奇怪な迷路の館に集合した四人の作家が、館を舞台にした推理小説の競作を始めたとたん、惨劇が現実に起きた。
完全な密室と化した地下の館で発生する連続殺人の不可解さと恐怖。
逆転また逆転のスリルを味わった末に読者が到達する驚愕の結末は?
気鋭が異色の構成で挑む野心的な長編本格ミステリ。
※ねたばらしありの感想です。ご注意を。
「秘密の抜け穴」というトリックは本来であれば本格ミステリの世界では禁じ手であるべきだ。
だがこの「館シリーズ」に限って言えば、
前提条件としてそういうものがあるということを読者は警戒しなければいけないことだし、
それがトリックの重要部分を占めるものではないため、この作品の評価を下げることにはならない。
一瞬、おいおい、秘密の抜け穴がすべての解決かよ、と思わせるが、
そこはどんでん返しがしっかりとある。
作中作というスタイルを採る以上、
登場人物の誰かの性別、年齢、容姿、または存在そのもの…などが
誤解されるような形で記述されている可能性は極めて高い。
ましてや、叙述ミステリの最高峰と言える「館シリーズ」だし。
だけど、僕はついついその事を忘れ……
まさか鮫嶋智生編集者が女性であったなんて思いもつかなかった。
宮垣を犯人とすれば、やや強引とも言える動機だったが、
鮫嶋が犯人であればそれはすっきりと納得いくものになる。
その辺りも含め、やっぱり綾辻氏のどんでん返しは味があるなあ、と思わされる一作。