久々に更新。
こんな更新していないのにちょこちょこ見に来てくれた方々。ありがとうございます。
積もる話はないけれど、積もる愚痴とかはあるんでしょう。
まぁ。とりあえず短編小説です。『トリック・オア・トリート』は現在執筆(?)中。忘れているわけでも書かないわけでもないので、続きを待ってくれている方は安心してください。
タイトルは迷ってるんですけど、『人喰い少女は引き籠り』で。ちなみに候補Aは『壊れた少女は引き籠り』
お母様は死んでしまったの。
お父様は分かってくれないの。
お母様はお父様に殺されてしまったの。
お父様はわたしを閉じ込めたの。
わたしはここから出られないの。
わたしはここから出たくないの。
誰もわたしに会いに来ないの。
わたしは誰にも会いたくないの。
今日もわたしはお人形さんと遊ぶの。
お人形さんは壊れてしまったの。
あぁ。
今、そこにいるのは誰なのかしら。
暗い暗い部屋の中で一人遊んでいたいのに。どうして誰かがやってくるのかしら。
「はじめまして。……久しぶり、のほうがきっと正しいのだろうけど」
わたしはかぶっている帽子をさらに深く深くかぶり、電気をつけました。そして、招かれざるお客様をぞんざいに出迎えました。
「わたしはあなたと会ったことなんて一度もありはしませんわ。こんなところに何の用かしら。お客様?」
声や体格からして男性なのでしょう。顔は見てませんの。
「顔を見ずに、一度も会ったことがないと決め付けるのは少々早計だと思うな」
「見なくても十分ですわ。わたしがここに閉じ込められてからわたしを知る人間はいませんもの」
「閉じ込められる、もとい引き篭もる前に会ったことがあるんだよ」
そんなことがあるのでしょうか。そんなこともあるのでしょう。
ぶち。
「わたしがここに閉じ込められたのは所謂、小学生と呼ばれる時期ですわ。あなたのような男性と親しくなった覚えはありませんことよ」
「僕も君と話すのは今日が始めてだ。けれど、僕はずっと君を知っていたし探していた」
「わたし、一目惚れは受け入れない性質ですの」
もっとも、そんな理由であるとは考えにくいのですわ。仮にこの殿方が真実わたしが閉じ込められる前にわたしを見知っていたとすれば小学生以前のことですもの。あぁ、そういえば少女趣味とかありましたわね。
「残念ながら僕は既婚者でね。子供も二人いる。ちょうど君と同じくらいかな」
「そうですの。それはそれは……」
真に壊したくなる現実(幸せ)ですわね。
むしり。
「それにしても、酷い光景だね。君と同年代の子が見たら、さぞかし悲しむだろう」
「あらあら。何のことですの」
全く皆目見当がつきませんわ。えぇ本当に。
「今現在進行中で人形の足をむしっているじゃないか。さっきは腕だったね。他にもたくさん、同じような人形があるけれど」
あら、本当ですわ。わたし、無意識にお人形さんの足を……。よく見れば手も、目もありませんわ、このお人形さん。
「これは酷いですわね。そういえばほかのお人形さんも同じように手足がないものや首が取れているものがあるのですけれど、それもわたしなのかしら?」
「僕に聞かれてもね。君自身、覚えはないのかい?」
「えぇ、さっぱり」
一体どうしてこうなったのかしら。そしてどうしてこの殿方はここへいらしたのかしら。
「ところで、室内だし、帽子を取ったらどうだい」
そう言って、殿方はわたしの大切で大事な防衛ライン(帽子)を無理やり、とって。
覚醒。目の前に――が。
「嗚呼。お礼を言いますわ」
「何に対してかな?」
とてもとても――ですわ。
「え、わ!」
なんて無用心なのでしょうか。なんてか弱いのでしょうか。
「ちょっ、なん……こんなの、聞いてない!」
「嗚呼。大変生きがよろしゅうございますわ。この――」
