これは私が実際に今日体験した出来事である。
現在働いている会社には営業や事務といったどこの会社でもあるような部署から聞いたこともないであろう部署も多くあり、私が所属する部署は私を含め二人。細かい作業をするのが私で基本的には部屋に一人、もう一人は先輩で主に隣の部屋で機械を操作している。
いつものように朝8時半に仕事を始め、何事もなく午前は終わった。
先輩は今日用事があるらしく昼休みの時間になると急いで帰っていった。
午後は一人なのかと少し不安を感じながらも昼食を済ませ、習慣化されたようにスマホを取り出しアプリゲームをプレイする昼休み。
昼休みが終わるチャイムが鳴り、昼食後の眠気であくびをしながら作業を始める。
作業を始めてから20分くらいだろうか、隣の部屋からカチャンカチャンという音が聞こえてきた。まるで小さいレバーを触ったような、ドアノブに軽く手をかけたときのような、そんな音だ。誰もいないはずだからと気にすることもなく私は作業を続けた。
だがその音はすぐにまた聞こえてくる。
先輩は午前で帰るからと、いつもは動きっぱなしの機械は電源を切っていた。
2度目ともなると何の音なのか気になりだして椅子から立ち上がり隣の部屋へ行ってみる。
さっきまで鳴っていた音は私が部屋に入ると聞こえなくなった。
結局、音の正体は分からず部屋を出る。
作業を再開しようとするがまた気になると集中できないので隣の部屋へのドアはしっかりと閉める。心配性の私はさらにエアコンの風量を最大にして音が聞こえないようにした。これで一安心か、そう思って仕事を始める。しばらく音は聞こえることなく作業は順調に進む。
一段落したところでペットボトルのお茶を飲みながら息をつく。すると、隣の部屋からあの音が聞こえてきた。
カチャンカチャン、、カチャ、、カチャカチャ。
さっきまでは気にしていなかったがその音は一定の間隔とか決まったタイミングでもなく不定期に聞こえてきていた。
気になりだしたら正体を知るまでは落ち着けるはずもなく見に行くが私が行くと音は止む。
見に行っては音は止み、戻っては音は聞こえてくる。
こんなことを10回は繰り返しただろう。
部屋を行ったり来たりして探すが正体は分からなかった。
今まで心霊現象なんて全く信じていなかった私もここまで奇妙な出来事が起きてしまっては信じるしかないかと思った。
よく映画などで見ていた、怖いと分かっていてもそっちへ行く人の気持ちがようやく理解できた気がした。
その後はどうしたらいいか考えながらもしばらく音の聞こえていた部屋で立ちつくす。たった1分、1秒でさえも恐怖心がかなり長く感じさせる。
私がいるときだけ聞こえなくなるのはなんでだろう、部屋の隅々まで見渡しながら考え出すと突然その音は聞こえてきた。
カチャ、カチャカチャ!
すぐ近く、真横で聞こえた音のほうをとっさに見た。
そこにあったのは大きなシャッター。このシャッターを開ければ外へと通じる廊下へ出ることができる。
なんで音がするのだろうと裏側へ回り込むとすぐに恐怖は消えた。
小さな隙間から入ってくる風がシャッターを揺らしていただけだったのだ。
今まで一度も気にすることがなかったこんな単純な音に怯えていた自分が馬鹿馬鹿しく思えてきて一人でニヤけながら席へと戻る。
定時で帰る時間までずっと、家に帰ってきても今日起きたことは何度も頭の中で繰り返された。
音が最初に聞こえてから正体を知るまでのたった3時間の恐怖、一生忘れることはないだろう。
終