高校生の末っ子が

手術のために入院した。


手術日の前後数日は、私達両親は病院近くのホテルに宿泊、待機。

新型コロナのせいで面会もできず、本人も家族も不安でいっぱいの手術だった。

それでも無事手術が終わり、ホッとしていた時に

末っ子からLINEがあった。

「校長先生から本届いたらしい!」

「えっ?校長先生?」

耳を疑ったけど、ホントに通っている高校の校長先生かららしい。

この日で冬休みが終わり、次の日から学校が始まるというのに、住んでる町からこんなに遠く離れた病院になぜ校長先生が来るのか、

すごく驚いた。


校長先生から届いた本は、

青山美智子作「月の立つ林で」。

読書好きな末っ子は、入院中に読み終わったらしい。

月を愛する私としては、

タイトルに引かれ、

末っ子に借りて読ませてもらった。


青山さんの小説を読むのは初めて。

5つの章。

それぞれの話の主人公達が、

それぞれの事情を抱えながら、

自分の身近にある大切なものに気づき、

また前を向いて歩き出す。

素敵な物語だった。

そして

この物語では、「月」も重要な役目をしている。


これまでいろいろなことがあり、

学校、とりわけ「高校」というものについては

あきらめというか、幻滅していた。

でも今回、高校の校長先生の

我が子に対する思いがけない贈り物は、

私の心も暖かくしてくれた。


〈私はひとりごとのように言った。

「…いくらご機嫌だからって、会ったこともない、好きでもなんでもない人のためにどうしてそんなに良くしてくれるんだろう」

佑樹さんはちょっと顔を揺らす。

「好きとか嫌いとか、そういうことじゃないんじゃないかな。ただ誰かの力になりたいって、ひとりひとりのそういう気持ちが世の中を動かしているんだと思う。…」〉

(『月の立つ林で』より引用)


〈その誰か、は自分じゃない誰か。どの人なのかなんて、わかんなくていいんだ。〉

と物語の中で語られている。


自分の無力さを痛感する時がある。

私は誰のためにもなれていないと。

でも、自分の周りの人達が

少しでも幸せになるように

私が思いつく、できる限りのことをしよう。


どこかで誰かとつながっている。

どこかで誰かが支えてくれている。

月があまねく、みんなを照らしてくれているように。


末っ子は退院し、元気に高校へ通っている。

我が子に暖かい励ましをくれた

素敵な物語に出逢わせてくれた

校長先生に感謝。