駅からキャンパスまでの通学途上にあるミステリの始祖に関係した名前の喫茶店で、毎週土曜二時から例会。
謎かけ風のポスターに導かれて浪速大学ミステリ研究会の一員となった吉野桜子。
三者三様の個性を誇る先輩たちとの出会い、新刊の品定めや読書会をする例会、合宿、関ミス連、遺言捜し…多事多端なキャンパスライフを謳歌する桜子が語り手を務める作品集。
何はともあれ、誰もが気になっているだろうから、ひとまずツッコんでおこう。
じゃないと落ち着かない。
何この表紙?
さて、スッキリしたところで、感想。
ねたばらしありなので未読の方はご注意を。
表題作「遠い約束」は、連作短編と言おうか、中編と言おうか。
ひとつめの短編は、暗号を解いて主人公・桜子の大叔父の遺言書を探すゲーム。
ミス研の頼りになる三人の先輩達にとってみれば、しごく簡単な暗号だったろうし、
僕だってちょっと考えればわかる程度の暗号だった。
もっともこの短編はこの連作の導入部にしかすぎない。
桜子と三人の先輩、桜子のおばさん、従弟の少年・和樹、大叔父さんのミステリ仲間である相川さん…彼らの紹介を兼ねて、物語の方向性を示すような、そういう一編だと思う。
「関係ないついでにもう一つ。親子は他人の始まり、言うまでもないが君と母親は別の人間だ。みっともないと思うのは大いに結構だが、恥ずかしいと思う必要は、どこにもない」
さて、パート2。
遺言書も無事見つかっての遺産相続です。
基本的には本編では謎らしい謎はなく、遺言書の公開が淡々と進むだけ。
ただ、ちょっと微笑ましい清水先輩の謎解きがあります。
桜子が忘れていた、もうひとつの遠い約束です。
「うん。大きくなったら新しい星を見つけて、『サクラコ』って名前をつけたげるってげんまんしてくれた」
最後のパート3は、桜子がもう果たせないと思っていたもうひとつの約束が果たされます。
大叔父さんは、自分の心にちょっとした明かりを灯してくれた小さな友人のことをずっと忘れていなかったというのがとても嬉しいですね。
僕も遺言書の内容を見たとき、
「なぜ、桜子の名前がないのだろう?」
と疑問に思いました。
まあ、思っただけで、その先を考えないのが僕の凡人たる所以ということで。
パート1でけっこう伏線も張ってあったんですけどね。
「合言葉はダネイ。そしてリー」