共鳴／チャットモンチー

＞オリジナルフルアルバム

＞タイトル：共鳴

＞リリース日：2015年 5月 13日

＞記事作成日：2015年 6月 23日

聴きました！

近年の作品とか、サポートメンバーの人選とか、先行シングルの感じとか、そういうのから「きっとゴリゴリなロックで攻めてくるんだろうなぁ」と予想していたのですが…意外とポップ。意外とガーリー。

そもそもこの方々の楽曲、初期はロックとポップが半々の割合で配合されていましたが、近年は大幅にロックに振れてましたよね。それが、ある意味でロックとポップが50/50の感じに戻ったというか。でも「あの頃のスタイルに戻った」のかと言われればそういう事でもなくて。

色んな物を飲み込んで、新たなレベルに達した感じがします。

『きみがその気なら』

メジャーなメロディラインが特徴的なストリングスから始まる、可愛らしいポップソング。近年のこの方々が得た最大の武器は、ユーモアですよね。それは単に歌詞の話ではなく、アレンジにしても、メロディにしても。そんな事を改めて気付かされる曲。

『こころとあたま』

シングル。感性と勢いに委ねたかのような、アッパーなロックチューン。曲の勢い的には“からだ”で楽しめるけど、歌詞は“あたま”に訴えかけてきます。それが、“こころ”にどう響くのかはぼく次第か。

『ぜんぶカン』

デジタルな音も織り交ぜたこの曲。言葉遊びが全開のこの曲は、ちょっとhip-hop的でもあり。

とにかく、遊び心が炸裂した曲です。

『隣の女』

物語の主人公（語り手）の気持ちにも共感出来るし、しかし一方で冒頭で語られている“彼女”のやる事も正直分かる…そんな、複雑な気持ちになる曲（笑）。

『毒の花』

刺激的なタイトルに反して、すごくシンプルで等身大な曲。サビで一気に厚くなる音とテンションが、この方々の“今”を知らしめてくれます。

『私が証』

リズミカルなコーラスから始まるこの曲。色んな音が次々に、そしてLとRの全方位からパーカッシブルに攻めてきます。

メンバーが2人になった当初、「2人の音」とか「2人でもロックに」とか、そういうスタンスを打ち出していたように感じるのですが、この曲は、そういう意識すら無くなって単純に音を楽しんでいるように聴こえて、正直「あぁ、良かった」と思いました。こだわりってのは、時に範囲を狭める足かせになってしまいますからね。

『楽園天国』

これまた、肩の力の抜けたユーモラスな曲。アレンジは、US POP的な根っからの陽気さを感じられる曲。BPM的に速いわけではないけれど、跳ねるリズムが疾走感というかそんな感じのものを感じさせます。

、、、と、ここまで来て初めて「だから楽園天国ってタイトルなのか！」と気付く（笑）。確かに、ちょっと『学園天国』っぽいわ。

『最後の果実』

やたら可愛らしく、女の子感が満点。昭和のアイドルの曲、もしくは同じく昭和のアニメソングのような、ちょっと浮世離れした感じの曲。

楽曲の幅、本当に広がってます。

『例えば、』

アコギの弾き語りテイスト。そしてそこから徐々に色んな音が重なって、ゆったりとした行進曲のように規則的なテンポで展開していく曲。

フォーキーな雰囲気は、なんだかとても安心します。

『いたちごっこ』

こちらもまた、可愛らしく。本当に本作は、ユーモアはあっても毒気はない曲が多い。前作なんかは、ファイティングポーズを取っているような前傾姿勢がアルバムの至る所から感じ取れたのですが…本作は、どこを切り取ってもほのかな丸みと優しさを感じます。

『ときめき』

鍵盤が、独特の浮遊感を醸し出しています。ぼくは何故か、トラックから水を連想するんです。梅雨のしとしと降る雨とか、睡蓮鉢で静かに泳ぐ金魚とか、そういう感じの優しい水。なんか、心安らぐ。

『ドライブ』

ラストチューン。“あの頃のチャットモンチー”な感じもするし“今のチャットモンチー”な感じもする。私小説のような、日記のような、とてもパーソナルな匂いのする曲。でも、多分これは、そう思うように仕向けた“物語”なんだろうな。聴いた人それぞれが、自分の記憶と思い出を重ねて“自分の歌”にする事が出来る余地があるから。

そんな、計12曲。

うん、明らかにNext Stageに突入した感があります。それでも違和感がないのは、2人体制になってからあらゆる挑戦をして、「チャットモンチーとはこういうバンド」というのを崩してきたからだと思います。

前作はまだ“スクラップ”の段階だったと思いますが、本作はそこからの“ビルド”だったような。

１点だけ言うなれば…『シャングリラ』とか『染まるよ』みたいな、ベタなキラーチューンも引き出しの１つに残しておいてほしいかな。“新しい引き出しを開ける”事と“古い引き出しを開けない”事はまったく別だと思うので、今後も、時々で良いから分かりやすいキラーチューンを放り込んでほしいっす。

お気に入りは、

#03 『ぜんぶカン』

#06 『私が証』

#12 『ドライブ』

この作品が好きなら、

・『SHISHAMO 3』／SHISHAMO

・『T H E』／tricot

・『VISION』／ねごと