NEW ADVENTURE>オリジナルフルアルバム>タイトル:NEW ADVENTURE>アーティスト:My Little Lover>リリース日:1998年 9月 2日>記事作成日:2019年 4月 16日




久しぶりに聴きました!
突然ですが、4月後半は「あの頃は良かったシリーズ」を開催します。理由は特になし!(笑)   思いつき。
いろんな音楽を聴いてきて、最近の音楽もそれはそれで良いものが沢山あるんだけれども…バンドやアーティストの数は、例えば90年代とかに比べると爆発的に増えてると思うんですよね。増えているのにも関わらず、音楽の幅としては画一化されてきているというか…極端に言っちゃえば、「頭数は増えてるのにバリエーションは減ってる」っていう、そういう印象を受けてしまうんですよね。もちろん、ぼくは世の中の全ての音楽をチェックしている訳ではないので「お前が聴いてる音楽が偏ってるだけだろ」って言われたらそれまでなんだけど…本当にそれだけか?って。ぼくが子どもの頃に聴いていた音楽って、どれも凄く個性的で。キャラが立っているというか、我が強いというか。同じ4人編成のロックバンドだとしても、音の作り方やアレンジの仕方にそれぞれクセがあって。別に途中でラップを入れなくたって、オーケストラとコラボしなくたって、ちゃんとオリジナルなサウンドを構築していた印象があるのです(もちろん、ラップやオーケストラのそれそのものが悪いと言いたいわけじゃないですよ)。
正直、「最近の音楽、退屈なのが多くない?」って思ってしまったわけです(「じゃあ聴くな」とか、そういうのは結構です 笑)。音楽の好みは子どもの頃に決まるという説があるようで、だから「昔の音楽は良かった」「最近のはどうにも…」となりやすいのかもしれないけれども…もう一度言います、「本当にそれだけか?」。
…前置きが長くなりました。シリーズ一発目は、マイラバ!   世間的にも特に有名な『evergreen』と『PRESENTS』はすでに以前感想を書き終えていた(ような)ので、今回は3作目のアルバム『NEW ADVENTURE』をピックアップ。これも、かなりの名作。


