>オリジナルフルアルバム
>タイトル:evergreen
>アーティスト:My Little Lover
>リリース日:1995年 12月 5日




久しぶりに聴きました!

今、上の“リリース日”のところを書こうと思って検索をかけてびっくり…約20年も前の作品なの??????吉永小百合さんとか、黒木瞳さんとか、その人たちと一緒…年齢不詳の本作(笑)
だって、今聴いたって全然古くないし、むしろシャレオツ感ハンパないですからね。ぼくも、初めて聴いた日と今とでは全然違う場所で全然違う生活を送っているので、そういう“月日の流れ”みたいなものは認識していて、だから確かに年期の入った作品だという事は分かっていましたが、まさかまさか20年も前の作品だったとは。


『Magic Time』からスタート。キラッキラしてますね。当時のakkoさんの少女性というか、あどけない感じの印象が最大限発揮されている…というよりも、そういうアーティストイメージを作ろうとした小林武史Pの戦略にまんまと引っ掛かったのかもしれない(笑)でも、トラック自体は、ベースラインの動きがかなり大人っぽい感じになってたりリズムも“大人のお洒落”な感じがしたり。そのギャップもまたニクい!

前曲アウトロから間髪を入れずに始まる『Free』。広瀬香美さんとかが得意な“ややバブリーな、普通の女性”的世界観の楽曲。でも、端々でソフトな哲学が混ざり込んでくる感じが小林Pクオリティ。
当時の小林PはMr.ChildrenとMy Little Loverが二本柱だったと思いますが、前者はUK的な憂いを帯びた質感、対のようにしてマイラバはUS的なカラッとしたポップスという感じに使い分けていたようにも思えます。

#03、セカンドシングル『白いカイト』のAlbum Version。伸びやかなメロディラインと、軽快なブラス。そして、しっかりと存在感のある、バイプレイヤーのような謙兄ぃのギター。多分テレキャスターなんじゃないかな、爽快でザクザクしたギターサウンドが、この曲の夏感を決定付けています。
それにしても、そんな謙兄ぃが、今じゃあんなに男臭いロックンロールバンドでギターを弾いているとは…この時、誰が想像できたでしょうか(笑)

もう、希代の名曲『めぐり逢う世界』。ポップネスと切なさが最高のバランスで共存しています。思えば近年のJ-POPって、極端になっていると思うんです。切ないなら切ないだけ、陽気なら陽気なだけ、頑張れなら頑張れだけ。母だけに向けて歌ったり、“キミ”だけに歌ったり、我が子だけに歌ったり。でも、この時代の曲は、この人たちの曲は、喜怒哀楽、老若男女、時代、文化、その他多くのものを内包していると思うんです。だからいつ聴いても、誰が聴いても、どこで聴いても共感できるのではないかと。一言で言うと、「懐が深い」んですよねぇ。この曲とか、次の曲とかはそれが顕著。
この時代にCDが売れていたのには、ちゃんと理由があると思うんです。ぼくらリスナーもそこまで馬鹿じゃないから、世の中の景気とか販売ルート(パッケージor配信)とか、そんなお金やシステムの事だけで音楽の買う/買わない を決めてるわけじゃない。近年CDが売れないのは、“心に響くかどうか”じゃなくて“売れるか売れないか”ばかりを追求した結果なんじゃないかな…。

はい、謎の怒りをぶちまけてしまいました(笑)本題の“音楽の感想”に戻って『Hello Again~昔からある場所~』。誰もが知る名曲。説明不要ですね。My Little Loverが長く愛された理由のひとつとして、フロントマン(フロントウーマン?)のakkoさんが、前述の“あどけなさ”“少女性”だけでなく凛とした強さも早い段階で見せられた事が挙げられるんじゃないかと思います。この、3枚目のシングルで、マイラバはシリアスな面を打ち出してきましたが…こうやって様々な表情を見せられた我々リスナーは、もっと沢山の表情を見たくなっていったんだと思います。

