■概要
・テイ・エステックは今仙電機製作所に対してTOB+第三者割当増資で34%の株式を取得する
・TOB価格1株930円(公表日である11月9日の終値は659円)
・下限なし、上限5,209,500株(所有割合25%)
・TOB期間11月10日~12月8日(20営業日)、決済日12月15日
・応募合意なし

・TOBには賛同するものの応募は上限付きTOBのため株主の判断に委ねる

■関係者
・買付者側:FA/公開買付代理人は野村證券、算定書あり、FOの取得なし
・対象者側:FAはSMBC日興証券、算定書あり、FOの取得なし
 
■バリュエーション
・公表日の前営業日である終値634円に対して46.7%、
・過去1か月、3か月、6か月平均に対してそれぞれ46.7%、40.9%、33.1%
・過去の株価、終値平均に対しては一般的なプレミアム水準である40%前後を踏まえると相応のプレミアム水準が付与されている状況
・買付者FAの野村証券の算定レンジは市場株価法で598円~699円、類似会社比較法で723円~1393円、DCF法で889円~1162円(DCFの中心値は1025.5円)

・対象者サイドであるSMBC日興の算定レンジは市場株価法で634円~699円、類似会社比較法で765円~1197円、DCF法で925円~1410円(DCFの中心値は1167円)
・買付者、対象者サイドともにDCF法の中心値を下回る価格設定
・一方でBPS 2,263.91円(20/3末)対比では修正PBRは0.41倍の水準




■スキーム
・TOB+第三者割当増資で対象会社の議決権を34%取得する
・TOBで34%に足りなかった分を第三者割当増資で34%まで取得する

・TOBの上限を25%にしているため、最低でも2,134,200株(所有割合10.24%)の第三者割当増資は実施予定で金額ベースで約18億円

・TOB価格と増資価格は同一価格の930円

・仮に応募株券の総数が3,181,173株(所有割合:15.27%)以下となり、最大割当株式数を引き受けても公開買付者の増資後所有割合が22.02%以上34%未満となった場合、公開買付者としては、市場動向等に照らし市場内取引等の方法により公開買付者の増資後所有割合を34%以上とするために必要な最小の株式数に相当する対象者株式を追加的に取得することを予定しているとのこと

 

■考察

・買付者のテイ・エス テックはホンダ系シートメーカーで時価総額2080億円、対して今仙電機は時価総額140億円程度で、上限34%までの取得というのは中途半端な印象

・加えて、増資を組み合わせるスキームだと投資効率は悪く、やるんだったら34%上限でTOBをしたほうが資金効率がいい

・特に株価下落基調とはいえ、40%もプレミアムを払うのであればもう少しプレミアムを低くしてTOBで取得して、資金が必要であればローンで調達すればコストも安いと思うんですが。

・34%にとどめたのはやはり対象会社としても過半を握られたくないという意思表示でしょうか。

 

 

 

①案件概要

・買付者:SSホールディングス(未上場)(対象者の代表取締役社長である鈴木信吉氏が全株を所有する買収SPC)

・TOB価格:388円

・上限・下限:下限は13,208,600株(66.67%)、上限なし

・当初TOB期間:10月1日~11月12日(30営業日)、現在は11月17日まで

・決済予定日:11月19日

・対象者による賛同:あり

・応募合意:対象者の代表取締役社長である鈴木氏の持分(4.83%)について応募合意

・買収金額:約77億円

 

②スキーム

・TOB+SQOで一般的なスキーム

 

③バリュエーション

・公表日前営業日の終値に対して28.9%、過去1か月、3か月、6か月の終値平均に対して35.19%、40.07%、45.86%のプレミアム

・8月6日付で「連結業績予想及び配当予想の公表に関するお知らせ」を公表しているものの、対象者株式の株価は、当該公表後においても大きく落ち込むことなく推移しているため、市場株価に対するプレミアムの検討に際しては9月29日の終値、9月29日までの過去1か月、3か月、6か月の終値単純平均値のそれぞれに対するプレミアムが十分に確保されていることをもって合理的な水準であると判断しているとのこと

