「おかしな二人 岡嶋二人盛衰記」 井上夢人 講談社文庫 ★★★★★ | 水底の本棚

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本好きの方、ぜひのぞいてみてください。

二人が出会って多くの傑作ミステリーが生まれた。そして十八年後、二人は別れた―。大人気作家・岡嶋二人がどのようにして誕生し、二十八冊の本を世に出していったのか。エピソードもふんだんに盛り込んで、徳さんと著者の喜びから苦悩までを丹念に描いた、渾身の自伝的エッセイ。




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何度読み返したか知れません。

こんなに面白いエッセイはそうはありませんね。

岡嶋二人のファンはもちろんのこと、ミステリ作家を目指す人は必読の一冊だと思います。


優れた舞台を見たら、その舞台裏を覗いてみたいと思うのは好奇心でしょう。

どんなふうにそれが作られているのか、それを知りたいと思う感情はある意味、当然だと思います。

(それを見て感動するか、がっかりするかは人それぞれでしょうけれど)


ただ、優れた舞台であればあるほど、作り手はその過程を見せたくないものなのではないでしょうか。

観客の目の前に提示するのは、完璧に作り上げられた舞台のみで、張りぼての舞台装置や、楽屋での様子まで見せてしまったら、その舞台が崩壊すると考えるのではないでしょうか。


でも、井上夢人さんはそれを全部、見せてくれています。

赤裸々という言葉でも足りないくらい、完全に、正直に。


「岡嶋二人」という日本を代表するミステリ作家の一人がどうやって誕生し、そしてどうやって壊れていったか。

二人でいることのメリットやデメリット、アイディアの生まれる瞬間。

この本一冊ですべてがわかるんです。


そして、どうして井上夢人さんが、本来なら隠したいはずの舞台裏を見せようと思ったのかも、同時に理解できます。


絶対に読んで損のない一冊だと思います。