すてきな15才>ベストアルバム>タイトル:すてきな15才>アーティスト:YUKI>リリース日:2018年 1月 31日>記事作成日:2018年 4月 5日




聴きました!
前回のベストアルバム『POWERS OF TEN』以降の、直近5年間でリリースされたシングルを集めたベスト盤。「変わってきた部分」と「変わらない部分」とが両方味わえる、中々に聴き応えのあるベストアルバムでした!


爽やかで軽快なポップチューン『プレイボール』からスタート。ソロデビュー後のYUKIさんはデジタルサウンドを基調としたエレクトロ系のサウンドを主体としてきましたが、この辺りからは、生音の温かみとダイナミズムを堪能出来るアプローチが増えてきた記憶が。JUDY AND MARYの頃のそれとはまた別ではあるけど、YUKIさんのボーカルとバンドの生音というのは、凄く凄く相性がいいと感じていて。その感じを、特に堪能出来る曲。
「おしゃまさん」って感じの、お淑やかさと少しの奔放さがないまぜになった感じの曲『坂道のメロディ』。ヴァースのゆったりとしたリズムから、サビ前以降で加速度的に勢いを増していく構成。まるで、駆け上った坂道の上に広がるパノラマを目の当たりにするような、そんな「動き」のある曲。サビにかけて、聴いているとゾクゾクする。
キラキラしたデジタルサウンドが可愛らしい、『わたしの願い事』。『プレイボール』のトコではYUKIさんの「生音との相性の良さ」を熱弁しておきながら、この曲みたいにデジタルフレーバーなアレンジも「それはそれで良い」なーんて思ったりして。
ミドルバラード、『STARMANN』。なんでしょうか、サビの「一握の〜砂〜」のフレーズがなぜか異常に頭に残るんですよねぇ。フレーズの選び方もそうだし、メロディへの当て方も、なんかツボなんでしょうか。
エレクトロ全開の『誰でもロンリー』。でも、単にアオってくるのではなく、適度な落ち着きというか安定感も兼ね備えていて。懐かしい感じのディスコファンク感があって、その辺にはベテランの風格を感じました。
ビートのノリ的にヒップホップ的な…というかブラックミュージック、R&B的な?匂いを感じる『好きってなんだろう…涙』。まず、タイトルの字面的なインパクトもあってそれでシングルで出た時からやたら記憶に残っている曲。ね、好きってなんなんだろうね(笑)
こちらも、別の意味でタイトルのインパクトにやられた『となりのメトロ』。もちろん、子どもにしか見えない森の主ではない(笑)でも、あの物語を想起させるような、穏やかで優しくて柔らかな曲調ではあります。くすぐったいくらいの温もりが、なんとも言えないまぁるい気持ちにさせてくれます。
そして、これもまた温かさを感じられる曲『tonight』。『となりの〜』が陽だまりのような温かさだとしたら、こちらの曲は暗闇で見つけたロウソクの灯りのようなものか。決して大きくも強くもなく、だけど芯のあるしっかりとした安心感。ピアノが効いた、ジャジーでアダルティなアレンジもGood!
『ポストに声を投げ入れて』。オリジナルアルバムとしての最新作『まばたき』に収録されている曲。曲順なのかな、他の曲のバランスなのかな…『まばたき』で聴いた時よりも、このアルバムで聴いた時のほうが凄く伝わってくるものが多かった。さらりと歌われる物語には、でもとても感情がこもっているような気がして。
力強いメッセージソング、『さよならバイスタンダー』。タイトルが、全てを象徴していますね。バイスタンダーというのは「救急の現場に居合わせた人」「同伴者」の事らしいのですが…ある意味では「同伴者からの独り立ち」であり、また別の見方で言えば「居合わせただけの“モブ”的立場からの脱却」という解釈も出来る。聴き手に解釈を委ねる間口の広さがありながらも、聴いたら確実に勇気をもらえる。
4つ打ちのビートには軽快さがあり、その上に乗っかっているメロディは羽が生えているように軽やかな『フラッグを立てろ』。現時点での最新シングルですね。他の曲よりも感情が豊かににじみ出ている感じ…このボーカルスタイルは、YUKIさんの歴史の中でも新鮮なのではないかな。
で、ここからは未発表音源が収録されています。まずは『ダーリン待って』。ガッツリとバンドサウンドの、ロックバラード。歪んだギターのリフがあり、どっしりとしたリズム隊があり、そこに厚みを加えるシンセがあり。感傷的でありつつ、力強くもある。とにかく、聴きどころを尋ねられたら「サウンド!」と即答したくなる曲。
しっとりとしたバラード、『I love you』。エレピの音が淡く響いて、淡々としながらも印象的なリズム隊がそこに重なる。派手さはないんだけれども、スッと胸に入り込んできて内側から「効いてくる」曲。新曲なんだけれども、なんだか懐かしい感じもして。近年の、ビートとフィーリングのみに特化した流行り曲とは真逆の、じっくりと伝わってくる感じがそう思わせたのかな。隆盛を誇った90年代J-POP、もしくはさらにその源流である歌謡曲なんかを彷彿とさせる。
タイトルすげぇな、『穴』。ネーミングセンスにはユーモアを感じるけれども、作品自体はいたって真摯。これもまた歌謡曲を彷彿とさせる…具体的には吉田拓郎さん辺りの、歌と語りのハイブリッドみたいなメロディが特徴的。そして、サウンドはエモーショナルなロックンロール。ロックンロールであり、ノスタルジックであり、ドリーミーでもある。涙が出る程感傷的なのに、拳を高く突き上げたくなる程アツくもなれる。
ラストは、『手紙(デモ)』。TOKIOさんへの提供曲のセルフカバー…というか、その名の通りデモ音源なんですね。ピアノ一本で歌われる曲には、しなやかさと伸びやかさと奔放さが籠っています。


