>ベストアルバム >アーティスト:NakamuraEmi>タイトル:NIPPONNO ONNAWO UTAU BEST2>リリース日:2020年 2月 5日>記事作成日:2020年 3月 5日
聴きました!
『BEST』とは言え、新曲も盛り沢山のボリューミーな一枚。
大好きなアーティストさん。下北沢のビレバン で『NIPPONNO ONNAWO UTAU Vol.2』を聴いて衝撃を受け、そこから結構経ったのちに「軽音部の先輩だったあの人か!!!!」と気付き気付き2度目の衝撃(笑)なんだかんだで、もう、結構長く聴き続けてるなぁ。好きすぎて、シリアルナンバー付きのアナログ盤とブルーレイ付き初回盤の2つを買ってしまいましたよ。
本作は、CDであるDisc 1と、ライブの様子を収めたBlu-rayのDisc 2の2枚組。
まずはDisc 1から。
『BEST』ベスト盤の一曲目が、『BEST』…もう、この時点で、好き(笑) メジャーデビュー後のオリジナル一作目に『メジャーデビュー』って曲が入ってた、その頃から変わらないこのNakamuraEmiクオリティ。カワムラヒロシさんのギターとコウスケさんのヒューマンビートボックスを軸にした、近年の盤石な布陣を存分に堪能出来る曲。
『東京タワー』続いても、新曲。田舎から出てきた人にとって、東京タワーはランドマーク。物理的なランドマーク(というだけ)ではなくて、心の拠り所。なんでなんですかね?…という事の答えに限りなく近いものが、この曲には詰まっていると感じました。都会的でラグジュアリーなサウンドに、しみったれたリリック(褒め言葉)が映える。
『ちっとも知らなかった』フィジカルとしての音源化は初めてですね。個人的な事なんですが…最近ヘッドフォンを新調しまして。ミッドがいい感じにすーっと抜ける感じのものなんですが、この曲との相性が恐ろしく良いんですよね。もはや「悲壮」とすら言えるような、力の入った曲なんですが…中音域がクリアに聴こえる事で、低音とのバランスが絶妙になって。なんというか…力強いし重厚感のある曲なんだけど、アコギやストリングスの音がクリアで立体的に聴こえてくる事で過度に重苦しくなく聴けて、それがいい。…曲の感想なんだかヘッドフォンの感想なんだか分かんなくなっちゃったけど(笑) 曲そのものの感想は、配信シングルとしてリリースされた時に書いたこちらの記事のほうを是非ご参照ください。
『ふふ』これもまた新曲。今回の新曲勢の中で、いちばん好きです。優しくて柔らかいサウンドとメロディの上で歌われるのは、優しくて柔らかいだけじゃないリリック。虐待がテーマですね。この歌詞の素晴らしいところは、加害者を“自分とは違う世界にいる理解の出来ない悪者”として描くのではなく、自分を含めたごくごく普通の世界と虐待という問題が地続きである事を歌っている点。まぁ、この方の音楽はいつだって、自分であったり自分の身の周りの社会をそのまま歌ってるし、それが魅力なワケですが。
『ばけもの』グルーヴィな曲。えみさんに標準装備されているパワフルさに加えて、しなやかさとユーモアも満タン。この歌詞のテーマをサウンドとアレンジが一体となって表現していると思うし、タイアップ先(ドラマは観てないので印象でしかありませんが)のニーズにガッチリとコミットしてるんだろうなぁとも感じます。
『雨のように泣いてやれ』去年リリースされた、割と今でもちょくちょく聴くアルバムに入っている曲なので、ベストの流れの中で聴くと“先日あったばかりの友人にまた会った”みたいな気持ちになるけど(笑)カワムラさんのギターは元より、この曲はベースラインが心地いいです。メロディアス。
『甘っちょろい私が目に染みて』これもまた、先日会った友達感。このアーティストさんは一貫して「日本の女を歌う」というテーマで作品を作ってますが…この曲は、特にそのテーマにドンピシャだと思います。男のぼくは正直“理解”は出来ても“共感”までは出来てる感触はないんですが…こういう作品を通じて理解を深める事は、有意義だと思ってます。
『相棒』シリアスで緊張感のある曲から、一気にリラックスした雰囲気の曲へ。どっかの車の会社とのタイアップ曲らしいですが…自分の車の中のパーソナル感って、なんとも言えない居心地の良さですよね。それが、曲全体から滲み出ていて、好き。車の中を「自分の部屋のように」っていう人も居るけど、ぼくはそれとも若干違くて…秘密基地的な?うん、それに近い。ワクワクがある。そのワクワクが、この曲にもある。
