多くのカルチャーを生み出したにもかかわらず、その後訪れた不況により、負のイメージもついてまわることもしばしば。ところがここ数年、消費欲と高揚感に満ちていたあの時代が注目されている。なぜ今、80年代なのか?マーケティングライターの牛窪 恵さんに話をうかがった。
◎和らぎつつある?消費への抵抗
---「80年代」「バブル」が話題になることが増えています。理由はどこにあるのでしょうか。
牛窪さん「アベノミクスの効果か企業の業績は上がり、近く給与も上昇すると見込まれます。個人消費も消費税アップまでは確実に上がるでしょう。そんな中、バブルを謳歌した世代に注目が集まるのは、自然な現象と言えるかもしれません。ここでいうバブル世代とは、今の40代中盤から後半の80年代末のバブル真っ只中に青春を送った世代と、少し上の「新人類」「Hanako族」などと呼ばれた50代前半の人たちを指します。
この世代はテレビを熱心に観るし、雑誌から情報を得る習慣もある。基本的にお金を使うのが好きで、テレビで紹介されたお店にオシャレして出かけたり、雑誌で紹介された商品をよく買う。この世代を狙った企画にスポンサーがつきやすい状況はあるでしょうね」
---少し前まではバブル消費への冷めた見方もあった気がします。
牛窪さん「数年前、今の20代後半くらいにあたる「草食系男子」の取材をしました。その時、ディスコ「ジュリアナ東京」の写真を見せてバブルへの印象を聞くと、ひどい反応でした(笑)。「企業やメディアに踊らされてカッコ悪い」「当時浪費していたから貯金がないんだ」「あの頃のムダな公共事業が日本を借金まみれにした」とか。彼らはあの時代や当時を謳歌した世代への憧れは一切ない「嫌消費世代」とも呼ばれ、話題になりました。
ただ、消費に対する意欲は若い世代でも様々になってきています。バブル世代の1世代下の団塊Jr.、つまり、今のアラフォー世代は、自分たちが恩恵を受けていないバブルを表向きには評価しません。ただ調査してみると、彼らは結構消費しているんです。住んでいるのは7万円の部屋でも、クローゼットにはブランド物が並んでいたり、買うものは買っている。消費欲求のある通称「隠れバブラー」層がいるんです。
それから、今の10代後半から20代半ばのゆとり世代「バブル二世(バブルJr.)」も消費への抵抗は少ない。バブル時代にアッシー君やメッシー君を務めた父親が、話題のお店に予約を入れ、家族で外食--などにも慣れているので、それが浪費だとは思わない。海外旅行やブランド物も普通に受け入れるんです。1世代上の嫌消費世代のバブル否定とは少し違う。
景気回復を背景に「元祖バブル世代」「団塊Jr.に潜む隠れバブラー」「バブル二世」など消費を好む、もしくは拒まない層が広がったことは、あの時代の復権と関係していると思います」
◎バブルを謳歌した女性は「根拠なき自信」を得た
---バブル世代の牛窪さんは、個人の体験として、あの時代は「いい時代」だったと感じていますか?
牛窪さん「学生時代は景気がずっと右肩上がり。ニューバランス 574ジュリアナのお立ち台で踊ったりもしていました。夜中の12時くらいにDJのジョン?ロビンソンが叫ぶんですけど(笑)、その時のフロアのボルテージや一体感は、後にも先にも味わったことがない。バカバカしいこともいっぱいしたし能天気でしたが、刺激的でしたよね。当時の様子がテレビ局の資料映像などでよく流れますけど、あれだけでは伝わらない濃密さがありましたよ。
男性はエネルギッシュでした。ドライブデートに行くとなれば、カセットにサザンやユーミンの曲を編集してきて「この場所でこの曲を!」とか、そんな演出、今はしないですよ。男性は大変だったと思いますが、楽しかったなと」
---体験が世代の「その後」に与えた影響はあるのでしょうか?
牛窪さん「調査しても、あの時代を経験した女性は「根拠のない自信」があります。バブルは崩壊したものの、1997年に男女雇用機会均等法が改正され女性の社会進出が進みました。波に乗った女性は挫折を感じにくく「ご飯をおごられたり、海外旅行に行く回数が減った」くらいの変化で済んだんです。
でもバブル世代の男性を取材してみると、やはりバブル崩壊のダメージは女性よりも大きい。40代中盤以降の男性って「男は妻子を養わねばならない」という価値観の人がまだ多い。それなのにバブル崩壊の余波で「明日リストラされるかも……」みたいなことになれば、どうしたってプライドは傷つきますよね。しかもプライドを取り戻すために、会社に身を捧げてがむしゃらにがんばったりもする。「いい大学?いい会社」を目指してきた彼らにとって、競争はエネルギーの源泉でもありますから。だからこれまでのバブル世代の男性は忙しく、女性ほどかつてのような消費を楽しむ余裕はなかったかもしれないですね」ニューバランス 996
---本来持つエネルギッシュさや余裕は、20代の女性に魅力的に映っているという分析もあります。
牛窪さん「20代に草食系男子が多い様子は年々顕著になっています。じれている同世代女性も多いのでニーズはありますよ。景気回復で元気を取り戻したら、当時のカルチャーと一緒に、バブル世代の男性がもっと注目を浴びる日が来るかもしれません」