・また、TOB価格は、2020年6月30日現在の簿価純資産から算出したBPSを下回っているが、資産売却等の困難性や清算に伴う相当な追加コストの発生等を考慮すると、仮に対象者が清算する場合にも、簿価純資産がそのまま換価されるわけではなく、相当程度棄損することがみこまれること、純資産額は会社の清算価値を示すものであり、将来の収益性を反映するものではないため、継続企業である対象者の企業価値の算定において重視することは合理的ではないと考えているとのこと

・山田コンサルティングのDCF法のレンジは276円~483円で中央値は380円

・DCFは割引率として7.24%~8.84%、永久成長率0%

・事業計画上はシナジー効果については現時点において具体的に見積もることが困難であるため反映していない

 

 

④資金調達

・みずほ銀行から178億円を上限とした借入

・TOB成立後に東京特殊メタル及びサクライ開発の応募売却代金を借入する予定

・鈴木氏の応募売却代金及び東京特殊メタルとサクライ開発からの借入金でスクイズアウト資金に充当する

 

⑤関係当事者

・買付者:リーガルアドバイザーとしてTMI(葉玉弁護士他)、公開買付代理人としてみずほ証券、算定書・FOの取得なし

・対象者:FA算定人として山田コンサルティンググループ、リーガルアドバイザーとしてさくら共同法律事務所を選任、山田コンサルからのFOの取得はなし

・特別委員会は社外取締役2名と中村・角田・松本法律事務所の仁科秀隆弁護士と高野総合コンサルティングの代表取締役である鏡高志氏(公認会計士・税理士)の4名を選任し、仁科弁護士を委員長として選定

 

⑥訂正届出書の提出によるTOB期間の延長

・11月2日に第2四半期の業績予想を修正したことに伴いTOB期間を11月17日まで延長

・業績予想の修正は売上・利益ともに上方修正

・ただし、TOB価格については修正なしで、11月6日の終値はTOB価格を大きく上回る468円

 

⑦考察

・買収金額が77億円に対してみずほ銀行からの調達額が178億円になっている部分については、既存の有利子負債が6月30日時点で約112億円あることから、既存借り入れの返済に充当するものと想定(買収金額に対して大幅に資金準備しているというコメントがよく見られますが、既存借り入れのリファイナンスのためです)

・2020年3月末のBPS860.1円に対して修正PBR(TOB価格/BPS)は0.45倍と、足元の株価に対しては一般的なプレミアム水準ではあるものの、PBR対比ではもう少しつけられたのではという印象

・実際本件公表後に株価はTOB価格を上回って推移しており、株主の反発を受けていることがうかがえる状況

 

 

11月6日、読売新聞グループ本社(未上場)は傘下の遊園地運営会社で上場会社のよみうりランド(9671)を完全子会社化することを公表。

 
■概要
TOB価格は6050円。
TOB期間は11月9日から12月21日までの30営業日
読売新聞グループ本社は子会社関連会社合わせて34%を保有。
第二位株主の日本テレビ放送網はTOBに応募する応募契約を締結
よみうりランドはTOBに賛同
 
■バリュエーション
6日の終値に対して26%のプレミアム。買収総額は約389億円
過去1か月、3か月、6か月終値平均に対してそれぞれ38.57%、48.25%、58.09%のプレミアム水準
大和証券のDCFのレンジは4061円~6230円で中央値は5145.5円でTOB価格は上限に近い水準
プルータスのDCFのレンジは3462円~6381円で大和証券のレンジよりも上下ともに広いレンジ
野村証券のDCFのレンジは4146円~6223円
過去10年の株価推移は以下の通りで、2013年に一度1万越えまでいったものの、その後は4000円~5000円で推移といったところでしょうか。そういった意味ではほとんどの株主は恩恵を受ける形といえそうです。
ちなみに対象会社の連結BSをみると総資産665億円に対して有形固定資産503億円で、土地が162億円あります。
20年3月期の有価証券報告書を見ると賃貸不動産の時価の開示があり、簿価88億円に対して時価評価額は255億円となっています。
税率30%で含み益を考慮した修正純資産は約492億円、9月末時点の自己株控除後の株式数で割ると1株当たり6405円となります。
これを踏まえるとTOB価格は少し低いという印象もありますが、会社を清算するわけではないのでこれ以上の価値が見いだせるという人は対抗TOBもあり得るかもしれません。
 
