>オリジナルフルアルバム
>タイトル:PARADE
>アーティスト:スガシカオ
>リリース日:2006年 9月 6日
>記事作成日:2020年 6月 12日





久しぶりに聴きました!

ぼくの中での、“夏の名盤”。でも、今回感想を書くために検索してみたら、このアルバムって9月にリリースされてたんですね。むしろ6月、7月くらいの、「これから夏だぞ〜!」って感じっぽい勢いのあるアルバムなのに。でもまぁ、『夏陰〜なつかげ〜』とかは、確かに晩夏ですね。

それまでのスガシカオとは、明らかにギアの異なる作品。スガシカオと言えば、マトで言えば「中心円の端っこ」って感じの、メインストリームの中の異端みたいなちょっとマニアックなところを突くイメージだったんですが…本作は、中心円の更にそのど真ん中を突いてくる感じ。それまでがマニアック層に向けられた音楽だとしたら、これは全方位型と言いましょうか。
ぼくは、スガシカオ作品の中でも屈指の名作だと思っているのですが、それまでのスガシカオのマニアックな要素に惹かれたりニッチな音楽を愛好してきた人にしてみたら、もしかしたらちょっとセルアウトっぽく聴こえちゃった可能性はありますよねぇ。

…っていうか、こんな名盤の感想をぼくは書いていなかったのか。



『奇跡』
今となっては、こういう曲にタイアップが付いてシングルで切ってセールス的にも結果を残すっていうそれが奇跡ですよね。最近のCDは、アイドルが長調で歌ってないと売れませんからね(苦笑) こんなにビターな(とは言ってもスガシカオ作品的にはごくキャッチーな部類だとは思いますが)曲が、チャートに入るとは。

『19才』
まぁ、そんな事を言ったらこの曲に勝るシングルは無いですけどね(笑) スガシカオの、黒くてグロくて生臭いsideがこれでもか!ってくらいに炸裂したシングル曲。
「音(アレンジとサウンド)がカッコいいな」とは当時から思ってましたが、曲全体が放つ独特で強烈な“匂い”を丸ごと楽しめるようになったのはごく最近かも。腐りかけの果物が放つ、圧倒的に甘美な匂い。
これはもう、名曲ですよ。

『38分15秒』
確かに、なんてくだらない機能なんだ(笑)
そして…なんてエロティックな歌詞なんだ。初めて聴いた当時のガキンチョだったぼくに、この歌詞を咀嚼する事なんてまったく出来ませんでしたよ。「それは君が脱いでるんじゃなくぼくの手が脱がせているんだ」って、はぁ〜、もう…。スガさんの歌詞はエロいけど、例えばそれは海外のボカシのないポルノ雑誌みたいなあからさまで分かりやすくて安っぽいものではなく、官能小説みたいな耽美なものなんですよねぇ。

『斜陽』
ギターが啼いてますねぇ。哀愁と感傷とを連れて、啼いています。
この曲は、そんなに派手な雰囲気ではないのでリリース当時はそんなに聴き込まなかったんですが…近年、凄く沁みてくるんですよねぇ。
先日、料理中に「結局“コク”って何なのよ?」と思って検索してみたら、“様々な味が重層的に絡まり合い複雑な味を醸し出す状態”的な事(うろ覚え)が書いてあったんだけど…この曲をきくと、「正にそれ!」という(笑) この曲には、コクがあるんですね。

『夏陰〜なつかげ〜』
これはもう…名バラード。素晴らしいとしか言えない。夏の終わりの感傷が、そのまま音として目の前に現れたような曲。治りかけの日焼けのチリチリとか、夕暮れに思いがけず感じる肌寒さとか、かぶる頻度の減った麦わら帽子とか…そういうのが、肌感覚で再現される。今(これを書いてるのは6月の梅雨入り前)聴いたって、晩夏の切なさで涙が出そうになるもん。
普段なら“エグい”とか“生々しい”っていう意味合いで「スガシカオの音楽は大人っぽい」と表現する事が多いけど…この曲は、そういうのとは全く別のベクトルでアダルティ。酸いも甘いも知った大人にしか醸し出せない哀愁で、胸がいっぱいになります。
これ、9月には聴けない。切な過ぎて泣いちゃうから。

