会社の後輩が俺の飲み仲間の年上の同僚の女性に恋をした…。
「男っぽい性格のかなりガサツな女性だぞ…」
と、前々から後輩に言ってはいたのだが…
恋は盲目…
って言葉もあるように、
彼女のマイナス面を言っても何も聴こえない様子の後輩であった。
「お付き合いを前提に飲みに誘いたい」と言っていたので、
彼女とよく飲みに行く俺は後輩に…
「じゃあ今度それとなく伝えてやろうか?」
と、お膳立てをしてやろうとしたのだが…
「いえ!大丈夫です!メアドとかも知らないので、とりあえず恋文を渡そうと思ってるんで!」
と、言うと…
財布の中から一枚の紙切れを出して来た。
手紙と言うよりも…
あまりにも粗末なメモ用紙的なその恋文?に俺は思わず…
「まさかそれが恋文?」
と突っ込んでしまうほどの、粗末な後輩の恋文であった。
しかしながら…
ガサツな彼女に負けず劣らずな後輩は、
その二つ折りにされたメモ用紙にセロハンテープを貼ると、
彼女が重要事項をメモって貼り出している、必ず目にするPCの画面の端にくっ付けたのだった。
そのあまりにも雑な告白?に俺は…
「手渡しでは?」と…言い掛けたのだが…
それを遮る様に後輩が、
「読んだ時の様子見ておいて下さい!そしてどんなか教えて下さいね❗」と言うと早々に自分の部署へと去って行った。
それから仕事に追われること数時間…
当然…
人の恋路なんてものはスッカリ忘れていた俺は、
一息ついた瞬間…
ふと目に入った彼女を見て、
何故か大慌てで彼女のPCの端の雑な恋文に目を向けて見た…。
目を凝らす事数秒…
どうやらPCの端には、恋文がない様子であった。
(あれを読んだか‼)
そこで俺は彼女の仕事の合間を見て…
あの雑な恋文の感想を聞いてみることにした。
「お疲れさん。PCのメモ読んだ?」
すると彼女は訝しげな表情をしながら…
「ハア?なんだそれ?」
と…
明らかに…後輩の告白に対する答えを聞くまでもない反応を見せたのだった。
そこで一部始終を話し、改めて彼女のPCを見に行く俺と彼女…。
がしかし…
触ってもいない後輩の恋文は、何故かPCには無かったのだ。
「無いじゃん」
と、全く興味無さげに言う彼女…。
「だな…おかしいな」
と、どうでも良い感じで答える俺…。
そこで…
女性とは思えないほど散らかりまくっている、彼女のデスクの周辺に俺は目を向けて見た。
すると…
彼女のデスクの下、
いくつかのゴミらしき物の中に…
なんとあの雑な恋文が紛れていたのであった。
おそらく…
埃っぽい彼女のPCにセロハンテープが耐えられなくなり、
ヒラヒラと下へと落ちたのだろう…。
とりあえず俺は…
とても残念な扱いの、雑な恋文を拾い上げて…
「読む?」と…彼女に視線を向ける。
「いや…イイ…年下に興味ない」
と…あっさりキッパリ言い放つと、
彼女は喫煙所へと消えて行ったのだった…。
手元に残された、気の毒で雑な恋文に目を落とす俺…。
よくよく見ると…
何度か彼女に踏まれたのか、
靴の足跡が付いていた。
それをみた瞬間思わず俺は…
(恋文じゃなく…恋踏みだな。)
と…
くだらない事を思うと共に、
後輩への対応を適当に考える…
雑な俺でした。