そんな、計15曲。
「シングルCD」という規格自体が瀕死の状態で、だから「シングル向きの曲」だとか「キャッチーな」とか…もっと下世話に言っちゃえば「売れる曲」とか「タイアップ狙い」とかそういう概念自体が曖昧になってきて久しいですよね。「パッケージシングルなんて出した事がない」っていうアーティストさんも、だいぶ増えてきてるし。そんな中で、本作に収録された曲たちは紛れもなく「シングル曲」だったなぁと、そう感じました。それはもちろんリリース形態の話ではなくて、シングル曲としての器のデカさと使命感と風格と、そして何よりもシングルとして世に出す意味とを持ち合わせた曲たちであるという事。サウンドには最先端のセンスを織り交ぜつつ、アーティストとしてのスタンスに関しては全盛期のJ-POPシーンを知るベテランのそれを見せてくれた、そんな素晴らしいアーティストさんですね。
そして、新曲勢。この3曲(プラス1)は、シングルではないものの上記のようなシングル曲としての佇まいを充分に帯びたものだったと思います!『まばたき』の時にも思ったけど…サウンドアプローチが、ちょっと変化してきましたかね。生音のグルーヴに回帰してきた感じが、ちょっとしました。それこそベテランさんなので、今後も特定のアプローチに固執したりする事なく、生音もデジタルサウンドも適宜織り交ぜていくんだとは思いますが。ホント、この「新曲パート」だけでも充分に聴き応えがありました!!
あと、タイトルとジャケットアートワークも素晴らしかった…なんてエモいんだ!なんて甘酸っぱいんだ!!そしてなんてユーモアに溢れてるんだ!!!ほんと、ティーンのハツラツさもベテランの余裕もどちらも似合う人なんて、中々居ませんよ。




お気に入りは、#01 『プレイボール』#02 『坂道のメロディ』#07 『となりのメトロ』#08 『tonight』#13 『I love you』#14 『穴』




この作品が好きなら、・『UTADA HIKARU SINGLE COLLECTION VOL.2』/宇多田ヒカル・『ayaka's History 2006-2009』/絢香・『Merkmal』/Salyuなどもいかがでしょうか。




CDで手元に置いておきたいレベル\(^o^)/









ぼくの、もう1つのブログもご贔屓に!▶︎音楽雑記帳