『タイムマシーン』
そうかと思えば、ゴキゲンというか何というか…ノリノリな曲。Bメロ辺りは結構センチメンタルな雰囲気になっていて、その緩急に「ズルいな」と思ったりはしますが。
ぼくも、タイムマシーンの開発はすぐやめるべきだと思います。せっかく寝た子を起こす事にしかならないよ、大概の人にとって(笑)

『Rush』
これはもう、『夏陰〜なつかげ〜』のところで書いた、“いつものニュアンスで言うアダルティなスガシカオ”の感じ。アブナさと、妖しさと、だからこその甘美な魅力と。
オモチャっぽい音なのになぜか深みもかんじられる、不思議なギターの音色もいいです。

『Hop Step Dive』
ぼく的“スガシカオ・ベスト10”に入ってくる曲。もしかしたら“ベスト5”にも入るかも。もう、本当に大っっっ好きな曲です。
なんたって、ベースがアグレッシブ。歌ってますなぁ。それが素晴らしい。そしてそこに乗っかるのが、パワフルなんだけどどこかセンチメンタルでもあるボーカル。勢いがあるのにちょっとセンチメンタルでもあるだなんて、うにいくら丼セットみたいなもんさ!(笑)

『真夏の夜のユメ』
ミステリアスなミドルバラード。これ、映画『デスノート』の主題歌だったので、タイアップ先のイメージもあってシングルで聴いた時にはもっとおどろおどろしい曲のように感じていたんですね。でも、アルバムの流れの中でそういうイメージに関係なく聴けば、とても聴き応えのある真摯なロックバラードとしての美しさに震えるんです。鳥肌が止まらなくなるような、圧倒的な美しさ。そして寂寞。
今聴いても感動を覚える曲。

『7月7日』
まるで目の前で歌ってくれてるような、そんな声にドキッとします。近いというか、空気の振動を直接キャッチしているみたいな感覚。アコギの音色もそうだし。そして、ストリングスは圧倒的な完成度で鳴っている。そのギャップが面白くもあります。
優しく、そして少し寂しげなバラード。

『午後のパレード』
パーリーチューン。スガシカオ史上、最もキャッチーな曲なのではないかと思います。この曲には圧倒的な人懐っこさがあり、マスに響く曲だと思います。アルバムタイトルから見てもこの曲がアルバム全体の方向性を象徴する曲である事は明らかであり、それが冒頭の「中心円のど真ん中」と繋がる気がします。
例えば『たいくつ/ゆううつ』と同じ作者だと、誰が信じましょうか(笑)

『Progress(Family Sugar Version)』
最後はボーナストラック的な感じですかね、kokuaの名曲のスガシカオバージョン。オリジナルのほうはこれでもかってくらいにドラマチックなアレンジだったけれども、こちらはごくごくシンプルに。派手なくらいにドラマチックなほうが歌詞が入りやすい人も居るだろうけど、これくらい押し付けがましさのないさらりとした佇まいのほうがスッと胸に入ってくる人も、きっと多いんだろうなと思います。



そんな、計12曲。

初回盤には、本作に収録されているシングルのミュージックビデオのDVDが付いてました。

キャッチーなスガシカオが、次から次へと出てくるアルバム。人にスガシカオを勧めるなら、ぼくはこのアルバムを入り口にして貰ったら良いんじゃないかなーと思います。

そして、見どころの一つは、歌詞カードの中に“ノーグラサン”のスガさんが写っているところ。これは、かなりレア。





お気に入りは、
#01 『奇跡』
#02 『19才』
#04 『斜陽』
#05 『夏陰〜なつかげ〜』
#08 『Hop Step Dive』
#09 『真夏の夜のユメ』





この作品が好きなら、
・『月が昇れば』/斉藤和義
・『ALL!!!!!!』/100s
・『Transition』/山崎まさよし
などもいかがでしょうか。





CDで手元に置いておきたいレベル\(^o^)/










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