウイルスやジカウイルス)を媒介する蚊を減らす作戦です。ニュースソースは人民網

 

> 中国人研究者、ジカ熱予防の新技術を開発

> 広州中山大学の奚志勇氏が率いるチームが開発した「
ボルバキア顕微・胚注入による蚊媒介性の制御技術」は、ジカウイルスを効果的に予防できる。(中略)
> 科学者は2009年、ボルバキアがデング熱ウイルスの蚊の体内における増殖を抑えることを発見した。異なる系統のボルバキアに感染しているオスとメスの昆虫の交配によって生まれた卵が育つことはない。
> 奚氏によると、同チームは顕微・胚注入技術を使い、ショウジョウバエ、シマカ、イエカの中からボルバキアを抽出し、これをデング熱ウイルスの媒介性を持つヒトスジシマカの体内に注入することで、安定的な共存関係を形成した。ボルバキアに感染した実験室内のオスの蚊と、自然界のボルバキアに感染していないメスの蚊の交配によって生まれる
卵は育たない。実験室内のオスの蚊を大量に放出することで、蚊の数を伝染病の流行に至らない水準まで下げることができる。(以下略)

特殊な顕微鏡でみたショウジョウバエ(蚊ではないが、蚊でも同様のことがおきる)の唾液腺細胞。画面内に5つの細胞があるが、細胞の形は見えない。細胞の核(DNA)が赤く染まっている。無数の黄緑の点が感染したボルバキア。左下の棒が10ミクロンの長さを示す。こちらの論文から引用。

 

さらにこれに関連して昨年5月と8月にこんな報道もあり。工場まで作っているそうです。このときはジカ熱というよりデング熱対策ですね。こちらこちらから抜粋引用。

 

> [5月] 広東省広州市の島の各地で今年の春、トラックに積まれたプラスチックケースから、50万匹の蚊が研究者によって放たれた。新華社が伝えた。

> 中山大学と米ミシガン州立大学の熱帯病昆虫媒介抑制共同研究センターの奚志勇教授は、「一部の住民は、家の中で放つため、私たちから蚊を欲しがったほどだ」と話した。蚊を放つと聞くと、ぞっとするかもしれないが、実はこれは、デング熱の対策なのだ。

> 中国では昨年、デング熱患者が4万7000人を超え、そのほとんどが広東省に集中した。「不妊ワクチン」を打った蚊を放つことで、蚊の密度を下げ、デング熱に対抗することができる。奚教授らが放った蚊は「ボルバキア」に感染している。これに感染したオスの蚊が、感染していないメスと交尾した場合、その卵は不妊化する。

> [8月]中国広東省広州市には、世界最大の蚊の「生産工場」がある。

写真もこちらから。

 

上記はジカ熱の時に問題となった、遺伝子組み換え蚊(OX513Aという名前)とは別の方法です。遺伝子組み換えより簡便で安全といわれています。ただし蚊や周囲の生物がボルバキアに耐性を持たないかという疑問は消えていません。

 

中国はやることがダイナミックですが、この報道に限らず、結果がちゃんと報道されないことが多いです。この対策がどうなるか結果を知りたいですね。

 

人間にも、自然環境にもいい結果になるといいですね。

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