>オリジナルフルアルバム

>タイトル:ギヤ・ブルーズ

>アーティスト:THEE MICHELLE GUN ELEPHANT

>リリース日:1998年 11月 25日

>記事作成日:2023年 12月 7日






久しぶりに聴きました。


チバユウスケさんが、お亡くなりになったとの事。マジかよ。享年55歳だそうで。マジかよ。


ぼくにとって、ミッシェルはずっと“鬼門”だった。Mr.Childrenとゆずしか聴いていなかったガキの頃のぼくにとって、こんなに硬派でエモーショナルで荒々しいロックンロールは、正直ちょっと怖かったんだ。校舎裏でタバコふかしてる奴らみたいに(苦笑)。興味はあった、凄く興味はあったんだけど、タバコふかしてる一団に、一声かける勇気が出なかった感じ。そうやって、なんとなく興味を持ちつつも“ちゃんと”聴く事なくズルズルやってる(そしてそれを拗らせてる)間に、逝っちゃったじゃないか。何をやってたんだ、ぼく。




『ウエスト・キャバレー・ドライブ』

冒頭のベースの音で、既にヤラれた。カッコいい…カッコいいじゃねぇか。ガキの頃の、本作が出た直後に聴いたぼくよ、何やってんだよ! 何で「やっぱりちょっと合わないかな」とか思ったんだよ。どんな感性してんだよ(苦笑)。

音の電撃が脳天を直撃する感じ、快感でしかない。


『スモーキン・ビリー』

テンション高いギターに痺れる。決して小難しい事はしてないんだけど、最高にカッコいい。これは………………生で聴きたかったなぁ。叶わぬ夢。「血湧き肉躍る」だよマジで。


『サタニック・ブン・ブン・ヘッド』

確かに、(ミスチルと比べたら)音はイカつい。それは間違いない。間違い無いんだけど、でも同じくらいキャッチーだなぁ。辛い食べ物って、ただひたすらビリビリ辛いだけのヤツと、辛味の中に旨味とコクがあるヤツとがあって、ぼくは前者が大っ嫌いで後者は大好きなんだけど…後者の感じ。

ぶっちゃけ、歌詞の意味なんかさっぱり分からないんだけど…そこじゃないんだよな。


『ドッグ・ウェイ』

とにかくひたすらに硬派な人たちなのかと思ってたけど、結構端々にユーモアも感じられるバンドだったんだなぁ。そんな事すら、今さら気付く。譜割が意外と(?)丁寧で、メロディと言葉の相性の良さを楽しんでいるような曲。言いたくなるもんな、「ドッグウェーー一イッ♪」って。


『フリー・デビル・ジャム』

この曲を聴いて、「あぁ、ぼくが思うガレージロックってコレなんだな」と思った。ギターが、イメージそのもののフレーズとイメージそのもののプレイを聴かせてくれている。ぼくにとってのガレージロックって正にこれだし、こういうギターが弾けないとロックギタリストとは言っちゃいけないんだと思ってた。で、ぼくにはそれが無理だったので、アコギで弾き語りなんかをする方向に行ったんだと思う。

このハイテンションな曲を、ウーファーに強い密閉型のヘッドフォンでボリュームMAXにしながら登校すれば良かった。中高時代にそれをしていたら、ぼくの人生が違うものになっていた気さえする(今の生活はそれはそれで気に入ってますけどね)。


『キラー・ビーチ』

本作でも有数の歌モノだと思います。非常にメロディアスで、キャッチーで、とっつき易い。なんか、ぼくみたいな「ミスチル最高〜」みたいなヤツにも、「こーゆーのもイイぜ?」って提案してくれてるような、ちょっとだけ歩み寄ってくれているようなポップス感のあるロックンロール。


『ブライアン・ダウン』

弾むリズムが気持ち良い。エフェクトのかかったファニーなベースが良い。“掻き鳴らす”という表現がピッタリなギターが良い。そして、吐き出すようなボーカルが良い。カッコいいわ…さっきから、頭の中には「カッコいい」しか浮かばない。気付くのが遅過ぎた…。


