税務調査専門の公認会計士・税理士、たけよしのブログ

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税務調査を徹底的に研究・分析し、合理的な対応により追徴最小化を目指すブログです。「なんとなく」の対応ではなく、会計・税務・法律の知識及び経験に裏打ちされた税務調査対応をお求めの方は、小職までご連絡ください。

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ご無沙汰しております。公認会計士、税理士のたけよしと申します。

本日は、当ブログについてお詫びとお礼のご連絡をさせていただきます。

 

早いもので、このブログを始めて7年が経ち、その間小職も公私ともに色々とありました。

このブログでお返事をいただき、そこから依頼につながり、日本全国の税務署に行って依頼者と協力しながら調査対応を行ったり、時にはお叱りの言葉をいただいたり、そのすべてが良い思い出で、小職の糧にもなりました。

 

 

そんな貴重な経験をいただいたブログですが、もう少しした後に閉鎖することにいたしました。

 

理由としては情報保護の面から書けない部分もあるのですが、諸事情により税理士登録を抹消することになり、税務相談ができなくなるためです。

(税務業務は税理士の無償独占とされており、弁護士と違って対価をもらわなくても税務の相談をしてしまうと、それだけで税理士法違反となってしまいます。)

 

 

ちなみに、税理士登録を抹消するのは懲戒を受けたからという理由ではありませんので、その点はご心配無用です(笑)

また、公認会計士登録は継続します。

 

 

このブログ自体を削除するか、残すかは検討中ですが、とりあえずは残していこうと思います。

また、基本的に更新はしていきませんので、あしからずご了承ください。

 

 

今まで本ブログをご愛読いただいた皆様、ふらっと立ち寄られて小職に共感いただいた皆様、誠にありがとうございます。

税務相談ができなくなり、ドメインも畳んだ影響で、info@zeicho-shinryo.comのメールも使えなくなりますので、ご容赦ください。

 

 

それでは最後に、皆様のご多幸をお祈りしております。

 

2019.5.22

たけよし

 

 

 

 

こんにちは、公認会計士・税理士のたけよしです。
今回は税務調査から離れますが、税理士はじめ専門家が陥りやすい「解決策思考」のお話をしたいと思います。

 


この話は、あるビジネス関連の研修で教わったものなのですが、解決策思考が何なのかを説明する前に、まずは次の2つの事例を考えてみてください。

 

【事例1】
あなたの友人(20代前半)が、次のような相談をあなたにしました。
あなたはどのように答えますか?

友人「オレは芸能界に入って芸能人として成功したい。そのためにはどうすればいいと思う?」

※20代の友人がいなければ、20代の親戚と読み替えても構いません。


【事例2】
あなたの友人(ラーメン店経営者)が、次のような相談をあなたにしました。
あなたはどのように答えますか?

友人「最近、経営が苦しいんだけど、経営を良くするにはどうすればいいと思う?」

 

もちろん、これには明確な答えは無いのですが、その返答が次のどれに属するかによって、優劣が決まるようです。

 

 

<最も悪い返答>
方法を提案する「解決策思考」

具体的な返答例
・オーディションを受けた方が良い。
・芸能事務所に履歴書持って行けば?
・新商品開発がいいんじゃない?
・立地を変えると良い。

 


<次々善の返答>
なぜ、を聞く「質問型思考」

具体的な返答例
・なぜ、芸能界に入りたいの?
・なぜ、芸能人になりたいの?
・なぜ、経営が苦しいと感じるのか?
・なぜ、経営を良くしたいの?

 

 

<次善の回答>
どこ、を聞く「掘り下げ思考」

具体的な返答例
・芸能界は広いけど、どの分野で成功したいの?(俳優、歌手、モデル、等)
・(仮に俳優だったとして)俳優として成功したいというけど、どういったタイプを目指すの?(舞台or映画orテレビ、イケメンor三枚目、主役or脇役)
・経営が苦しいのはどの店?
・売上が少ないのか?それとも、支出が多いのか?
・悪いのは味?それとも店の環境?

