>オリジナルフルアルバム

>タイトル:虹色オクターブ

>アーティスト:ナオト・インティライミ

>リリース日:2022年 11月 30日

>記事作成日:2023年 2月 2日






聴きました!


近年のナオトさんは、(3度目の)デビュー後からしばらくの間のイメージとは異なる作風の音楽を発信なさるようになりましたね。

例えるなら、当初の作風はマックのハンバーガーみたいな存在の音楽でした。ガツンとしたインパクトがあって、でも万人にウケるキャッチーさもあった。対して近年の作風は、みなとみらい辺りのカフェで出てくるカフェ飯みたいな、オシャレでさらりとしたテイストのもので。

どちらが正解って話ではないんだけど、それこそぼくは小洒落た街の小洒落たカフェなんてのには敷居の高さを感じてしまうほうで、対してマックはとても親近感があって気さくに入れる馴染み深い場所で(最近は物価高騰でそうも言えなくなってきましたが、それはまた別のお話)…これはそのままナオトさんの音楽にも通じる認識で。すごいお洒落で魅力的なんだけど、自分には分不相応な感じがしてしまうところがちょっとだけある。もうちょっと別の例えをするなら、地元で一緒にバカやってた親友が、東京の大学にいって垢抜けて帰ってきたところに出くわす感じというか(笑)。

まぁ、そんな感じで、ちょっぴりおっかなびっくりな感じで、本作も聴きました。




『ピンチ』

オープニングナンバーなんて、盛って盛って盛りまくったコテコテの曲を盛ってきそうなものなのに…1曲目から、肩の力が抜けた、軽やかでフランクで程よくユーモラスな曲。

スキャットというか、言葉遊びみたいなものが気持ちいい。

偏執的に聴きまくるような感じではないけど、なんか好きです。


『You Make My Day』

ミニギター?ウクレレ??…軽やかなストロークに、南国の爽やかな風を感じる。スチールパンもあるし、ちょっと南の島感のあるアレンジ。でもメロと歌詞にはほんのちょっぴりの感傷が混ぜ込んであって、それがツンと鼻腔をつついてくる。


Rule

配信シングル。シングルとしてのリリース当時から思ってましたが、あらゆる面で新基軸な曲。

まずサウンド。エレクトロサウンド自体はナオトさんのオハコですが、このちょっとレトロな感じというか、80年代後半くらいを思わせる感じが新鮮。

そして歌詞。“ナオト”という名は“ポジティブ”とほぼ同義だと思ってるんだけど(笑)、そうじゃない一面が出てきていて驚いた記憶があります。


たいせつな

これも配信シングルでしたが、結果的には“配信シングル”ってよりは“10周年ベスト盤収録曲の先行配信”でしたね。

とにかく、歌詞がアツい。別に『カーニバる?』みたいにテンションが高い訳でも、『Brave』みたいに応援歌的な歌詞な訳でもない。でも、自分のために聴いて、自分が自分を勇気づけてまた立ち上がる気力を与えてくれるような、そんな“内服薬”みたいなアツさ。

とにかく、歌詞が好きな曲。


『何度だってLalala』

まず、メロディが好きですね。さらりとさりげない感じなんだけど、ふとした時に口笛で出てきそうなくらいの“浸透力”。

歌詞も、押し付けがましさのないポジティブソングでGood。

アレンジも良いです。歌詞とメロを邪魔しない小ざっぱり感。邪魔はしないんだけど、最大限に彩りを与えている。


『オモワクドオリ』

EP盤からの再収録。ノリの良さは好きだけど、このEP盤が出た時点ではまだまだ“初期のナオト”を求める気満々だったので、今にして思うとちょっと物足りなさを感じていたかも。でも、“今のナオト”の並びの中で聴くと“あの頃の”感が強いという、ぼくの中では不思議な立ち位置の曲。

このアルバムの流れの中でも聴くほうが、断然好きかも。


『Sunny Christmas』

ぼくは年が明けてからこのアルバムを聴いたので、ちょっと乗り遅れた(笑)。

心があったかくなるような、ハートフルなクリスマスチューン。クリスマスに聴いたらさぞや良かったろうなぁ。


『まんげつの夜』

直球のラブソング。でも、世の中的には“ど直球”なんだろうけど、ナオト作品的には新鮮味も感じられるかもしれないですね。特に最近の、“みなとみらいのオシャレなカフェ飯”的ナオト作品からすると、J-POP感が強くて。


『The Day』

ぼくの息子は、まだ2歳にもなってない。なってないのに、もう、「将来、小学校で周囲と馴染めなかったらどうしよう」とか「毎日がツライと感じる生活だったらどうしよう」とか心配してしまう訳ですよ(笑)。

何の話かというと、先々子どもが悩んだりした時に、どう接しようかな?という事のヒントが詰まってる気がする歌詞だという事。別に“対子ども”だけでなく、奥さんともそうなんだけど。

この曲は、3年後、5年後、10年後に今よりもっともっともっと沁みてくる予感のある曲。

あっ、もちろん、今聴いても凄く良い曲だと思ってますよ?


