Ghost Stories / Coldplay
ちょっと前に「バンプはColdplayを目指すべきだ!」と豪語したが、残念かな、この新作を聞く限りそれは到底無理な話になってしまうだろう。
パイロット作として先行公開された“Midnight”を聞いた時の衝撃は昨今の音楽界でも感じたことないぐらいに凄まじく、例えるなら、そう、でんぱ組.incの“でんぱれーどJAPAN”をアイドル好きのオジサンに聞かされて以来だった。
彼らは一貫して変化を恐れなかった。
Coldplayというイメージからすると意外かもしれないが、よくよく考えると大幅な変化は勿論だが、前作と似てると思われる「X&Y」や「Mylo Xyloto」ですらやはり明らかな変化、深みが感じられる。所謂、“集大成”作と言われるのがこの2枚だろう。変化はかならず形にする、そんな意志が感じられる。
そして今作、「Ghost Stories」。つまりColdplayの第三章の始まりともいえるだろう。第一章ではバンド・サウンド、第二章ではポップ・サウンド、そしてここはエレクトロニカだ。プロデューサーはブライアン・イーノから代わってポール・エプワース。アデルの「21」やポールの「NEW」が有名らしい。正直、このプロデューサーのことは良く知らないが、結構良い仕事が出来る人のようだ。
本作はこれまでのColdplay“らしさ”を微塵も感じさせないサウンドだが、そのプロダクションはこれまで通りに完璧。繊細にして且つ大胆、とはこのことだろう。
ボン・イヴェールの作品の如く、飾ることを一切せずに点と点を糸で繋げる。そして出来上がった層が“Midnight”を契機に幾重にもレイヤーを形成する。そして本作で唯一ともいえるアッパーな“A sky full of stars”へとたどり着く。一見異質だが、本作をただのアーティスティックな自己満足作品にしない、というよりもここまでの大きな助走をこの曲のためだけに用意したかのような感じだろうか。しかもこの曲、Aviciiが関わってるときたモンだ。それまでのアンビエント作ではない、完全に踊れる曲。抑圧された感情を爆発させる曲。この曲以外では雄大な自然とその流れを感じさせてきたが、ここで生命の神秘や歓喜を感じれる。
そしてラスト、“O”。これは「円」の方を意味するらしいが、ここでまた作品はアンビエントな流れに戻っていく。そう、まるで輪廻転生を繰り返す一握の生命の様に。オープニングの“Always In My Head”と同じ旋律を。
正直、ここまで深い作品を彼らが作るとは思わなかった。その昔、「レーベルからヒップホップだけはやらせてもらえない」と嘆いたクリス・マーティンのコメントが過ったが、彼らは彼らなりに動ける範囲で必死でもがいているんだなぁっと感心してしまう。よく彼らのことを商業主義のセル・アウト・バンドと誰かが愚痴っていたような気がしたが、彼ら以上に貪欲に音楽の幅を広げ、しかも、セールス面、つまりは音楽もエンターテインメントであることを忘れていないバンドもいないだろう。いいかげん「21世紀で最も成功したバンド」というちょっとディスったかのようなキャッチを外してあげるべきだろう。彼らは「21世紀で最も偉大なバンド」にするべきだ。
今作はエレクトロ作、つまりはColdplay第三章のパイロット・アルバム。それとも、エレクトロの集大成となるのか。いや、そうなってしまってもおかしくない完成度だ。時期尚早なのは百も承知だが、もう次作が気になって仕方がない。
傑作!
国内版ボートラ、“Midnight (Jon Hopkins Remix)”もかなりイイ!!
Today's Song : Wake Me Up / Avicci


