>サウンドトラック
>タイトル:TBSドラマ・オリジナルサウンドトラック
>アーティスト:小林武史
>リリース日:1993年 9月 17日
>記事作成日:2020年 12月 9日





聴きました!

音楽家・小林武史を知るぞ!シリーズ⑭。
今回は、かなりトリッキーというか、マニアックな一枚を。

取り敢えず…ジャケットの破壊力よ!(笑) なにもこのカットをわざわざジャケットに使わなくても…。
このアルバムは、小林武史Pが音楽を担当した90年代の3本のTBSドラマ『誰にも言えない』『ダブル・キッチン』『ずっとあなたが好きだった』の音楽を一枚にまとめたサントラ盤だそうで。
今回購入して初めて聴いた訳ですが…CDのどこにも、このアルバムが誰の名義で出されたものなのかが書いてないんですよね(笑) 一応便宜上、この記事冒頭の“アーティスト名”欄は小林武史としてありますが…本当にそうなのか、それで良いのかはわかりません。ただ、前述の通り、小林Pが音楽を担ったドラマの音楽を集めているし、ライナーノーツ的なところには“小林武史さんの音楽”という切り口からドラマプロデューサーが寄稿をしてますから、名義は小林Pという理解で問題ないとは思うんですが…。でも、クレジットを見ると小林P以外が作曲した曲も少しありますし。うーん、どうなんだろ。

…ま、いっか(笑)



『ONE COLOR』
冒頭でテンション上がった!…というのも、この曲、マイラバの名曲『evergreen』じゃないか! メロは、もうまんま『evergreen』ですね。すげぇ、こんなに“磁力”の強いメロディを、惜しむ事なくドラマの“BGM”に提供してたんですねぇ。劇伴音楽を歌モノにするケース自体は小林P作品にはちょいちょいあるんでね、そこには特に驚かなかったけど。『evergreen』が劇伴出身だった事には驚き。
音がシンプルというか無個性な感じ(BGMなので当然ですよね)なので、なんか、「マイラバの『evergreen』の、デパートBGMバージョン」って感じ(笑)

『グレート・マザー』
ちょっと怪しげに聴こえるのは、メロディのせいかドラマのイメージのせいか(笑) 単体で聴けば爽やかにも聴こえそうなものなんですが。

『サイレント・ハピネス』
主旋律があまりにも繊細で感傷的で…これはBGMとしては失格なんじゃないかってくらい。良い曲過ぎて、ドラマの内容が頭に入ってこないよ(笑)
「曲自体が」って事ではないけど、メロディの運び方とかのエッセンス的な部分で、マイラバの『12月の天使達』を想起しました。

『麻利夫のテーマ1』
もう、不穏しか感じませんよ(笑) 別に音階的にバッティングしているわけではないんだろうけど、なんとも言えない不協和音みたいなものを感じます。言うなれば“心理的不協和音”か…。

『真夏の夜の夢(ピアノ・インストゥルメンタル)』
ユーミンの曲ですね。『誰にも言えない』の主題歌をピアノアレンジにした、インスト曲。
インストで聴く事により、曲のメロの美しさが際立ってます。
“ドラマ主題歌を小林Pがインストアレンジした”って事でいいんですかね? それとも、このテイクには小林Pは関わっていないのか…?

『悪い予感』
もう、ものの見事に曲タイトルのイメージそのものの曲。明確ではない、確証がない範囲の、だけど確かに感じる不安感みたいなものがそのまま音になってる感じ。

『麻利夫のテーマ2』
これもまたなんだか気味の悪いというか居心地の悪いというか…でも同時に、なんとも言えない中毒性もある。このドラマの、そして麻利夫というキャラクターの魅力も、この曲と一緒なのかもしれないですね(観た事ないので分かりませんが 笑)。

『真夏の夜の夢〜エスニック・インストゥルメンタル〜』
なんというか…“エスニック”と言われると、もっともっと情熱的で刺激的で、端的に言うなればサンバみたいなイメージを受けるのですが(笑) この曲は、情熱的な部分はありつつもあくまでも上品でおしとやかな感じ。その辺、小林Pの作風のイメージそのもの。

『カタストロフィー』
美しさと儚さ。小林Pの真骨頂みたいな曲ですね。もちろん劇伴なので、大衆的というか“分かり易さ”みたいなものが先に来てる感じはありますけど。

『加奈子の涙』
加奈子が誰なのかすら知らずにこの曲を聴いてるぼくって何なんだろうかという疑問は胸を過ぎるものの(笑)、悲しげないいバラードだと思います。マイナー調で進むけど、瞬間的に“心が上向く1音”みたいなのが混ざるんですよねぇ。

『コンチネンタル・ブレックファースト』
主線が、モロにデパートBGMの音なんですよねぇ(笑) これ、なんの楽器なんでしょうか。
ベースラインは印象的なんだけど、全体的にはデパートBGMという印象しか残らない…。

『メランコリー ・サパー』
どうやら、前曲『コンチネンタルー』から違うドラマに移行したようなんですが…それがありありと分かるくらい、曲の雰囲気が違う。多分、このドラマはコメディなんじゃないかな。そんな感じを特に強く受ける、ユーモラスな曲。

『たそがれ』
シンセの音色が柔らかく、そして感情的に響く。これはフツーに、マイラバ辺りの歌モノ曲のイントロとかに良いんじゃないでしょうか。
適度にセンチメンタルで圧倒的にキャッチー、凄く好き。

