白い始まり
深夜だからだろうか、自分の足音が辺りに響く。
建物に囲まれた細い裏路地を追われているかのように駆け抜ける。
これ以上退屈な日々はたくさんだった。
俺にはこうして家出することぐらいしか出来ない。
だが、平凡な日常にはちょうど良い刺激だ。
磯の香りが鼻を通る。
唯一俺の心を和ますことが出来る香り。
路地を抜け海が姿を現す。
昼は海水浴に来る客などでごった返しているが、夜は人っ子一人いない。
この静まり返った海に来るのがいつしか日課になっていた。
「・・・家出してもやることはあんまり変わんないな。」
そう思いながら海の堤防に腰をかける。
いつもと変わらぬ黒い海、白い月。
そして何もない平坦な砂浜・・・
「・・・・・・?」
自分の目が何かの異変に気づく。
そこにはいつもの景色には無いものがあった。
今にも崩れ落ちそうな古い小屋が、海岸付近に建っている。
「あんなもの・・・あったか?」
昨日来た時には確かになかった。
あんな不自然なものに気づかないはずがない。
少年『小野坂 翔』はゆっくり立ち上がると、ふらふらと引き寄せられるように小屋へと歩き出した。
