暑い日の昼下がり、東京に住む甥からの電話で 「今、甲子園に来ていて先日亡くなった彼の父 (私の兄) の形見の品を届けたいのでそちらに寄りたい」との事。

 彼の高校の母校の試合を見に 甲子園に車で来ているのだと言う。彼が 高校時代に野球少年で甲子園に試合に来ていた事を思い出しました。

 80キロを越える巨体の彼も50才を過ぎ 仕事も順調にこなす大人になっていますが その表情に悪戯だった子供のころの兄の面影があって懐かしさがこみ上げてきました。

 

 彼が手渡してくれた形見の品は、私たちの父が戦前戦後愛用していた見覚えのある スイス製の懐中時計でした。

手応えのしっかりしたネジを巻くと繊細な秒針が滑るように優雅に円を描いて回りだしました。耳に当てると、力強いコチコチと言う響きに何故か胸がドキドキしました。父も兄も同じ音を聴いていたのですね。

 百年の時を越えて この時計は私に何を語りかけているのでしょうか。

 

 夕刻になっても未だ暑さの収まらない中「何かあったら連絡してね」と優しい言葉をかけて帰りました。

 

 花材 ・神戸リリー ・小菊 ・ガーベラ ・ひまわり

 花器 ・有田焼 壺

    掛け軸は 父の趣味の収集品