『だからハニー(テクノ・インストゥルメンタル)』
作曲者が奥居香さんとクレジットされていたので調べてみたら、このドラマの主題歌がプリンセスプリンセスなんですね。その主題歌をBGM用にインスト化した曲のようです。
ぼくはオリジナルを存じ上げないのですが、なんか、こちらのバージョンはコミカルな雰囲気の曲でした。

『ファーザーズ・スピリット』
小林Pには“ドラマの劇伴”というより“映画の劇伴”のイメージのほうが断然強いのですが…この曲は、そんな小林Pのイメージそのものな感じ。しかも、岩井俊二作品の曲みたいなボーカルありきの感じじゃなくて、『深呼吸の必要』とか『幸福な食卓』とか、そっち方面の。この曲がそのまま『WORKS Ⅰ』に入ってても、全然違和感ない。

『ファイト!』
ベースがブリブリ鳴ってる、結構サイケデリックな曲。劇伴なので、メロディや構成にドラマチックな展開がある訳ではないんだけど、充分存在感がある。この曲をイントロにした歌モノとか作ったら、かなりキャッチーな曲に仕上がりそう。ライブ映えしそうな。

『だからハニー(バラード・インストゥルメンタル)』
『ーテクノ・インストゥルメンタル』とはまた全然雰囲気が違いますね。シリアスというか、物悲しいというか…俄然、オリジナルが聴いてみたくなる。

『イングリッシュ・ブレックファースト』
ケルト的な雰囲気がある。だから『イングリッシュー』なのか?
格式があるというか、キャッチーな中にも厳格さが感じられるアレンジ。

『スキャンダル・ナイト』
ベースラインにはちょっと猥雑な雰囲気が無くもないですが、全体的には都会的でシュッとした感じの印象を受ける曲でした。グロッケンなのかな、鉄琴系の透明感のある音が主線を張ってるからかもしれません。スタイリッシュ。

『シルエット・ハピネス』
静謐ながら、そこはかとなくエモーショナルでもある。さらりとした曲なんだけど、実は凄く印象的な曲。その感じは、現在に至るまで一貫して小林Pの作風にあるもの。
これもまた、『WORKS Ⅰ』あたりにこのまま収録されていても違和感のない良曲だと思います。

『昆虫図鑑』
曲タイトルの付け方とか、ちょっとクセの強い妖しげなアレンジとか…この曲なんかは、例えば『スワロウテイル』とか『リリィ・シュシュのすべて』のサントラ盤あたりに収録されててもおかしくないような曲。
もう、ほんとに、この人の引き出しは無限大。

『ウィンディ・アフタヌーン』
なんか…トレンディドラマの時代の雰囲気がぷんぷんする(笑) 時代を感じるなぁ…いや、その時代を知らないですけども。
陣内孝則さんあたりの顔が自動で浮かんでくる(笑)

『ウィング』
…かと思えば、透明感があって美しいこんな曲も。この曲なんかは、フツーに今の時代(コレを聴いてるのは2020年です)に流れてきても違和感の無い曲。小林Pには先見の明があるのか、もしくはタイムトラベルが出来る人なんだと思う(笑)本作に限らず、どの時代にリリースした作品であっても、“その時代のど真ん中”な曲もあれば“2020年に聴いても違和感の無い曲”もある。トレンドも押さえつつ普遍性も持ち合わせている、いわば最強の音楽家じゃないか。



そんな、計24曲。

小林Pという音楽家を知るという意味では、この作品を聴いてぼくなりの一つの答えが出たように感じました。つまり、上記『ウィング』のところにも書いた、“トレンドと普遍性の両方を見られる人”というところ。
多分、アーティスト(≒タレント。作詞作曲をして、自分の顔と名前で売っていく人たち。ミスチルであり、サザンであり、桜井和寿であり、桑田佳祐)という人たちは、トレンドという側面に比重を置く(置かざるを得ない)立場なんだと思うんですよね。そうじゃないと生み出す音楽がただのマスターベーションになってしまう。
で、プロデューサーというのは、多分そういう中きら出てきた音楽(の原型)を、もっと俯瞰的な位置から見て、時にもっとトレンドの真ん中に落とし込んだり、逆に敢えてトレンドから引き離したりする役割の人なんじゃないかと思う。「思う」というか、本作を聴いてそう思った。そうやって、音楽に深みや奥行きを作るのがプロデューサー。
そういう意味で、小林Pというのは根っからのプロデューサーなんだと思うし、それが天職だとも思うんです。天職というか、宿命というか(笑) 反対に、桜井さんや桑田さんは根っからのプレイヤーなんだと思うし。

なんか、色々と考えさせられる作品でしたよ。
しかも、聴いていてこんなに「飽きない」サントラ盤というのも、なかなかに珍しい。歌詞もなければボーカルによる(ある種の)装飾もない中で、こんなにもドラマを感じられるインスト曲集ってのは、なかなかないです。

…でも、やっぱり、本作のジャケットだけはどうなんだろう(笑)





お気に入りは、
#01 『ONE COLOR』
#03 『サイレント・ハピネス』
#05 『真夏の夜の夢(エスニック・インストゥルメンタル』
#13 『たそがれ』
#15 『ファーザーズ・スピリット』
#20 『シルエット・ハピネス』
#21 『昆虫図鑑』





DLしてライブラリに追加!レベル(^∇^)
…配信されてないけど。










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