 
■関係者
読売新聞グループ本社のFA及び公開買付代理人は野村證券、リーガルアドバイザーはNO&T
よみうりランドのFA及び算定人は大和証券で、大和証券はFOも提出、リーガルアドバイザーはシティユーワ法律事務所
対象者の特別委員会でFA及び算定人としてプルータス、リーガルアドバイザーとしてMHMを起用。プルータスはFOも提出
特別委員会は社外取締役1名、社外監査役1名、外部の弁護士1名の3名で構成
外部の弁護士1名は但木敬一氏で元MHMに所属している関係でMHMを活用した感じですかね。
この規模間で特別委員会でFAとリーガルを起用し、FOも提出するというのは少しコストかけすぎな気もします・・・。
 
■背景
新型コロナの影響で外出自粛の影響を受けて業績が悪化。完全子会社かによって経営基盤を安定化させグループ全体のレジャー事業を強化する方針とのこと。よみうりランドは読売新聞グループ本社の完全子会社の株式会社読売巨人軍に読売ジャイアンツ球場を賃貸している関係。
 
 
 

日本アジアグループ(3751)のMBOが2020年11月5日に公表されました。

 

■概要

・TOB価格1株600円(公表日である11月5日の終値は352円)

・下限66.67%、上限なし

・TOB期間11月6日~12月21日(31営業日)、決済日12月28日

・買付者 グリーン ホールディングス エルピー(ケイマン籍)

・応募合意は対象者の代表取締役会長兼社長の山下氏(1.79%)、JA Holdings(9.56%)、JA Partners(2.45%)、藍沢証券(12.56%)の4社で合計26.37%

・藍沢証券の応募契約については、公開買付者のTOB価格を5%以上上回る買い付け価格の対抗TOBがでた場合は、当該対抗TOBに応募することが許容されている

 

■関係者

・買付者側:リーガルはN&A、公開買付代理人は野村証券、算定書・FOの取得なし

・対象者側:リーガルはAMT、FAはプルータス、プルータスから算定書及びFOの取得

■資金調達

・カーライルがスポンサーで全額エクイティ出資で167億円の資金証明を提示

 

■バリュエーション

・公表日の前営業日である11月4日の終値342円に対して75.44%、

・過去1か月、3か月、6か月平均に対してそれぞれ86.92%、95.44%、101.34%

・過去の株価、終値平均に対しては一般的なプレミアム水準である40%前後を踏まえると相応のプレミアム水準が付与されている状況

・対象者サイドであるプルータスの算定レンジは市場株価法で298円から342円、DCF法で440円から723円(DCFの中心値は581.5円)

・DCF法の中心値581.5円を上回る価格設定

・一方でBPS840円(20/3末)対比では修正PBRは0.71倍の水準

・この点、開示書類上では、対象者としては純資産額は、会社の清算価値を示すものであり、将来の収益性を反映するものではないため、継続企業である対象者の企業価値の算定においては重視することは合理的ではないと考えているとのこと

 

 

■スキーム

・カーライルのケイマン籍の買収ビークルによりTOB+SQOで対象会社を100%化

・その後、対象会社が山下氏及びグリーンプロジェクト社を引受先とする第三者割当増資を実施

・対象会社が自己株取得により公開買付者の持ち分を約164億円で全て取得し、対象会社の株式を山下氏及びグリーンプロジェクト社にする

・対象会社は公開買付者に子会社の国際航業株式の80%とJAG国際エナジー株式70%を205億円で譲渡

 

■考察

・164億円で買っておきながら、それよりも高い205億円で子会社株式を取得する想定

・日本アジアグループの開示資料をみると、日本アジアグループ単体では15億円の経常損失、連結では5億円の経常利益を計上しています。

・つまり連結子会社では黒字を計上しているにも関わらず、親会社の事業で赤字状態の為、連結ベースでみると価値が既存している状態

・従って、子会社だけでみると価値が高くなるという状況

・この辺は、資金調達とも連動しているのではないかと思われます。

・つまり、赤字の親会社も含めて買う分にはリスクがあるので、レンダーも金を貸せないが、利益計上している子会社だけになればレンダーも資金提供が可能になるので、まずはフルエクイティで調達し、後でローンを引っ張ってきてレバレッジをかけるスキームを想定しているのではないかと思われます。

