>カバーアルバム
>タイトル:沿志奏逢3
>アーティスト:Bank Band
>リリース日:2010年 6月 30日




久しぶりに聴きました!

小林武史PとMr.Children櫻井さんが中心になった、ap bankの資金確保の一環としての作品。の、第3弾。

『沿志奏逢』(以降、便宜上『1』と表記します)はJ-POPのスタンダードとも言うべき、ベテラン勢の名曲を中心に、そして『ー2』ではそれに加えてMr.Childrenと同世代のアーティストの曲もカバーして、そして本作ではMr.Childrenよりも若い世代の曲も積極的に取り上げています。
演奏も、これまでで最もアグレッシブに、かつバンドとしてのグルーヴ感も最高に高まっているように感じました。


#01、『ハートビート』からスタート。GOING UNDER GROUNDの名曲ですね。櫻井さんがこの曲を選んだ事にまず驚き。あんまり接点なさそうでしたから(もちろん、接点の有無で選曲しているワケではないでしょうが)。
もちろんこちらのスタジオ音源も完成度が高くて秀逸なんですが…ぼくはやはり、ap bank fesで、開放感溢れる空間でこのポップソングを“浴びる”のが大好きだったんですよねぇ。この曲を聴くたびに、日差しの熱さ、風の匂い、緑の濃さ、そしてこれから始まる夢のような1日への期待感がフラッシュバックして、もうその場所が無い事への強烈な虚無感に襲われるのです…。

RCサクセションの『ステップ!』。ap bank fesではトータス松本さんとツインボーカルでやってましたね。何と豪華なツインボーカルかと、衝撃にも似た感銘を受けた記憶があります。ベテラン2人なのに、全く守りに入ってないアグレッシブなパフォーマンスも良かった。
こちらのCD音源は櫻井さん単独のボーカルですが、それでもあのアグレッシブさが再現されています。

#03、『若者のすべて』。志村さん時代のフジファブリックの名曲。軽快なリズムとは裏腹に、胸の弱いところをぎゅっと掴まれるような切なさ。夏が終わる瞬間を切り取った、感傷的な歌詞。気持ちはまだ上向いてるのに肌に当たる風がちょっと冷たい…あの瞬間の切なさが、ギュッと詰まっています。

サザンオールスターズの名曲『慕情』を。ひたすらにメロウ、そしてメランコリック。前作の“My Little Lover『evergreen』×Mr.Children櫻井和寿”もそうだったけど、この“サザン×櫻井”も中々の感慨深さ。『奇跡の地球』とはまた違ったカタチのコラボ、そして小林Pの存在の大きさ。
こんなにも伸びやかなのに、こんなにもセンチメンタル。桑田佳祐さんのテクニックを櫻井さんが発信したら、そりゃあ涙腺も緩みます。

#05、『明日のために靴を磨こう』。HEAT WAVEさんの曲ですね。メッセージソングではあるものの、解釈の仕方は聴き手に委ねられている。そんな、間口の広い歌詞が魅力的。小倉博和さんのギターも楽しげに歌っています。

小田和正さんの『緑の街』。ストリングスとピアノが主体の、軽やかで優しい仕上がり。まさにタイトルのイメージ通り、爽やかな風が吹き抜けるような。
後半にかけてはブラス隊やリズム隊も絡んできますが、こんなに厚い編成なのに重たさが全然なくて。やはり、手練れのミュージシャンは引き算の演奏が出来るんですね。

チャボさんの『月夜のハイウェイドライブ』。これ確か、ライブでは披露してないですよね?本作中でも随一の、ムーディでアダルトでジャジーな楽曲。大人の色気でムンムンです。

#08、『Drifter』。キリンジさんのミドルバラード。キーボーディストがバンマスで、ストリングスも居るようなバンドにはジャストフィットする曲ですよね。優しい中にも軽やかさがあって、緩急もあって、遊び心もあって。

なんとRADWIMPSの曲を!『有心論』。意外性にも程がある。強いメッセージ性とキャッチーなサウンドという意味で、RADはMr.Childrenの系譜を継ぐバンドだとは思っていましたが…まさかこんな“ご本人登場”的な邂逅を果たすとは(笑)
でも、正直、若いセンスが炸裂した曲をベテラン勢がカバーする事で野暮ったい事になっちゃうんじゃないかなぁ…なんて、リリース前にはちょっとだけ心配していたのですが、全然そんな事なかった。ベテランの円熟味を、嫌らしさのない範囲で加えていて。だから、まったく違和感がなかったです。

これもまた意外な選曲、Syrup 16gの『Reborn』。原曲が好きだったので、それをBankがカバーすると知って非常に驚き、また嬉しかった記憶があります。だって、さすがにSyrup 16gがチョイスされるなんて思わないじゃないですか(笑)
どこか飄々としたオリジナルに比べて、とことんエモーショナルに歌い上げる櫻井さんの歌声が印象的でした。

ラストはオリジナル曲、『奏逢~Bank Bandのテーマ~』。スタジオライブバージョンが着うたで配信されてましたが、これは改めて録り直しているようですね。
とにかくポップでカラフル。そして、コーラス陣も含めて全てのパートにちゃんとスポットライトが当たっていて、なのに凄く聴きやすくてバランスの良い、割と奇跡の一曲だと思います。


そんな、計11曲。

これまでで最もバリエーション豊かな楽曲。それは決して「統一感がない」という事ではなくて、むしろこれだけ個性的な作品を選んでいながらきちんと“Bank Bandの作品”としてまとまっている事に驚く程です。

本作が、現時点でBank Bandとしての最新作ですね。最後の年のap bank fesでは音源化されていない『ぼくらが旅に出る理由』などが披露されていたので、「その辺が『4』に入ってくるのかな」「『4』で予習して、翌年のap bank fesにも参加するぞ!」なんて思ってましたが…もう、それは叶わないんでしょうねぇ。
Mr.Childrenは小林Pから独り立ちしたし…別に喧嘩別れしたわけではない(と思う)けど、こうして新たな道を進み始めたちょうどそのタイミングでBank Bandを再開するとも思えないし。

『1』と『3』とを比べると、その本質は変わっていないけれど音楽的なアプローチが数段バラエティ豊かになっている事が分かりました。それは、アレンジャーの裁量というだけではなくて、バンドがバンドとして成長した証のように感じます。『1』で地盤固めをして、『2』ではそのカウンターを取り入れ、そして『3』で完全な自由を手にして…あぁ、やっぱり『4』に興味があるなぁ。いつか、きっといつか、再開してほしいものです。ap bank fesも、Bank Bandの活動も。




お気に入りは、
#01 『ハートビート』
#03 『若者のすべて』
#04 『慕情』
#09 『有心論』
#11 『奏逢~Bank Bandのテーマ~』




この作品が好きなら、
・『ALL COVERS BEST』/コブクロ
・『COVER ALL-HO!』/山崎まさよし
・『Listen To The Music』/槇原敬之
などもいかがでしょうか。




CDで手元に置いておきたいレベル\(^o^)/









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