『Don't』アコースティックなサウンドがご機嫌に、でもあくまでもお上品に遊んでいる。えみさんの歌声とリリックにも遊び心があって、愉快な気持ちになる部分と身の引き締まる部分の両方がある。気が抜けない曲(笑)
『かかってこいよ』多分、“NakamuraEmi好きな曲ランキング”のトップ5に入る曲(ぼく調べ)。取り敢えず、少なくとも「お前の母ちゃんでーべそっ!」のところは一緒に歌うよね(笑)リリックもそうだし、ボーカルのメロディもそうだし、もちろんアレンジもプレイも…好きな要素が多過ぎる、というか好きな要素しか無い。
『N』“メジャーアーティストが、普遍的な歌詞を世間に向けて歌う”のではなく、“中村絵美という人物が、中西麻耶という人物に向けて歌う”うた。ぼくは性格が捻れてるので、通常この手の曲はナナメから聴きがちなんです。例えば「お母さんありがとう」の曲なら「ウチで母ちゃんだけに歌ったれよ」とか、「我が子愛してる」の曲なら「子どもの寝しなに歌ったれよ」となる。それでいくとこの曲もそう感じたっておかしくないハズだったんだけど…そうはならなかったのですよね。それは多分、(そもそも「このアーティストが好き」という贔屓目はあれど)このアーティストさんが、この曲に限らず「自分の目で見た事を自分の言葉で語り、なおかつそこに共感の余地を用意する」という離れ技をやってのける人だから。それって、かなり高度な事。リリシストとしての実力が垣間見える曲。
『新聞』ヴァースのセンチメンタルな感じと、フックの優しくあったかい感じ。その経過に、なんか胸が熱くなります。ネットが発達して、これまでにない速度でこれまでにない社会構造の変化が起こって。そこについて行けず息切れをする事もあるけど、反対に「ついて行かなくて良かった」と思う瞬間もあって。これは、その後者の気持ちとシンクロする曲です。
『大人の言う事を聞け』もちろん曲自体も大好き(この曲も、“好きな曲トップ5”に入る)。でも、ぼくにはひとつ特別な思い出があって…自分の親兄弟とそんなに折り合いの良くないぼくなんだけど、自分の甥っ子がこの曲を大好きだという事を知ったときに、なんか、初めてその甥っ子とのつながりを“感じた”んですよね。もちろん“理解”はしてたけど、実感を伴ってなにかを共有出来た気がしたのが、その時が初めてで。その、大袈裟に言えば“感動”のようなものを、この曲を聴くたびに思い出してちょっとあったかい気持ちになるのです。
『メジャーデビュー』それこそ『BEST』に匹敵する、“NakamuraEmiドキュメンタリー”の曲。カワムラさんの、普段よりもちょっとだけ武骨で荒々しい(もちろん褒め言葉)アコギとの相性が、超絶良い。ベタな例えだけど、侍の佇まいを感じる。
『チクッ』(少なくともデスクトップに取り込んだデータ上では)“新録”とか“リアレンジ”っていう表記は無かったので気を抜いて(?)聴いたんですが、録り直し&リアレンジが施されてました。躍動感のあるストリングスのおかげで、より疾走感がありより肉感的な音になっていると感じました。このアレンジ、だいぶ好きだわ。
そしてDisc 2。去年(2019年)のZepp DiverCityでのライブ。
まずは、オフショットから。展示物のディスプレイに至るまで、えみさんを始めとするチームでイチから。この部分だけでも、日頃のアーティスト活動の充実加減が伝わってきます。
で、「吐きそう、吐きそう」からのライブスタート(笑)『Don't』にてパワフルにスタート。「吐きそう」って言ってた人と同一人物とは思えない、のっけからパワフルなステージング。やはり、フルバンドでのこの人の歌は、凄みが違う。Sunnydays Sessionとの編成も好きだけど、ぼくはやっぱりフルバンドが好きだ。
大好きな曲、『大人の言う事を聞け』。音だけで楽しむ時よりも、実際にえみさんのパフォーマンスとセットで観るほうがマイルドな雰囲気になるこの曲。音源だけで楽しむクールでソリッドな雰囲気も好きだけど、パフォーマンス込みで楽しむほうが実際の“若者”にも浸透しやすいかもしれませんね。ほんと、この人の歌う曲を聞け。
ベスト本編には入ってなくてちょっと残念だった『おむかい』は、ちゃんとこっちに入ってた!オレンジ色の灯りに照らされて、カワムラさんのコーラスもあったかい、全体的に優しくて温かい雰囲気。CDで最初に出た頃は、リリックに出てくる実在の居酒屋のステマっぽさがあるかもとちょっと気になったけど、こうやって実際にプレイする雰囲気を観て、ぼくの見方のうがってる感が恥ずかしくなりますよ。
