第一話『杏里』
第一章【中学生への扉】
第一話『杏里』
3月28日──
春休み真っ只中。
長かった小学校6年間を終え、中学へ進学する。
体は大きくなっていても、まだ中学生という気分は全くしない。
とにかく、友達が出来るか、それだけが不安だった……。
──大谷杏里
この物語の主人公は、今日もまた昼を過ぎてから起き出した。
♪ルルル~
昼12時を過ぎたとき、電話がかかってきた。
「はーいもしもし?」
杏里は不機嫌に電話に出た。
「何よ~人がせっかく電話してあげたのにその態度わ~!」
その電話は、杏里の親友
谷口唯からだった。
毎日ぐーたら過ごしている杏里を思い、ここのところ毎日電話をかけてくれている。
この頃はまだ携帯は普及しておらず、何事も電話だった。
「毎日かけてくれなくていいよ~」
杏里は嫌そうに言った。
「あんたがぐーたらしてるからでしょ~!もう中学なんだからしっかりしてよー!!4月11日が入学式なんだからね!それまでにちゃんと準備しておきなさいよ!」
唯は小学校の頃から、杏里の母親役だ。杏里を心配して、何かとほっておけない唯に、杏里はいつも甘える。幼稚園の頃からの付き合いは、やっぱり誰よりも絆が深い。
「とにかくちゃんと勉強しときなよ?わかった?あと、入学式は2時からだって♪じゃあね」
そう言って、唯は杏里の応答も聞かず、電話を切った。
杏里は切れた電話にむかって
「はいはい。」
と言いながら受話器をおいた。
杏里は、確かに優柔不断なところがあった。
ただ杏里のとりえは、明るいことだった。
あの明るい純粋な笑顔に、みんな心のどこかに安らぎを感じていた。
男の子からもそこそこモテている方で、一度だけ告白されたことがあった。
わざわざ手紙をくれたうえに、ホワイトデーの日に可愛い靴をプレゼントした男がいた。
あまりにもその男がしつこかったため、杏里がかなり困った男であった。
優柔不断でスポーツも一番苦手、そして勉強もギリギリのラインの杏里であったが、人の心だけは人一倍よく考えられる子であった。
小さい頃は、誰かが泣いていればすぐかけつけ、優しく抱きしめてやった。
常に感謝の気持ちだけは忘れない、そんな女の子であった。
そんな何事もなく過ごしてきた杏里は、この中学生活から、大きな試練を抱えることになる。
──この全ては、
私の運命だったの……
避けて通る事のできない、
私の運命なんだ……
だけど、あなたに出会えたこと
後悔はしていない……
初めから、もう
決まっていたことなのかもしれないね……
私たちが生まれた、
その日から……。──
第一話『杏里』
3月28日──
春休み真っ只中。
長かった小学校6年間を終え、中学へ進学する。
体は大きくなっていても、まだ中学生という気分は全くしない。
とにかく、友達が出来るか、それだけが不安だった……。
──大谷杏里
この物語の主人公は、今日もまた昼を過ぎてから起き出した。
♪ルルル~
昼12時を過ぎたとき、電話がかかってきた。
「はーいもしもし?」
杏里は不機嫌に電話に出た。
「何よ~人がせっかく電話してあげたのにその態度わ~!」
その電話は、杏里の親友
谷口唯からだった。
毎日ぐーたら過ごしている杏里を思い、ここのところ毎日電話をかけてくれている。
この頃はまだ携帯は普及しておらず、何事も電話だった。
「毎日かけてくれなくていいよ~」
杏里は嫌そうに言った。
「あんたがぐーたらしてるからでしょ~!もう中学なんだからしっかりしてよー!!4月11日が入学式なんだからね!それまでにちゃんと準備しておきなさいよ!」
唯は小学校の頃から、杏里の母親役だ。杏里を心配して、何かとほっておけない唯に、杏里はいつも甘える。幼稚園の頃からの付き合いは、やっぱり誰よりも絆が深い。
「とにかくちゃんと勉強しときなよ?わかった?あと、入学式は2時からだって♪じゃあね」
そう言って、唯は杏里の応答も聞かず、電話を切った。
杏里は切れた電話にむかって
「はいはい。」
と言いながら受話器をおいた。
杏里は、確かに優柔不断なところがあった。
ただ杏里のとりえは、明るいことだった。
あの明るい純粋な笑顔に、みんな心のどこかに安らぎを感じていた。
男の子からもそこそこモテている方で、一度だけ告白されたことがあった。
わざわざ手紙をくれたうえに、ホワイトデーの日に可愛い靴をプレゼントした男がいた。
あまりにもその男がしつこかったため、杏里がかなり困った男であった。
優柔不断でスポーツも一番苦手、そして勉強もギリギリのラインの杏里であったが、人の心だけは人一倍よく考えられる子であった。
小さい頃は、誰かが泣いていればすぐかけつけ、優しく抱きしめてやった。
常に感謝の気持ちだけは忘れない、そんな女の子であった。
そんな何事もなく過ごしてきた杏里は、この中学生活から、大きな試練を抱えることになる。
──この全ては、
私の運命だったの……
避けて通る事のできない、
私の運命なんだ……
だけど、あなたに出会えたこと
後悔はしていない……
初めから、もう
決まっていたことなのかもしれないね……
私たちが生まれた、
その日から……。──
