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「すっげえ」
不本意ながら口元が緩んでしまう。
並べられた皿、色とりどりの料理の数々はダイニングテーブルに、己がダイニングテーブルであったことを思い出させたようだった。
「一汁三菜どこじゃねえ」
「こんなの、朝飯前だけど」
「でも、あれは困る」
リズムが壊された大波乱の朝、予定が無いと言う彼にスペアキーを渡し、入学式準備へと出勤した。エレベーターを使いマンションを出ようとした瞬間、甲高い声が響いた。「翔くん!今日の晩ごはんは何食べたい?!」
「から、やめろ」
「叫んだこと?」
「叫んだことも、外で大きな声でそういう風に呼ばれるのも、あんまり良くない」
「分かった!叫ばないし、大きい声で翔くんって呼ばない!」
短期間とはいえ、男子高校生と2人の生活なんて世間体を気にしたもんだが、俺の杞憂に終わったらしい。
俺のいない間に、親父に持たされたというフランス土産を両隣の住人に配り、年配の夫婦、女子大学生のどちらからも気に入られ、逆にわお土産を持たされたと言うのだから。
「じゃ連絡先交換してっ?
さすがに知ってないと困るよ」
ハイ、と差し出されたiPhoneの画面にはQRコード。
なんつうか、この男。
めちゃくちゃやりよるタイプの男だ…
「あっちじゃこんなの使わないだろ」
「LINE? 俺、小学校までこっちに住んでたからね、よゆーだよ」
小学生がLINEを使いこなす時代と、そんなに最近まで小学生だったのか、という二重のショックを受けつつ、この申し入れは妥当だろうと思い、通勤カバンからスマートフォンを取り出す。
「いつでもLINEしてい?」
「いつでもはやめろ。そうだ、」
もう一度通勤カバンを引き寄せ、中からコンビニで購入した袋を取り出した。
「ルールを決めようと思う」
「ルール?」
「俺と君が、生活するにあたってのルールだ。
いくら先生の、お父さんの頼みだからと言って、俺の元の生活が変えられるようでは困る。今朝みたいのも、困る。だからと言って、君の生活を蔑ろにするつもりは無い。俺も君も、妥協しなくちゃいけない点は出てくるかもしれないけど、こうなった以上は快適に過ごさなくてはならない。それに、共同生活には秩序が必要だ」
「いい考えだと思う!」
ペン立てからマジックペンを持ってくる。
瞬間、それは彼に奪われ、いかにも男子らしい文字を表紙に書き込んだようだった。
ルール。
「だけど、"キミ"っていうのが、やっぱり高圧的だと思う」
目を伏せ、小さなため息をつく。
蛙の子は蛙だと言うように、人たらしの子は人たらしなのだ。
「俺と、潤」
♢
完全に「なんとなく」なんですけど、この物語で、潤ちゃんはiPhoneで、翔くんアンドロイドだったらななんて思います。Xperiaとか(笑)
お読みいただきありがとうございました(^O^)/