#06、『My Painting』。前曲で「凛とした…」なーんて言ってたら、今度はひったすらガーリーに(笑)ショートケーキみたいに可愛い曲。この曲を作ったのが小林Pなんだから恐ろしい…小林Pや、今井美樹さんのプロデュースをする布袋寅泰さんとか、、、あのオッサンらは何なんだ(笑)

#07、『暮れゆく街で』。ああぁあぁぁあぁー、古傷が疼く…いや、別に「高2の失恋の時に聴いた」とかそんな具体的なエピソードがあるわけではないんです。でも、この曲の持つ絶対的な陰(いん)のオーラが、心が落ちているときのぼくのバイオリズムにぴったり合致するもんで。それこそ、この曲のメインテーマである“別れ”という事に限らず、ありとあらゆるネガティブな場面でこの曲を聴いてきたんです。だから、この曲を聴くと、重なって交わってくっついてもうワケが分からなくなった“辛い気持ちのカタマリ”が、勢いよくまとわりついてきます…。
作品としても、最後の『悲しいほど愛してるあなたが他人になる』という一節の殺傷能力が…鋭利な言葉。編曲と作曲をメインにしている小林Pは、実は作詞も物凄い。

#08、ポップさとアシッドなかっこよさがツートップの『Delicacy(Album Version)』。クラブミュージックにも通じるような、洒脱かつテクニカルなベースがとにかくカッコいい。ぼくがもしベーシストだったら、確実に、この音色を目指しますね。

#09、記念すべきデビューシングル『Man & Woman』。当時ガキんちょだったぼくには、実はちょっとよく分からなかったんだよなー。曲自体の持つポジティブさやノリみたいなものは好きだったんですが、歌詞の意味はまったくの不明(笑)本当の意味でこの曲が好きになったのは、大人になってからでした。
しかし、このクオリティの曲をどう転ぶかも分からない新人に委ねる小林Pの思いきりもすごい。

ラスト、表題曲『evergreen』。オーガニックな匂いのするミディアムチューン。震災を経験し、ブータン国王の来日があれほど好意的に受け止められ、物質文化に疑問を持ち始めた人も多い昨今の社会の雰囲気においてこそ、この曲が似合うと思うんですがね。


そんな計10曲。

…10曲!?たったの???
というくらい、“濃い”作品集です。上記でも記したように、最近のシーンには極端な曲が多い気がします。切ない曲、ハッピーな曲、会いたくて会いたくて会えない歌、etc …。そういう極端な歌が10曲入ったアルバムは、言わば10色クレヨンなワケですが。このアルバムは、1曲の中に様々な色を内包しているので、10曲入りのアルバムとして考えるともう無限の色が詰まってる状態だと思います。そりゃあ、“濃”くなるのも当然ですよね。

帯に自分たちで“マスターピース”って書いちゃってるような作品は世の中に数多ありますが…10年20年と聴き継がれてきて、社会的な評価としてその二つ名が付いたような作品には、やはりそれなりの理由があるんだなぁと思いました。

最近の、芳醇で幸福で優しさに溢れたMy Little Loverももちろん好きですが、出来ることならもう一度、この頃のような猥雑さや毒や狂気も併せ持ったMy Little Loverを見てみたいなぁ。




お気に入りは、
#01 『Magic Time』
#02 『Free』
#03 『白いカイト(Album Version)』
#04 『めぐり逢う世界』
#05 『Hello Again~昔からある場所~』
#07 『暮れゆく街で』
#08 『Delicacy(Album Version)』
#09 『Man & Woman』
#10 『evergreen』




この作品が好きなら、
・『BOLERO』/Mr.Children
・『沿志奏逢2』/Bank Band
・『Denim』/竹内まりや
などもいかがでしょうか。




CDで手元に置いておきたいレベル\(^o^)/