『ホテル・ブロンコ』

ここまでの曲たちとはまた全然違う雰囲気で。リズム隊を堪能出来る曲。手数が多いとか特別にテクニカルな事をしてるとかいう事では全然ないんだけど、とにかくリズム隊が印象的。そして、ボーカルはサノバビッチしか言ってない(笑)。潔過ぎる。


『ギヴ・ザ・ガロン』

前曲はリズム隊だったけど、この曲はギターの聴き応えが凄い。ここまでは“直線的”なアレンジが多かったけど、この曲は、うねりにうねっている。地を這う蛇のような、空を舞う龍のような。


『G.W.D』

こんなベースが弾けたらカッコいいだろうなぁ。こんなギターが弾けたらカッコいいだろうなぁ。こんなタイコが叩けたらカッコいいだろうなぁ。こんな歌が歌えたらカッコいいだろうなぁ。そういう、憧れが詰まったロックチューン。疾走感がありつつも、どっしり構えた安定感も併せ持っている。


『アッシュ』

メロディラインが好きですね。特にバース部分。ちょっと歌謡曲的な妖艶さもあって。バンドの音がシャープな分、少しウェッティなボーカルとリードギターのフレーズがとても良く映えている。勢いだけでなく、コントラストも楽しめる曲。


『ソウル・ワープ』

ブルースハープがファンキー。ブルースハープって、こんなにファンキーに鳴らせるものなんだという驚き。エフェクトのかかったボーカルに、どこまでも突き抜けるようにクリアなバンドサウンドに、アクセントと呼ぶには存在感があり過ぎるブルースハープに。賑やかな、とにかく賑やかな曲。ロックンロールなんだけど、殊の外キャッチー。


『ボイルド・オイル』

ぼくが今学生だったら、間違いなく軽音のライブでコピーするだそうな。圧倒的にカッコいいのに、練習すればぼくでも“それっぽく”弾けそうなギターに惚れました。もちろん、この迫力は出せないけど、弾けてる感が出せそうな気がする。

…でも、ギターボーカルは無理だな。この歌声の凄みは、100分の1も200分の1も再現出来なさそう。「ボーイルッ!オーイルッ!」って言うほうならいけるか。


『ダニー・ゴー』

ラストチューンなんだけど、まるでここからアルバムが始まるみたいな雰囲気の曲。とても分かりやすくて、ぼくみたいな“一見さん”にもこのバンドの事を端的に説明してくれている感じがする。ハイテンションで、キャッチーで、何かを切り拓いていくようなエネルギーに満ちていて。ここから世界が広がり始める感じ。




そんな、計14曲。


良かった。凄く良かった。

でもまぁ、きっとぼくにとっては、今だからこそカッコよく感じられるんだろうなぁとも思います。子どもの頃からビビりだったぼくは、当時は懇々と説得してくるような歌詞のミスチルとか、どう見ても“良い人そう”なマイルドなサウンドのゆずとか、そういう「絶対に聴き手を“圧”で攻めてくる事はないだろうな」ってのが分かるアーティストの曲がちょうど良かったんだと思う。その後、自分でも楽器をかじったり、曲作りの真似事をしたりするようになって、音圧の快感とか音選びの奥深さみたいなものに注目が向くようになったからこそ、このサウンドを楽しめるようになった気がする。

だから、今このタイミングで聴けて、良かったのかもしれない。ガキの頃に無理に聴いても、抵抗感が増すばかりだったかもしれないので。

チバユウスケがもうこの世にいない事は悲しいけれども、ぼくは今からTMGEの世界に触れていこうと思います。


どうか安らかに。もしくはロックンロールに。






お気に入りは、

#01 『ウエスト・キャバレー・ドライブ』

#02 『スモーキン・ビリー』

#05 『フリー・デビル・ジャム』

#06 『キラー・ビーチ』

#07 『ブライアン・ダウン』

#11 『アッシュ』

#14 『ダニー・ゴー』