25歳の派遣社員鮎太は、毎日が不運続きでもオネエ言葉の同僚大道寺たちと能天気にたくましく生きている。
ある日、警備会社の正社員になったはいいが、賊に頭を撃たれて意識不明の重体に!
最低の不運を最高のチャンスに変えて、一流の男になるべく大道寺と旅に出る。
誰もが必ず元気になれる人生応援小説。
清水義範さんの小説、久しぶりに読んだなあ。
一時期凝りまくって読み漁っていたのに。
新刊書店に置いてあるものは全部読みつくしてしまい、めったに利用することのない図書館にまで行ったり。
最近はずっとご無沙汰だった。
で。
久しぶりに読んで思ったのは、清水義範さんの小説ってジャンルがないよなーってこと。
ミステリとか恋愛小説とか、そういうわかりやすいジャンルのどれにも属さない。
あえて分類するなら本作は「青春小説」ってことになるのかもしれないけれど……主人公、25歳だしな(笑)
まあ、それはともかく。
清水義範さんが表現したいものはとてもよくわかる。
とてもツイてない主人公が、不運にもまったくめげず、前向きに生きていく姿を描くことで、閉塞感いっぱいの世の中にパワーを与えようとしてくれているのだなあと感じる。
主人公がひたすらポジティブ思考で、ただただその前向きさだけであらゆるトラブルを乗り越えていってしまうあたり、さすがに「そんなうまくいくもんか」と思うのだが。
そこはそれ。
あまり深く考えちゃ駄目。
ここはあえて思考停止。主人公の言葉を信じ込んでみる。
「生きている間は、ゲームは続いているんだ。自分で、勝ち組だとか負け組だとか、結論を出しちゃうのはどう考えたって早とちりなんだよ」
この言葉を、
「いや。そうは言っても現実社会に勝ち負けは存在する。くっきりと格差はある。負け組が勝ち組に転ずるのは簡単ではないし、あきらめなければどうにかなるというものではない」
と思うか、
「なるほど。そうだな。俺だってまだまだ頑張れる。まだまだ負けてない」
と思えるか。
それは読み手次第だと思うけど……ただひとつ言えるのは、後者じゃないとこの小説は面白くないかもなーってこと。