片手で持ち上がるくらい。軽いのですわ。
嗚呼。でも。お母様はもっと軽かったかしら。
「ぼっ僕は、警察だ!君を、殺人の容疑で、」
嗚呼。本当に生きがよろしゅうございます。けれど、少々五月蝿いですわ。この――。
「ひっ、ば、化け、化けも」
「嗚呼。先に謝っておきますわ。わたくし」
――食事はずいぶん久しぶりなもので、うまく食べられる自信がありませんの――
「あ、あぁ、ああああ……!」
大変五月蝿いので、お口に栓をしてから食べることにいたしますわ。あ、そ~れ。ぱっくん。
あら?栓をした意味がなかった気がしないでもないですわ。
「これからどうしましょうか」
このままでいるのも吝かではないのですが。きっとあの扉は開いてないのでしょう。
先程のご飯はどうやって入ってきたのかしら。きっと給仕の方が開けたのですわね。
物は試しといいますし、試して見ましょう。
嗚呼。悲しいかな。
やはり開きませんわ。
開かないのでしたら意味がないので。
不肖わたくしは眠るといたしましょう。
嗚呼。
いつかお外に出られることを夢見て。
あぁ。
今そこにあるのは何かしら。
誰かとお話していた気もしますの。
そんなことなかったような気もしますの。
きっとありはしなかったのでしょう。
誰もわたしを知りませんの。
誰もわたしを訪れませんの。
わたしは誰にも会いませんの。
わたしはどこにも出たくありませんの。
ずいぶんと散らかしてしまいましたわ。お人形さんも、片付けないといけませんわ。
『……聞こえるか、――』
あらあらあらあら。珍しいですわ。お父様の方から話しかけてくるなんて。
「えぇ、聞こえますわよ。お父様。何の御用ですか?」
『少し前にお前のところに男が一人来ただろう』
男性が……?覚えがないですわ。
「いえ、いらしてませんわ。その方がどうしたかしたのですか?」
『いや、警察の方らしい……。まぁ来てないならそれでいい。ところで、夕飯は何時くらいがいい?』
警察の方がねぇ。そもそも警察って何をなさるのでしたっけ?忘れてしまいましたわ。
「なんだか今日はあまりお腹が空いていないので、少しゆっくりめに……そうですわ、八時半ごろにお願いしますわ」
しばしの静寂。どうやらいつの間にかお話は終わっていたようですわね。いつものことですわ。
お食事を持ってきてくださるのもお父様ではなく、給仕の方たちなんでしょう、きっと。
なんだか体がベタベタしますわ。お風呂にでも入ろうかしら。
何故か電気がついてますわ。いけないいけない。ちゃんと消しておきませんと。
帽子を取ったときにわたしじゃなくなってしまいますもの。
嗚呼。
思い起こすはお母様と死別したあの日。
お父様は必死でしたわ。
お母様は無残でしたわ。
わたくしは。
わたくしは楽しんでましたわ。
それはそれは。
大変、おいしゅうございましたわ。
お母様。
窓掛け布を開きまして。
白昼お外を見ましては。
思い起こすは母の味。
嗚呼。
お父様はどうなのでしょうか。
嗚呼。
先日いただきましたあのお人。
大層おいしゅうございました。
嗚呼。嗚呼。嗚呼。
恋焦がれる少女のようですわ。
あふれ出るこの想い。
嗚呼。
わたくしは、お外に出てみたいのですわ。
嗚呼。
わたくしは、もっと多くの人と触れ合いたいのですわ。
嗚呼。
だからお父様。
この扉を開けてくださいまし。
そうすればきっと。
わたくしはもっと自由になれますもの。
まぁいつも通り。どうにも歪んだ方向にしか短編小説を書けないってどうなのよ。と思わないことはないですが。
書き手が歪んでますから。多少の歪みは気にしないでいただきたい。
では。次回は『トリック・オア・トリート』を乗せれるといいなぁ、と思いつつ失礼します。