あったかさを前曲から引き継ぎ、そしてちょっと感傷を増しながら『いつかお母さんになれたら』。つい先日、職場の同僚…というかもはや大切な友人である夫妻のお子さん(7ヶ月)に会ってきたのですが、その日以降、この曲の自分への浸透具合が格段に増した気がしています。あくまで女性の視点のリリックだけど、、、というかだからこそ、男のぼくにこんなに浸透してくる日が来るとは思わなかった…。
家族の歌が続きますね、『めしあがれ』。こちらは、子どもの視点から、親という存在を見上げて思う事を歌ううた。家族って、凄く難しい集まりで。綺麗な事ばっかりじゃないのに、「めんどくさいならその集まりから抜ければいいじゃん」と言われればそれは恐ろしい事で。一人一人が他の家族に対して愛を持っているからこそ、ぶつかる事や行き違う事もある。でも、大事。この曲を聴くと、自分の中で自分の家族に対するアレやコレが呼び覚まされてしまってツライ時もあるんだけど、でも、やっぱり、大切な曲。穏やかな笑顔で歌うえみさんの姿を観る事で、ちよっとだけ救われた気持ちになります。この曲もまた、映像と一緒に聴きたい。
ハードボイルドな『痛ぇ』。この曲のえみさんは、ロックンロール。薄暗いステージの上で“発熱”するバンド。えみさんももちろんカッコいいんだけど、カワムラさんがなんかかっこいいんだよなー。
これまた大好きな曲、『かかってこいよ』。カワムラさんのギターを始めとして、タイトなドラムスも安定感のあるベース(シンセベースですね)も、そして華やかなパーカッションも…演奏陣の息の合い方が想像を絶する。重厚なのにしなやかさも兼ね備えた音のカタマリが、ズドンとぶつかってくる感じ。気持ちいい。
スタジオ音源よりもたっぷりと前奏の尺を取り、メンバー紹介も兼ねつつの『女の友情』。原曲の持つ独特のユーモアが、よりフィーチャーされたステージング。すげぇ、女性のオーディエンスの「そうでもねーよ〜」が力強くて(笑) 人数少ないのに。それにしても…タンバリンがでけーのか、えみさんがちっさいのか(笑)
代表曲、『YAMABIKO』でシメ。さすが、旧い曲だけあって、スタジオ音源からだいぶ自由度が増しているライブテイク。アレンジに大きな変更はないんだけど、力強さもユーモアも“その日その時その瞬間にしかない『YAMABIKO』感”がありました。
そしてエンドロール。エンドロールは『相棒』に乗せて、DiverCity以外の各地のライブ風景も織り交ぜた映像に。終演後、脱力するように床にへたり込むえみさんの姿が印象的。「命がけで」「死ぬ気で」ライブに向き合ってるのが、その数秒で完全に伝わってきました。そらそうだよなぁ、あんなに熱いライブ、余力を残しながら出来るハズがない。
そんな、2枚組計26曲。
ベストらしいベストというか、ベストいう冠にふさわしい選曲だったんじゃないかなぁと思います。聴き応えもあったし、メジャーにおけるこのアーティストさんの軌跡が、誇張されるでも矮小化されるでもなくとても等身大のサイズ感で一枚にまとまっていたと思います。
本作に収録されていた新曲群も全体的にそうだったし、直近のオリジナル作『NOU Vol.6』もその傾向にあったけど、割としっとりじっくり聴かせる系の曲が多くなってきてるので…次の作品では、ぜひガツンとしたものも聴いてみたいです!、、、などと欲張りな事を言いつつ、本心は、新曲を出し続けてくれれば何でもいいや(笑)
本作に伴うツアーは、ギター&HBBでの編成とバンド編成の2本に行く予定だったけど、少なくとも3月のほうは中止なのかなー。ぜひナマでその音を浴びたいとこですが。
お気に入りは、Disc 1 - #02 『東京タワー』Disc 1 - #03 『ちっとも知らなかった』Disc 1 - #04 『ふふ』Disc 1 - #06 『ばけもの』Disc 1 - #08 『相棒』Disc 1 - #10 『かかってこいよ』Disc 1 - #13 『大人の言う事を聞け』Disc 1 - #15 『チクッ』Disc 2 - #04 『おむかい』Disc 2 - #05 『いつかお母さんになれたら』Disc 2 - #08 『かかってこいよ』Disc 2 - #10 『YAMABIKO』
この作品が好きなら、・『Juice』/iri・『PEACE OUT』/竹原ピストル・『高橋優 BEST 2009-2015 『笑う約束』』/高橋優などもいかがでしょうか。
CDで手元に置いておきたいレベル\(^o^)/
ぼくの、もう1つのブログもご贔屓に!▶︎音楽雑記帳