 

 

<最善の返答>
定義を確認する「そもそも思考」
・そもそも、芸能界に入るってどういう意味?(どういう状態になれば、芸能界に入ったと言えるの?)
・そもそも、芸能界で成功するって、どういう状態?(どうなれば自分の中で成功と言えるの?)
・そもそも、最近っていつの話?
・そもそも、経営が苦しいというのは具体的にどういう状態?
・そもそも、経営が良いというのは具体的にどういう状態?

 

 

解説しますと、方法を提案する解決策思考を初めに持ってきてしまうと、それを実行しても問題が解決する保証が無く、結局無駄になってしまう可能性が高くなるようです。

芸能人になりたい例で見てみると、仮に友人が俳優を目指していたとして、その前提を無視してM1のオーディションを勧める、というのは少し方向性が違いますよね。
ラーメン店の例でも、本当に立地や新商品投入で問題が解決するか、この段階では微妙です。

 


問題解決をするにはいきなり解決策を提示するのではなく、まず定義を確認する「そもそも思考」から入り、それから「どこ」「なぜ」を調べて、そしてやっと解決策を提示するという流れがベストなようです。

 

 

小職の個人的な見解ですが、「解決策思考」は税理士とか司法書士とかの専門家(特に経験の少ない人)に多いような気がします。
読者の中に、「専門家に相談に行ったけど話を最後まで聞いてもらえず、なんだかよくわからない方法についてひたすら解説されて、結局何もわからずに終わった。」という経験のある方もいるのではないでしょうか。

 


少し掘り下げますと、専門家にはそれぞれ専門分野がありますから、専門家としては自分の得意分野に引き込んで話をしたいと考えます。
そうすることで、自分の詳しくない・知らない部分に触れなくて済みますし、得意分野ですからストレスなく話も出来ます。

つまり、専門家にとってこの話方は非常に楽なんですね。

 

 

ただ、専門家が楽をしてしまうと割を食うのは相談者です。
「訊きたいのはそこじゃないんだけどなあ。。。」と感じながらも、専門家は自分の得意分野の話をつらつらと話すだけで時間が過ぎていきますので、問題は解決せずに相談者のストレスだけが残るのでしょう。

 

 

小職も税務調査の相談を受けるときは上記を心がけて、定義・現状把握にまずは努めていますが、この思考法は様々な場面で使えるようです。

是非読者の皆様も「そもそも思考」を試してみてください。

 

 

 

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こんにちは、公認会計士・税理士のたけよしです。
今回は税務調査関連ではありませんが、元後輩の勤務弁護士(会計士資格持ち)さんから相談を受けたので、対応と思うところを記事にしたいと思います。

 


具体的な相談内容としては、

「依頼者の企業からみなし配当の相談を受けたんですが、みなし配当についてボス弁護士がどんなに説明しても理解してくれないし、話を最後まで聞いてくれないんです。どうやって説明すればいいと思いますか?」

という相談です。

 


"みなし配当"は税務における専門用語になるので説明しますが、商取引等を除いて会社が株主に金銭等を渡す方法は2つあるのですが、一つが利益配当で、もう一つが出資の払い戻しになります。
ざっくりいうと、利益配当は会社がこれまで稼いだ利益を取り崩して金銭を出す方法で、出資の払い戻しは資本金等を取り崩して金銭を出す方法です。

 


利益配当は所得税が課税され、出資の払い戻しは課税されないのですが、法形式上は出資の払い戻しに該当したとしても、実質的な出資額(≒資本金+資本剰余金)以上の金額を払い戻した場合、実質的な出資額以上の部分は税務上は配当とみなして課税しますよ、というのがみなし配当です。

 


ボス弁護士の先生が理解してくれないということですので、物凄く簡単に説明すると、「通常は出資の払い戻しは税金がかからないけれど、特定の要件を満たせば、税金がかかる出資の払い戻しも存在する。それがみなし配当だ」ということになりますね。

 


相談してきた後輩も出来ない人ではないので、この辺の説明はボスにしたようですが、ボスから真顔でこんな返答が返ってきたようです。


「この会社は現金をたくさん持っているので、資本金に食い込むことは無い。だから、みなし配当なんてありえず、全部利益配当なんじゃないの?」


これを訊いて小職は確信を持ちましたが、このボス弁護士は簿記3級程度の会計知識もないのに会社の相談に乗っているんだろうと思いました。
この返答が出て来る背景には、会計面で2つの誤解があります。具体的には、


