道に迷ったみたいだ。」
男は薄暗く狭い通路をただひたすらに進み続けた
しかし、ここがどこなのかはまったく分からない
そもそもなぜこんなところにいるのかすら分からない
「最悪だ。」
パニック状態に陥っていた男の前に一人の女が現れた
「すみません。道に迷ってしまった者なのですが。」
男は恐る恐る女に話しかけた
「私にもここがどこかよく分かりません。」
女は低い声でボソボソと口を開いた
「私はここに住んでいる者です。」
「ここへ来てかれこれ10年くらい経ちます。」
男の体には鳥肌が走った
「けど、なぜこんな場所に住んでいるんですか?」
「不条理な現実に嫌気がさしてしまったんです。」
女の顔からは悲壮感が滲み出ていた
「けどここならそんなこともないですよ笑」
真顔だった女が口角を少しあげて言った
「こんなとこに人は寄りつきませんからね笑」
「寂しくないですか?こんなとこに一人っきりで。」
「全然笑。むしろ現実社会より生きやすいですよ。絶望の奥底って案外心地良いものだったりするんですよ。常に幸せですからね。」
男は色々と恐ろしくなりその場を走り去った
走っている最中もあの女の顔が思い浮かんでくる
男は走り続けた
男のその後は知る由もない
絶望の最果てにはきっと快楽が待っているのだろう。