・ただ、子会社株式はいずれも100%取得ではないので、ローンを調達してもどう返済するかというのは工夫が必要そうです。

 

 

 

 

 

■概要
・アクティビストファンドのストラテジックキャピタルは京阪神ビルディングに対してTOBを実施すると11月4日に公表

・対象者である京阪神ビルディングからは意見表明はまだでておらず(11月7日現在)
・公開買付者 サンシャインH号投資事業組合(10月5日に組成された民法上の任意組合)

・TOB価格1株1900円
・下限10,206,100株(19.64%)、上限10,206,100株(19.64%)
・TOB期間11月5日から12月17日(30営業日)、決済日12月24日
・公開買付代理人は三田証券、マネックス証券(復代理人)
・応募合意:なし

・不応募合意:ストラテジックキャピタル、Intertrust Trustees(Cayman) Limited Solely In Its Capacity As Trustee of Japan-up、サンシャインF号投資事業組合、サンシャインG号投資事業組合の計9.7%

 

■関係者
・買付者側:リーガルは不明、算定書・FOの取得なし

■資金調達
・サンシャインK号投資事業有限責任組合から194億円の借入による調達

・弁済期日は決済開始日から3日が経過する日までの任意の日、金利は年6%

・上記借入はすでに実行済みで届出日の前々日または前日現在の預金として194億円の残高証明

・すなわち、TOB期間分の金利が発生する形で借り入れを実施
 
■バリュエーション
・公表日の前営業日である終値1873円に対して1.44%、
・過去1か月、3か月、6か月平均に対してそれぞれ4.22%、17.21%、25.99%
・過去の株価、終値平均に対しては一般的なプレミアム水準である40%前後を踏まえると相応のプレミアム水準が付与されている状況
・2020年9月末の自己資本68,725百万円から算定される簿価BPS1322円に、有価証券報告書において重要な後発事象として記載された固定資産の譲渡益を賃貸不動産の含み益から控除して算定される税引き後の1株当たり含み益を加算した修正BPS(2289円)を基準に検討。しかしながら、対象者にDD協力の申し入れを行ったものの、対象者の協力を得られず、非公開の情報が入手できていないことから、公開買付者が見込む株主価値の算定に不確実性があること、TOB成立後の所有割合は29.33%にとどまり、株主価値向上策の実行に時間を要する可能性があることから、修正BPSからの相当程度のディスカウントを考慮すべきと考えたとのこと。

・また、本公開買い付けを実施することについての決定日の前営業日である2020年11月2日における対象者株式の終値が年初来で30.7%上昇したものの、対象者株式の株価が1900円を超えた期間は、それぞれ、取引時間内では6日、終値では4日を超えておらず長期間とは言えないこと、及び、対象者株式の流動性が低いため一定規模の売却を1900円と同水準で行う事は困難であることを鑑み1900円で対象者株式を取得するのであれば、対象者株主に価格および流動性の観点から合理的な売却機会を提供でき、かつ、公開買付者の経済合理性にも適うと考え1900円と決定したとのこと。

・11月6日の終値は2177円ですでにTOB価格を大幅に上昇


 


■スキーム
・上限と下限付きTOB(上限19.64%、出来上がりの不応募株式と合わせて29.33%)

■背景

・従前より株主価値向上のための施策を提案してきたが、現状のままでは対象者の現経営陣がストラテジックキャピタルの提案した方向に経営方針を転換することはないと判断するに至ったことから、株主としての対象者への発言権を強化することを目的として、TOBの実施について検討

 

■考察

・3分の1以上の株式取得を予定しておらず、プレミアムもほとんどついておらず注目を浴びるようにして株価を上げているだけなんじゃないかと思うほど正直よくわからないスキーム