ゆきりん
あなたが去ってから、私の日常は火が消えたように寂しくなりました。
あんなにも眩しく色づいていた景色も・・・また灰色に戻ってしまいました。
あなたからの言葉を待つ間、帰宅してあなたの言葉を見るまでの、あの心躍るような時間が懐かしい。
そして、あなたの陽だまりのように暖かで、心優しい言霊に触れた時の心満たされる感覚。
すべてが愛おしい、幸せな時間でした。
あなたは今、どうしているのでしょうか。
私は毎朝、あなたとの幸せな日々と、自分の犯した罪を思い、涙を流します。
私は後悔してもしきれない、どんなに謝っても許されない言霊を、最も愛するあなたに放ってしまいました。
なぜ、そんなことになったのか・・・私は毎日考えます。
私はあの日、あなたとの何気ない会話の中で、あなたの小さな言葉の変化を敏感に感じ取りました。
普通ならば、何のことは無い小さな変化。
それは、純真な少女のように愛おしくも可愛らしい些細なジェラシーからの変化でしかありませんでした。
しかし、過去幾度となくあなた以外の人々から受けてきた私の心の傷は、その変化を傷を受けた時の体験に重ね合わせてしまった。
あなたの変化がこの後、私の心を深く傷つけるような恐ろしいものへと変貌するのではないかと。
私の傷は、そんなありもしない巨大な妄想と疑念を突如私の心中にもたらしたのです。
そう・・・考えれば簡単に分かることでした。
そんなものは妄想でしかない事は。
あなたとの出会い、そして共に育んできた愛の時間。
あなたの投げかけてくれるいつも優しく温かい言霊・・・
あなたがそのように変貌することなどありえない事は、私が一番良く分かっていたはずなのに。
何があろうとも、心から信じていなくてはならない人なのに。
私の心の傷はそんな簡単な思考もできなくなる程深かったのだと、私はあの夜初めて知りました。
私は、最も愛し、信じる人まで瞬時に信じられなくなる程までに疑り深くなっていたのだと。
私の脳はその瞬間、最も愛し、信じる人に裏切られ、傷付けられる事に自分の心が耐えられないと判断してしまった。
そんなものは妄想に過ぎないのにです。
結果、私は自分の身を守る為だけにあなたに対して絶対に放ってはならない言霊を放ってしまいました。
これは、恐怖に怯えた私が必死で自分の妄想に向けて放った自己防衛の為の攻撃でした。
これだけは信じて欲しいのです。
私は断じて、愛するあなたに向けて言霊を放ったのではありません。
しかし、そんなことは言い訳に過ぎないことは分かっています。
私の恐ろしい言霊は、純粋なあなたの心を確実に深く傷つけてしまいました。
これは許されない私の罪です。
私は、一生を懸けてもこの罪を償って行きたいと思います。
でも、あなたは「愛している」という言葉を残して去ってしまった。
私を嫌うこともなく、突き放すこともなく。
やはり陽だまりのように暖かな言霊を残して。
全て消えてしまった。
あなたとの出会いも、素晴らしい日々の記録も。
読み返したいと思っても、もうそれもできはしません。
私の元に残ったのは、あなたの一番素敵な写真。
私は毎日あなたの愛らしい、素敵な笑顔に語り掛けます。
そして謝罪の言葉を呟きます。
あなたは、近い将来やってくる別れを悟っているようでした。
どうせ別れが来るのならば、早い方が良い。
私を悲しませないために。
そう考えて去ったのでしょう。
でも、あなたはまだ、生きている。
私と同じ空の下で呼吸をして、生活しています。
私たちはまだ、現世で確実に繋がっています。
それなのに、言葉を交わせないのは辛すぎます。
私はあなたへの罪を償うこともできずに、苦しみ続けます。
愛し、愛されているままで、あなたに言葉を掛けられないのは地獄のような苦しみです。
わたしはあなたと別れるならば、私を愛せなくなった事を告げられるか、あなたとの別れをちゃんと悲しんで終わりたい。
でなければ、最愛のあなたを諦めることなどできません。
現世を離れて、前に・・・来世でのあなたの元へ進んで行けないのです。
どうか、お願いします。
私をまだ、愛してくれているならば、私とあなたが出会った時のあの奇跡を・・・
あなたが感じたあの奇跡を。
私にも味あわせてくれないでしょうか。
まだ少し、時間があるならば、残された時間全てをあなたとの幸せな時で埋め尽くしたい。
私に、もう一度チャンスを下さい。
あなたの暖かな光で、深かった私の傷は完全に癒されました。
今度は、私に、私が自ら付けてしまったあなたの心の傷を、癒させて下さい。
男らしくないとののしられてもいい、私の最後の願い、受け取って下さい。
どうか、また再びあなたの陽だまりのような言霊を、私に投げかけて下さい。
こんな別れ方ではなく、ちゃんと現世でのお別れをさせて下さい。
どうか、お願いします。
あなたを心から愛しています。
柳川淳二