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【Act.10】
「悪いが、俺は殺し屋風情ではない。それに政治には関心がない。要人の暗殺ならおまえらの仕事だろうが。」
伊原の頬がぐりっと鳴った。
「繰り返し言うが、君は今や合衆国の一市民であり、その保護下にある。そこから先は言うまでもあるまい。」
CIAエージェントは初めて唇の端を持ち上げた。
だが、目は笑ってはいない。
「我々の調査によれば、君は少なくとも今までに3名の人間を殺害している。間接的には10名だがね。実に見事なもんだ。それに君は1,000ヤード(900m)先のエルクを一発で仕留める腕を持っているそうじゃないか。日本国内で動ける人間を我々は必要としているんだ。是非とも協力してもらうよ。」
「それと、もう一つ。」
「今回の依頼について、君は一切無関係という訳にもいかないようだ。向こうの暗殺リストの上位に君の名前が載っているんだ。目の前のハエを追うのに他人の手を当てにする者がいるかね。」
(おそらくこいつら内の誰かが情報をリークしたに決まっている……)
抑えがたい怒りを堪えようとして、伊原は窓の外を眺めながら言った。
「ああ、分かった。だが条件がある。一つは仕事に当たっておまえらの指図は一切受けない。全て俺の判断で動く。」
「それと、もう一つ。」
「俺はタダでは動かない。依頼1件につきこれだけ頂く。」
伊原は人差し指を立てて言った。
「One million.」
「米ドルでだ。手っ取り早く面倒を省くには安いもんだろ。ビタ一文負けないから用意しとくんだな。」