あらら れれれ るるりら

一番最初に思ったのは、「コレも収録するんだ!」という事(笑)。だって、明らかに毛色が違うじゃないですか。

でも、30秒ちょっとしかないこの曲が、(配信シングルの時から)結構好き。

歌詞も、結構良い事言ってんだよなぁ。

でも、やっぱり、「コレも収録するんだ!」(笑)。


Tokyo Summer

配信シングルとして聴いた時には、ぶっちゃけると、『The World is ours!』の二番煎じ的に、ちょっとネガティブな捉え方をしちゃったんです。で、今回改めて聴き直したら、すげぇ良かった(笑)。改めて『The World is ours!』的だとは思ったけど、(ここまでの例に倣って表現するなら)みなとみらいのオシャレなカフェが並ぶ一角で、マックを見つけた感じ。『サザエさん』のエンディングくらいの勢いで駆け込んじゃいそうな(笑)。


『マリーポーサ〜羽ばたく未来へ〜』

最初は「えっ、ゲストボーカリスト⁉︎」と思ってしまった程に、普段のナオトさんとは歌声が違くて。歌い方も違い、そもそも声の“種類”自体が違うように聴こえました。楽曲の雰囲気も違うからなんだろうけど…『ミラベルと魔法だらけの家』なるディズニー映画のエンディングテーマなんだそうですね。だからこんなにも“通常ナオト”と雰囲気が違うのか。

アコースティックサウンドによる、ふくよかなトラック。そこに、どちらかというとミュージカル曲みたいなギアを入れたボーカル。歌詞はナオトさんみたいだけど、これは“訳詞”って事なのかな? 凄くポジティブな歌詞なんだけど、ナオトさんの普段のポジティブとは全くジャンルの違うポジティブ。


『わかってるのに』

初めて聴いた時、曲が終わったところで衝撃を受けました。こんなにも辛辣な歌詞を、辛辣なままで曲を終えた事に。そして、こんなにピリピリした曲でアルバム自体を締めた事に。

これまで何度も言及したように、ナオトさんはそもそもネガティブな歌を歌わない人で。近年では後ろ向きな表現やネガティブな心情の描写も散見されるようにはなりつつ、でも最後には「それでも前を向くんだ」っていう感じで希望を示唆して終わるのが絶対的なパターンでしたが。鋭利な言葉と鋭利な感情を突き立てたまま、曲が、そしてアルバムが終わった…。衝撃的過ぎた。常々「ポジはネガと表裏一体なんだから、もっとネガも率直に表現しちゃえば良いのに」と思ってたんですが、ついにその時が、しかも唐突にやってきた(笑)。

長くなっちゃうけどもう一つ。ティライミは根っからのエンターテイナーだから、過去のどんな曲の歌詞も“ドキュメント”というより“物語”であり、“ティライミの言葉”というより“登場人物の言葉”だったと思うんです。でもこの曲…この音質で、おそらく1発録りで、しかも「たまたま入っちゃった」みたいな呟きもあって。非常に「ティライミの素が出ちゃった」みたいに聴こえる演出がなされてるんですよね。もっと言うと、「中村直人の素が出ちゃった」みたいな。繰り返しますが、ティライミはエンターテイナーだから、この曲も「実際に、中村直人の私生活で生まれた悩みを曲にしました」ではないに決まってるんですよ。ではないに決まってるんだけど、そう思わせようとする演出に、新しさを感じたんです。ずっと、ずっと、ずーーっと、中村直人とナオト・インティライミの間に明確な線を引いてきたナオトさんが、そこをあやふやにする事で生じる面白味みたいなものに手を出してきた気がして、俄然聴き応えがあった。




そんな、計13曲。


アルバム作品としての前作『「7」』の辺りからだいぶ兆候は見られてましたが…作風が、完全に変わりましたね。

なんか、絵で例えると“描く道具を変えた”ってよりももはや“描き手が変わった”レベルの変化。そう考えた時に、「あぁそうか、『「7」』で変わったというより、『旅歌ダイアリー2』を境に変わったのかも」と思い至る。つまり、あの2度目の旅(そのための活動休止期間)が深く影響しているような。もちろん、ぼくはナオトさんの友だちでも仕事仲間でもないので、ホントのところは知る由もないんですけども。


率直に言って、「“あの頃のナオト”が好き!」って人には、ハマりづらいかもしれないですね。ぼくは、「新しいアーティストの作品を聴く」気持ちで聴けるようになったところで、このアルバムを急に好きになりました。






お気に入りは、

#01 『ピンチ』

#04 『たいせつな』

#05 『何度だってLalala』

#06 『オモワクドオリ』

#09 『The Day』

#10 『あらら れれれ るるりら』

#13 『わかってるのに』






この作品が好きなら、

・『POP VIRUS』/星野源

・『愛の出番』/さかいゆう

・『WAVE on WAVES』/平井大

などもいかがでしょうか。






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