種村季弘センセ晩年の徘徊エッセイ。
江戸から続く古い街並をセンセはひたすらぶらぶら歩きます。
江戸から明治の文献をたくさん引用して淡々と紹介される街々は
どこもとても魅力的。
築地明石町のページにある
鏑木清方の作品「築地明石町」のモデルになった女性の話。
この絵のモデルは江木万世(ませ)さんといって
新橋・江木写真館の御曹司の夫人。
ハイカラな一家のマダムなわけです。
この人がどれくらい美しかったかというと
中勘助が「輪郭の鮮明な彫刻的美人」と表現するほどだそうで。
勘助は万世夫人のご主人と友人関係で彼女を知っていたのですが
夫人は勘助に密かな恋心を抱いていたらしい。
一方の勘助は少々ロリコン趣味的な感情を
夫人の娘に持っていたとかいないとか。
センセが川崎大師で見た「水鳥の祭り」は
能衣裳のようなものを着込んだ人々が
顔の3倍もあろうかというデカい杯で酒を飲み干している。
真っ昼間 往来で。
それぞれ名前を書いた幟を手にしていて
「大蛇丸底深」「底広」「吐次」「早呑」などなどいかにも酒豪な感じ。
杯は二升二合入る。
これは慶安二年に実際に行われた「酒合戦」の再現で
この祭りの仔細を描いたのが
合戦の一方の武将・地黄坊樽次の「水鳥記」という書物。
「水」は「サンズイ」、「鳥」は「酉」を表し
故に水鳥とは酒のこと。
合戦から150年以上経ってから「水鳥記」を読んだ大田南畝が
後に住むことになる千住で「千住の酒合戦」を企画し
その詳細を記したのが「後水鳥記」。
酒合戦などというとかっこいいが
要は大酒呑み大会なわけで
無料で酒が好きなだけ呑めるとあって大盛況だったようだ。
千住では二升五合の杯を三たび干した剛の者もいたとか。
で。みんな酔っぱらってふらふら。またはげろげろ。
変な祭りだこと。
そういうゆるーい話が
でも古今東西の古い文献をたくさん引用して描かれていて
その硬軟取り混ぜた感じが気持ちいい。
鴎外や荷風ら明治期の人々が切り取った東京。
昭和8年生まれのセンセが記憶に留める東京。
そして執筆当時 平成10年代前半の東京。
場所だけではなく時間軸の徘徊もまた楽しい。
「江戸東京〈奇想〉徘徊記」 種村季弘 朝日新聞出版 735円
江戸から続く古い街並をセンセはひたすらぶらぶら歩きます。
江戸から明治の文献をたくさん引用して淡々と紹介される街々は
どこもとても魅力的。
築地明石町のページにある
鏑木清方の作品「築地明石町」のモデルになった女性の話。
この絵のモデルは江木万世(ませ)さんといって
新橋・江木写真館の御曹司の夫人。
ハイカラな一家のマダムなわけです。
この人がどれくらい美しかったかというと
中勘助が「輪郭の鮮明な彫刻的美人」と表現するほどだそうで。
勘助は万世夫人のご主人と友人関係で彼女を知っていたのですが
夫人は勘助に密かな恋心を抱いていたらしい。
一方の勘助は少々ロリコン趣味的な感情を
夫人の娘に持っていたとかいないとか。
センセが川崎大師で見た「水鳥の祭り」は
能衣裳のようなものを着込んだ人々が
顔の3倍もあろうかというデカい杯で酒を飲み干している。
真っ昼間 往来で。
それぞれ名前を書いた幟を手にしていて
「大蛇丸底深」「底広」「吐次」「早呑」などなどいかにも酒豪な感じ。
杯は二升二合入る。
これは慶安二年に実際に行われた「酒合戦」の再現で
この祭りの仔細を描いたのが
合戦の一方の武将・地黄坊樽次の「水鳥記」という書物。
「水」は「サンズイ」、「鳥」は「酉」を表し
故に水鳥とは酒のこと。
合戦から150年以上経ってから「水鳥記」を読んだ大田南畝が
後に住むことになる千住で「千住の酒合戦」を企画し
その詳細を記したのが「後水鳥記」。
酒合戦などというとかっこいいが
要は大酒呑み大会なわけで
無料で酒が好きなだけ呑めるとあって大盛況だったようだ。
千住では二升五合の杯を三たび干した剛の者もいたとか。
で。みんな酔っぱらってふらふら。またはげろげろ。
変な祭りだこと。
そういうゆるーい話が
でも古今東西の古い文献をたくさん引用して描かれていて
その硬軟取り混ぜた感じが気持ちいい。
鴎外や荷風ら明治期の人々が切り取った東京。
昭和8年生まれのセンセが記憶に留める東京。
そして執筆当時 平成10年代前半の東京。
場所だけではなく時間軸の徘徊もまた楽しい。
「江戸東京〈奇想〉徘徊記」 種村季弘 朝日新聞出版 735円