「アノニマス・コール」 薬丸岳 角川書店 ★★★ | 水底の本棚

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しがない書店員である僕が、
日々読んだ本の紹介や感想を徒然なるままに書いていきます。

書店のオシゴトの様子なんかも時々は。
本好きの方、ぜひのぞいてみてください。

3年前のある事件が原因で警察を辞めた真志(しんじ)は、妻の奈緒美と離婚、娘の梓と別居し、自暴自棄な生活を送っていた。

ある日、真志の携帯に梓の携帯電話から無言電話がかかってくる。

胸騒ぎがして真志が奈緒美に連絡すると、梓は行方不明になっていた。

やがて、娘の誘拐を告げる匿名電話(アノニマス・コール)があり、誘拐事件は真志がすべてを失った過去の事件へつながっていく。

一方、真志を信じられない奈緒美は、娘を救うため独自に真相を探り始め――。


アノニマス・コール




最近、薬丸岳があまり面白くない。



何を読んでも驚きがない。


ストーリー自体にオリジナリティがないわけではないのに、どこか既視感がある。



「金銭目当てではない誘拐」も、


「政治家のスキャンダルを隠すための裏取引」も、


「それを表沙汰にしようとしたために追われることになった正義漢」も、


「味方だと思っていた人物が実は犯人」も、


どれもこれも、どこかで読んだような話だ。



こういう風に話が進んでいって、こういう風に終わるんだろうなという想像がそのまま当たる。


僕みたいなぼんくら読者がわかるくらいだから、たぶん誰にでもわかるのだろう。



公式サイトに人物相関図が掲載されているけれど、






これを見ただけで十分ストーリーが理解できる。何なら本を読まなくてもよいかもしれない。



……まあ、それは言い過ぎだとしても。


予定調和の展開が決して悪いというわけではない。


わかりきったストーリーでも筆力でそれを読ませきることのできる作家はいくらもいる。


しかし、薬丸岳さんにはそこまでの力はない。


とにかく、展開が退屈。



身代金を持って、延々と奈緒美が振り回される中盤はページをめくるのも億劫に感じた。


物語の構成上あれはどうしても必要なのかもしれないけれど、


犯人の指示に従って、あっちへ行ったりこっちへ行ったり。こんなシーンはいろんな小説やドラマで何回も読まされたり、見させたられりしている。


他の小説の似たようなシーンをコピーペーストされていたとしてもわからないかもしれないと思うくらい、


ありきたりでつまらない。


その部分をショートカットしても物語が成立するような構成にできないものか。


できないならば、せめて、もっとハラハラドキドキするように書けないものか。



本作は一事が万事、そんな感じだ。


どのシーンもどの場面もどこかで見たような、読んだような展開ばかり。


目新しさも新鮮味も驚きも感動も何もない。


生まれてはじめて小説を読んだという人なら面白く感じるかもしれないかもね。