誕生(通常盤)>オリジナルミニアルバム>タイトル:誕生>アーティスト:チャットモンチー>リリース日:2018年 6月 27日>記事作成日:2018年 8月 25日




聴きました!
解散(「完結」と表現していましたが)しちゃったんですよねぇ、チャットモンチー。それだけでもう、なんか切なくなる…。
初めて聴いたのは、『シャングリラ』だったかなぁ。垢抜けない感じ(失礼)の女の子たちが奏でる、意外と骨太なロックンロール。そんなにどハマりしたという感じでもなかったけれども、シングルが出るたびにチェックしてアルバムが出るたびに聴き込むくらいに大好きでした。旧メンバーの高橋さんが抜けて、「キャッチーさ」よりも「独特さ」「独自性」が強まってきた頃から、リスナーとしての熱は幾らか冷めてしまったけれども、それでも新譜が出る度にチェックは入れていた。
ひとつの青春が、終わりを迎える感じというか。


イントロダクション的な『CHATMONCEY MECHA』からスタート。脱力系ヒップホップユニットの1st.アルバムって感じの音(笑) 音の素材をいじくり倒すのが楽しくて仕方ないって風な、荒削りだけども楽しさが満ちてる感じのインスト。
本編開始、まずは『たったさっきから3000年までの話』から。タイトルからも分かる通り、ごく身近な事から壮大なものへと想いを巡らせる曲。「林檎の落下から重力の発見へ」みたいな、「南半球の蝶々の羽ばたきが北半球で竜巻へ」みたいな、そういう相関。それはリリックだけの話ではなくて、サウンド(アレンジ)面でも分かりやすく表現されてます。刻みが増えていくビートとか、音数が増えていく感じとか。その「過程」が、トラック的にはよく表現されてると思う反面、ボーカルにはあまり感じられず…終始同じ「温度」で歌ってるように聴こえたので、「もっとベタにやっちゃえば良かったのに」とは思いました。直接は関係ないけど、特にライブで披露されるバージョンのMr.Children『ポケット カスタネット』なんかにはそれが鮮烈に表現されていて、一種のカタルシスを覚える程で。やろうとしてる事はそれと同じなのかなーなんて思いました。
シリアスさが増して、『the key』。このヒネた感じは、特に近年のチャットの作風そのもののような感じがして…編成的には違うんだけど「空気感」は同じなように思えて、そういう意味でなんかホッとする感じがしました。ホッとするような曲じゃないんだけど(笑)
DJみそしるとMCごはんをフィーチャーしての『クッキング・ララ』。なんと絶妙な組み合わせか。ふんわり具合とさりげない毒っ気…そのさじ加減がぴったり同じくらいの2組によるコラボ。声質&ボーカルスタイル自体、橋本さんとおみそはんは似てると常々思ってました。でも…並べてみると、おみそはんのハスキー具合が目立っちゃいますね(笑)バンド編成にすらこだわりを無くしたチャットとおみそはん…出来るべくして出来た感じのコラボ。やや低体温気味のボーカルで紡ぐ、少しお疲れ気味の主人公の日常。共感の大洪水を起こしている女性、多いんじゃないかな。でも、決してスレて終わるのではなく、さりげない希望が香っているのがいいです。
曲の温度感としては前曲を踏襲した感じの『裸足の街のスター』。『クッキング・ララ』から続けて聴くと、心のリラックス効果が倍増するかも。2曲とも、グイグイに凝りをほぐそうとしてくる感じじゃないのがいい。さりげなく、優しく、ふんわりと。凝ってる事すらを肯定してくれる感じで。
で、なんと旧メンバーの高橋久美子さんが久々の歌詞をしたためた、『砂鉄』。3人組だったころ、ぼくはあまりどの歌詞を誰が書いたのかとかを気にした事がなくて。「違い」にもあまり気がついてなくて。だからその辺は意識してなかったんだけど、こうやって時間を置いてから高橋さんの歌詞を読む(聴く)と、なんか無性に「あぁ、チャットモンチーだなぁ」って感じがしたんです。もちろん、そうと分かりながら聴いたからというのもあるんだろうけど。サウンド的には「あの頃」のチャットとはだいぶ違うんだけど、これは紛れもなく「チャットモンチーの曲」だった。懐かしくて、嬉しくて、そして切ない。
そしてラストソングは『びろうど』。チャットモンチーって、「普段着で」「どこにでも居そうな」女子たちがやってるバンドなのに…どこか掴み所のない部分が常にあって。垢抜けない感じもしてるのに時々「魔性」が顔を見せるところなんかもそうだし、学校でのなんて事ない瞬間を切り取ったような曲でもそれは「橋本さんの曲」でも「福岡さんの曲」でも「高橋さんの曲」でもない感じとか。要は、「チャットモンチーの作品」に「バンドメンバーのパーソナル」は含まれていない、あくまでもメンバーはストーリーテラーであるという距離感(例えば『世にも奇妙な物語』といえばタモリさんだけど、別にタモリさんが私生活で奇妙な体験をしているという事ではない…という距離感  笑)。チャットはこれまでずっと「ストーリーテラー」に徹してきていたようにぼくには思うのですが、この曲では、橋本さんの息子さんのハミングをフィーチャーしていて。歌詞的にも、橋本さんの(そして福岡さんの)顔が浮かんでくる感じがあって。そういう部分は、これまでのチャットにはまったく無い視点だと思ったし、「あぁ、チャットというフォーマットにはもう収まらなくなったんだな」というのをまざまざと思い知らされる内容でした。


そんな、計7曲。
感じた事で言えば、上記の『びろうど』の欄で書いた事が全てかな。チャットが解散する理由が、「言葉」じゃなくて「音楽」で伝わってくるアルバムでした。もちろん好きなバンドにはいつまでと新作を発信し続けて欲しいものだけれども、でもこの作品を聴き終えると、なんだか解散という結論に納得してしまうのです。
それこそ、高橋さんが脱退した辺りから、このお二人の自由さと奔放さとがググンと増したのは感じていて。「チャットへの熱が冷めたのでは」とは思わなかったけれども、想いのベクトルがチャット以外のものにも分散していっている感じは、単なるいちリスナーでしかないぼくにも何となく感じられる程で。そういう流れの中で本作を聴いたら、それはもう納得するしかないですよね。
恋人にフラれた時、優しく「ごめんね、自分が不器用なせいで」って言われるのと、冷たく「他に好きなヤツが出来たから」って言われるのとどっちがいいか…メンタルへの負担が少ないのは前者だろうけど、気持ちを切り替えて次へ向かいやすいのは後者なのかなって。例えは悪いけど、チャットの本作には後者のそれを感じました。それもまた、優しさなんだと思います。
橋本さん、福岡さん、お疲れ様でした。




お気に入りは、#04 『クッキング・ララ』#06 『びろうど』




この作品が好きなら、・『光源』/Base Ball Bear・『EQ』/シュノーケル・『CHATMONCEY Tribute 〜My CHATMONCEY〜』/V.A.などもいかがでしょうか。




iPod nanoにも入れておきたいレベル(^.^)









ぼくの、もう1つのブログもご贔屓に!▶︎音楽雑記帳