メール登録をしているひとに、上海領事館から豚インフルエンザの情報が入ったと思います。下記はコピー。原文は同領事館のHPからも見ることができます。


在上海日本国総領事館からのお知らせ

1.3月4日付けの報道によれば,浙江省義烏市検験検疫局で, 同省で初の豚インフルエンザ(H1N1) の発症例が1例確認されたことが明らかになりました。

2.同報道によれば, 香港から義烏への直行便に乗った5歳の少女が悪寒, 39度の発熱,扁桃腺炎症,咳の症状を訴えたため, 義烏空港の検疫員が検体を採取し, 当局口岸衛生検疫実験室に持ち帰り, 分子生物検査を行ったところ, 同局では初めてのH1N1ウイルス感染が確認されました。

3.中国衛生部の2009年4月の豚インフルエンザ(H1N1) に関する発表によれば,同ウイルスは主に呼吸による感染のほか, 豚或いはその糞尿への接触による感染や不潔な環境下で感染が起こ るとのことです。また潜伏期間は半日から三日ですが, 最大で7日間まで, 他者に伝染する可能性があるのは発症前一日から発症後7日目まで です。(以下略)

 

インフルエンザはA、Bとか、ヒト、鳥、豚とかH1N1、H3N2とか分類がわかりにくい。

 

2009年に流行った豚インフルエンザ(現在は新型インフルエンザとよぶようになっている)と何がちがうのかという疑問もわきますね。

 

 

簡単にまとめると、下のようになります。以下は全部A型インフルのことです。A型インフルエンザウイルスの遺伝子は8パートあり、これらが動物の種の間で入れ替わります。図では便宜上遺伝子を8本の棒にして示してあります。

 

もともと人が持っていたH3N2インフルエンザウイルス(青=昔からA香港型といってたやつ)と、鳥が持っていたインフルエンザウイルス(黒)と、豚が持っていたH1N1インフルエンザウイルス(赤)が混ざって(遺伝子の一部が入れ替わって)できたウイルスがいる。これが2段目の3つのウイルスの真ん中のやつ。

 

さらに豚が持っていた別のH1N1インフルエンザウイルス(緑)が混ざった(遺伝子の一部が入れ替わった)ものが、2009年に流行した新型インフルエンザ(当時は豚インフルと言われた)。これが3段目のウイルス。2009年以降、今でも季節性に流行しています。これは「A/H1N1pdm2009」ともいう。

 

で、2段目にある豚の緑のウイルスは、Eurasian avian-like swine (H1N1)といって、1979年からわかっていたけれど、人にはまれにしかうつらないとされていた。ところが、ウイルスが進化して、この緑のH1N1の中で、人に容易に感染するものが出てきた。これがいま問題のやつ。

図はこちらの論文から引用。

 

昨年末発表された、中国における豚36,417匹に対する大規模な調査の論文[1]では、調べた豚から検出された228種の豚インフルエンザウイルスのうち、上図の緑に属するウイルスの中で、A/swine/Guangxi/18/2011 と A/swine/Guangdong/104/2013と名づけられた株(ウイルス株には決まった命名法があるが気にしなくていい)大変な性質が報告されています。

 

それらは人に感染する可能性が証明され(フェレットの実験による)、②それらへの抗体を持った人間がほとんどいなくて、 特にA/swine/Guangdong/104/2013については誰からもみつかっていない(多くの人間の血清での検査による)そうです。

 

つまり、もしも豚からだれか人にうつると、抗体を持っている人も少ないのでその後に大流行しやすいとういうことです。

 

 

新しい豚インフルについては、対応も予防も決まっていません。治療も今までのインフルと同じでいいのかもはっきりしていません。

 

感染予防が重要です。豚肉からは感染がないので、流行地域にいる生きた豚に触らないようにしましょう。

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[1] Yang H, et al. Prevalence, genetics, and transmissibility in ferrets of Eurasian avian-like H1N1 swine influenza viruses. Proc Natl Acad Sci. 2016;113:392-7. 昨年12月28日に電子版で公開。中国の研究所・大学と日本の東大からの論文です。