「殺人犯対殺人鬼」 早坂吝 光文社 ★★★ | 水底の本棚

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しがない書店員である僕が、
日々読んだ本の紹介や感想を徒然なるままに書いていきます。

書店のオシゴトの様子なんかも時々は。
本好きの方、ぜひのぞいてみてください。

孤島の児童養護施設に入所している男子中学生の網走一人。
ある夜、島の外に出た職員たちが嵐で戻れず、施設内が子どもたちだけになった。
網走は、悪質ないじめを繰り返していた剛竜寺の部屋に忍び込む。
許せない罪を犯した剛竜寺を、この手で殺すためだ。
しかし剛竜寺はすでに殺されていた。
その姿を見て震え上がる網走。
死体は、片目を抉られて持ち去られ、代わりに金柑が押し込まれていたのだ。
その後もまるで人殺し自体を楽しんでいるかのような猟奇殺人が相次ぐ。
網走はその正体を推理しながら、自らも殺人計画を遂行していくが…。

 

 

※ねたばらしします。って言うかしないと感想書けません。

 

 

 

 

オチはかなり脱力系。

 

わかりやすく言うとかなりのバカミス。

 

早坂吝氏は元々こういう脱力系のオチをもってくる作家さんなので、それを理解した上で読んでいればたぶん大丈夫。

 

まともな「嵐の孤島」ものだとはゆめゆめ思うことなかれ。

 

正統派の本格ミステリの合間に読むならちょうど良いかもしれませぬ。

 

 

孤島の連続殺人という意味では「そして誰もいなくなった」ですが、

 

本作の本質は「ABC殺人事件」です。もしくは我孫子武丸さんの「メビウスの殺人」です。

 

あ、どちらかと言えば後者の方が読み味が近く、ある意味において「ABC殺人事件」は本作の対極にいると言えなくもないです。

 

「ABC」が真の動機を隠すために「ABC…」の順番に人を殺すという愉快犯的犯罪に見せかけているのに対し、

 

本作は「被害者の名前でしりとり」というふざけた動機を隠すために「復讐」というまともな動機をミスリードに使うという手法が採られているからです。

 

これ面白いよね。

 

で、しりとりという観点で再読すると、結構な伏線が見つかるので再読がお勧め。

 

そして、本作が面白かった方は「メビウスの殺人」も読んでみるとよろし。
(たぶん新刊書店では入手できないけれど)