表題曲『New Adventure』からスタート。独特な浮遊感と、緊張感。クールなサウンドとどこか無機的ですらあるボーカルは、それまでのマイラバのイメージからガラリと変えた、全く新しいものでした。リアルタイムでこの作品(この曲)を聴いた瞬間、ガキンチョながらにもそれはハッキリと感じ取る事が出来、未知への期待と変化への不安の両方を覚えた記憶があります。
確かこの曲がリード曲だったはず、『STARDUST』。アルバムの前2作がキラキラとした陽光の降り注ぐイメージだとしたら、このアルバムそしてこの曲は夜の匂いが強くしたんですよねぇ。しかも、イメージ的には、月明かりが注ぐ穏やかな夜というよりは、特に黒が濃い新月の夜のような。その雰囲気に、もはや畏怖のようなものさえ感じた記憶があります。いや、正直、今でも感じる。
本作の中で、気を吐くようにポップでキャッチーなオーラを放ってる『CRAZY LOVE』。この曲単体で言えば、例えば『PRESENTS』なんかに入ってても違和感がないかなぁという雰囲気の曲。確か、このアルバムの先行シングル的なタイミングでシングルリリースされた曲。このシングルを聴く限り、「次のアルバムもポップでキャッチーになるのだろうな」なんて思ってたら…思ってたのと全然違って(笑)   そういう裏切りは、大好物。
『ALICE〜album version〜』。この時期、随分とアリスをキーにしながら活動を展開してましたよねぇ。当時チャート小僧だったぼくは、CDTV(的な番組)でこの曲のサビを初めて聴いて、衝撃を受けた記憶があります。「なんてキャッチーな曲なんだ!」って。大げさじゃなく、「こんなに万人ウケする曲って、作れるもんなんだ〜」って感心したものです。この曲も、陽性の匂いがする曲。『PRESENTS』ではなくこちらに収録されたのが、ちょっと意外といえば意外ですね。
『雨の音〜album version〜』。アンニュイな感じ、でもそこはかとなく温もりも感じる。いくらアルバム曲だと言ったって、こういう曲を作成&収録出来たのは、正にこの時代だからこそという感じがします。そもそも雰囲気に余裕が感じられて(聴こえてくる「音」だけの話ではなく、全体的な雰囲気としてね)、とても良いですよね。大人の遊び心というか。
大好きな曲、『DSETINY』。曲開始1秒で広がる、圧倒的なセンチメンタル。血が滴りそうなくらいに鋭利な感傷が、音もなくこの胸を切り裂いていきます。だけど、感傷的で虚無的なサウンドであるにも関わらず、決して「冷たい」わけでもなくて。聴いていると、厭世的とは真逆の、人肌恋しい感じになってくるんですよねぇ。とにかく、圧倒的に心を揺さぶられる曲。
隠れた名曲、『12月の天使達〜album version〜』。ビル風の冷たい都会の谷間に雪がはらりと舞うような、そんな景色が映像として見えてしまうような、圧倒的に緻密に表現された世界観(歌詞の情景描写とか、そういうレベルの話ではない)。『DESTINY』同様に感傷的ではあるんだけれども、音の中にはちょっとした温もりが混じっていて。それがまるで、風のない冬の夜のような…冷たさの中にかすかに感じられる暖かさのような感覚があって。それが救いになる場合もあるし、逆に残酷な場合もある。聴く時々でそこの印象に違いの出る、不思議な曲。
シングル『Private eyes』。これをシングルで切るって…小林武史Pが当時いかにイケイケだったかがよく分かりますね(笑) お洒落さはあれども…アバンギャルドというか、一般受けするような曲では到底ないですよね。それをリリースしてしまう、そして一定のセールスを記録してしまう。いくら音楽バブル真っ只中とは言え、凄いとしか言いようがない。
続いてもシングル曲、『ANIMAL LIFE』。この曲は、akkoさんの少女性というか、可愛らしさが前面に出た曲ですね。当時、ボーカリストとしてだけでなくある種タレント的な人気がありましたもんねぇ。でも、謙兄のギターのサウンドはキレがありロックンロール的で、だから「アイドル路線」ではなくて「アーティスト」としての佇まいをちゃんと確立してる。聴き応えのあるポップチューンになっております。
本作の中でも屈指のマイナーチューン、『Fallin' Blue』。『STARDUST』〜『DSETINY』〜『12月の天使達』と続いてきたマイナーチューンが、この曲で集大成を見せる感じ。もっとも短調が効果的に使われていて、まるで心臓を氷の手で握られるかのようなヒヤリ感。特に、ピアノの音がすごく鋭利なんですよねぇ。これは…聴いていて胸が痛くなるんだけれども、病み付きにもなる。何回だって何回だって聴きたくなる。
で、前曲で極限まで高まった緊張感を一気に和らげてくれるのがその次の『Days』。決してただ優しいだけでなく、凛もした佇まいを宿したミドルバラードです。リリックにも確固たるメッセージ性があって、派手さはなかれどまっすぐに伝わってくるもののある曲です。ちなみに…些細な事かもしれないけど、この曲をシングルで初めて聴いた時、「そしてまた」から歌詞が始まる事に子どもながら衝撃を受けた記憶があります。ど頭が、「そして」。その3文字があるだけで、そこに至るまでに物語があった事を端的に示唆している。単にこの曲の歌詞だけがあるのと、「ここまでの物語があって、そしてこの歌詞」というのとでは、曲の「厚み」と「深み」が全然違う…作詞家としての小林Pの凄さが、もっとも分かりやすく現れていると思います。
ラストは『New Adventure〜reprise〜』。ここにこのリプライズが入る事で、アルバム全体の統一感が更に増したと思います。


そんな、計12曲。
それまでのマイラバのイメージとはかなり異なる、重厚で深淵な世界観。ワインで言ったらフルボディ(ワインは全然飲まないし詳しくないけど 笑)。
これは、前作『PRESENTS』からたった半年でのリリースなんですよね。前作が陽ならこちらは陰、あちらが表ならこちらは裏…そんなニコイチな感じのする作品。前作に収録されなかったシングルがこちらに入っていたりして、そういういろんな経緯から思い浮かべたのはMr.Childrenの『深海』と『BOLERO』。あれも、似たような関係性の二枚でしたからねぇ。あっちは先攻が陰で後攻が陽でしたけど。
ある意味で、マイラバとしての小林Pのピークはこの辺りなんだろうと思います。それ程までに突出した、傑作。怪作とすら言えるかもしれない。「この作品が好きならばあのアーティストのあの作品も…」というレコメンドが、正直しづらいです。あまりにも独創的で個性的な作品だから、同じような色合いの作品が見当たらないんですよね。本作に限らず、この時代の作品にはそういったオリジナリティがあるのですよ。




お気に入りは、#02 『STARDUST』#04 『ALICE〜album version〜』#05 『雨の音〜album version〜』#06 『DSETINY』#07 『12月の天使達〜album version〜』




この作品が好きなら、・『アンソムニア』/鬼束ちひろ・『BOLERO』/Mr.Children・『MONTAGE』/YEN TOWN BANDなどもいかがでしょうか。




CDで手元に置いておきたいレベル\(^o^)/









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