湿った夏の始まり[通常仕様盤]>オリジナルフルアルバム>タイトル:湿った夏の始まり>アーティスト:aiko>リリース日:2018年 6月 6日>記事作成日:2018年 9月 16日




聴きました!
aikoさんの新作が出ると聞いて、こんなにワクワクしたのはいつぶりだろうか。元々、季節感のある音楽というのがぼくは好きで。デビューから何作かは四季をテーマに据えてアルバムを作っていた時期のあるaikoさんなので、ぼくはかなり好んで聴いていて。そんなaikoさんが久々にタイトルに季節を据えた作品を出す…しかも、『夏服』とはある意味で正反対にも感じられる「湿った夏」。。。どんなアルバムなんだろうってドキドキするのは、もはや必然でしょう!


まずは『格好いいな』。キャッチーさとスケール感を両立したサウンドは、正にaiko作品!キラキラした少女性は感じさせつつもそれだけではない「深み」をまとった音…相変わらず、凄くさりげなくやってるけど実はかなり難しいメロディを歌いこなしてますしね。
爽快なポップチューン、『ハナガサイタ』。瑞々しいラブソング…いや、この主人公の脳内は瑞々しさなどかけらもない情熱が蠢いているんだろうけど(笑)甘酸っぱい曲ですよ。
シングル『ストロー』。これもまた、パッと聴いた感じではキャッチーで聴きやすいポップチューンなんだけど、実は結構複雑なメロディと構成だったりして。カラオケなんかで、軽い気持ちでこの曲を入れちゃったりするときっと歌い始めてから後悔する事になる(笑)
洒脱なミドルチューン、『あなたは』。しとやかな空気には大人の香りを感じます。冒頭のフレーズ「遠く空が続いていようが 逢えなければ想像するしかない」などには、切なさだけではなくある種シニカルな一面も見えるようで、そういうところからも大人の恋のほろ苦さが伝わってくるようです。歌詞が秀逸な曲。
続いてもしっとりとしたラブソング、恋をしたのは』。ストリングスが全面に出た、彩り豊かなラブバラード。エモーショナルなサウンドと、シルキーなaikoさんの歌声と、そして端々で可愛らしく鳴っているピアノとのバランスがいいです。
aikoさんらしい軽快なポップチューン『ドライブモード』。刻むピアノとそれに呼応するようなバンドのアンサンブルと。ドキドキするような初々しい恋の、その主人公たちの鼓動のような軽快さ。
エレピのしっとりとした音色とギターの洒脱なサウンドの『愛は勝手』。どこかジャジーな香りのする大人なサウンドが、例えばスガシカオさんなどのような、J-POPとFunkのあいの子のような独特な響きとなって伝わってきます。
緊張感を伴うストリングスから始まる『夜空綺麗』。このままスリリングに展開するのかと思いきや、最初のヴァース以降はポップでキャッチーでカラフルに展開するという構成。ストリングスは終始流麗に鳴っていて、小気味の良いギターリフを含むバンドのアンサンブルが鮮やかで、そこにaikoさんの圧倒的にキャッチーな声とメロとが組み合わさって。まるで「駄目押し」とでも言いたくなるくらい、純度100%のJ-POPでした。最高!
渋谷系をネタ元としたような感じのスタイリッシュなポップチューン『予告』。これもまた、さりげなく難解なメロディライン。鼻歌で歌えそうなのに、いざ歌うと目が回りそうな気がするぞ(笑)低音から高音まで、奔放に跳ね回るボーカルはaikoさんにしか出せない風合い。
スカのリズムで軽快に、『あたしのせい』。ビッグバンド形態で、華やかに展開するサウンド。爽やかなサウンドには「湿った夏」感はないけれども(笑)、浅さが無く「見えていないなにか」がまだありそうな雰囲気の主人公のキャラには「爽やかなだけ」ではないものが感じられました。
美しい曲、『うん。』。例えばこもった熱を落ち着かせるようにさっと降って去っていく夕立のように、優しくて少しだけ儚さも感じさせる曲。わかりやすいラブソングなんだけど、なんか味わい深い歌詞がいいですね。昭和歌謡に通じるような煌びやかさと、aikoさんならではの現代的なセンスの融合作。
『宇宙で息をして』。演奏陣の構成とかアレンジのテイストなんかには、正直これまでも多用してきた要素が色濃く感じられて、アルバムの後半で流れてくると正直ちょっと既視感を覚えてしまう…。高音であまり張らずにファルセットに近い感じで歌っている辺りなんかは、シングル曲のようにインパクトを優先するタイプの楽曲ではなかなかお目なかかれない感じのレア感があるけど。
ラストは『だから』。いや、これもまぁ、aikoさんの王道的アプローチ。でも、『宇宙で〜』の感じだとちょっと既視感を覚えてしまったけれども、こういったタイプのバラードならばぼくは幾らでも新鮮味を持って聴けてしまうという気まぐれさ(笑) バラードになると演奏陣の音数が絞られる傾向にあるので、aikoさんの表情豊かなボーカルとオリジナリティ溢れるメロディラインを存分に堪能出来るんですよね。切ないんだけど切ないだけじゃなく、優しいんだけど優しいだけじゃない。聴く時々によって、感傷に浸る事も勇気づけて貰う事も出来る曲だと思います。


そんな、計13曲。
名盤『夏服』の、続編というか「17年後の物語」という感じのコンセプトだそうです。そういうのを念頭に置いて聴くと、感慨深いものがあります。
話が本作の事から脱線しますが…aikoさんって、ぼくの中ではアレンジの面で「あとちょっと…」「もう少し…」という感覚を覚えてしまうアーティストさんなんですよね。メロディには、独特の「クセ」はありつつもいつでも新機軸があってネタの枯渇を感じない。なのに、アレンジが似通っている場合が多いために「似たような曲が…」と言われる事が多いように感じていて。近年は多数のアレンジャーさんを起用しているものの、その多数のアレンジャーがこぞって「aikoっぽいもの」を意識しているように感じてしまって…。本作も、アレンジという面で言ったら「もう1、2曲減らして、各曲の個性を際立たせるほうが良かったのでは?」と思う部分が正直ありました。一方で、曲の「メロディ」や「歌詞・ストーリーテリング」という意味では、削れるものなんて無いと言い切れるくらい個性的なものばかりで。多くの名曲のアレンジを手がけた島田昌典さんと久しぶりに本作中の何曲かでタッグを組んでおられていて、それ自体は嬉しかった。ぼく個人的には、今後も、いわゆる「aiko的なもの」は島田さんに任せておいて、それ以外のアレンジャーさんを起用する場合には「aiko的でないもの」の追求に取り組んでほしいなぁと思いました。島田さん以外の人が「aiko的なもの」を追求してもあまり意味がないんじゃないかなぁ、って。失礼な物言いをした気がしますが、正直な感想です。




お気に入りは、#04 『あなたは』#05 『恋をしたのは』#08 『夜空綺麗』#11 『うん。』




この作品が好きなら、・『そらのしるし』/MY LITTLE LOVER・『ライフアルバム』/いきものがかり・『Tobira Album』/Rie fuなどもいかがでしょうか。




iPod nanoにも入れておきたいレベル(^.^)









ぼくの、もう1つのブログもご贔屓に!▶︎音楽雑記帳