① 貸借対照表の資産を構成する現金と、貸借対照表の純資産を構成する資本金の区別がついていない。

② 出資の払い戻しと言う概念自体を理解していない。


の2つですね。②は少し高度かもしれませんが、①は簿記3級レベルで学ぶことです。
現金と資本金の違いを説明すると、

 

現金・・・資産に計上される、会社が保有している現物の現金。
資本金・・・会社に株主から払い込まれた価値のうち、その全てもしくは一部たる計算上の金額

 

であり、これを説明する感覚的なたとえ話としては、「どんな人でも資本金を盗むことはできない。一方、罪になるが資本金として払い込まれた現金を盗むことはできる。」というものがありますね。


あくまで"計算上の金額"というのが資本金のミソであり、その金額だけ会社が現金を持っているわけではない、多く持っていることもあれば少ないこともあるし多い方が良いとは一概には言えない、というもので、現金と資本金との関連性は出資以降は全くありません

 

 

これ以上続けると会計の講義になってしまうのでこのあたりで止めますが、元後輩からの相談に対する答えとしては、


「失礼ながら、そのご質問が出て来ること自体で、会計についてよくご理解されていないことが判りました。ですので、簿記について少し勉強されるか、私の話を最後まで聞くか、もしくは、報告は入れますので本件はすべて私に任せてもらえませんか?」


とでも返したほうがいい、ということになります。

例えば、「切手」といえば葉書に貼る四角い郵便代支払いの証明書と誰もが思いますよね?
まかり間違っても、文字通りの切り落とした手ではないですよね?
その違いを知らず、「葉書を出すのに、なぜ自分の手を切り落とさないといけないのですか?それは傷害だし公序良俗違反でしょ?」なんて真顔言われたら「え?」ってなりますよね?
「おいおい、ふざけてんのか?」となるかもしれません。

会計を知っている人から言わせてもらえれば、現金と資本金の誤解は、切手と切り落とした手の違いくらいひどい根本的な間違いですから、それ相応の強い表現も必要です。

 

 

 

実際に本当にこう言うとボス弁護士はブチ切れる可能性高いとは思いますが、冷静に考えるとそれも変な話です。

なぜなら、年配のボス弁護士だからといって、弁護士ができる仕事の全て(税務、特許、登記等)を専門レベルまで理解しているわけではないからです。

まして、相手である元後輩は新人の勤務弁護士とは言え実務を積んだ会計士ですから、会計や税務に関してどちらが詳しい(正しいことを言っている)かは、ボス弁護士であればその経験から判ってほしいところですね。
実際のところは、いくら会計税務の話とは言え雇われの新人弁護士に負けるのは悔しいという見栄、弁護士は税務も職務上できるのでベテラン弁護士である自分は理解できるはずだという過信、あたりから来るものではないかと思いますが。

 

 

 

小職は税務調査専門を謳って税理士業務を行っていますが、どれだけやっても、経験の無いことに出くわすことはあります。しかも、しばしばあります。
その税務署独特のやり方、その調査官独特の考え方、というのもありますし、法律規定の見落としもあります。

しかしながら、ここで知ったかぶりをしてしまいますと自分の成長が止まってしまいますし、何よりも今の依頼人と将来の依頼人に不利益が及びます。
言い訳をするわけではないですが、知らないことについては「知らない。」ときちんと明言して説明する勇気と、「教えてもらえませんか?」と添えて学んでいく謙虚な姿勢が重要だと、改めて認識しました。

 

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こんにちは、公認会計士・税理士のたけよしと申します。
今日も前回の続きとなりますが、まずは前回記事をご覧になってから本記事をご覧ください。

今回は、審判所の裁決について考察してみたいと思います。

 


【1.税務署は結論に実質的に影響を与えない、それらしい主張を持ち出すことがある。】

 

まず、税務署が主張した事実や解釈に対して、審判所が触れていない項目がいくつかあります。


原則として、審判所は裁判所のように双方の主張事実を証拠により吟味して事実の有無を判断し、その事実を要件にあてはめていくのですが、税務署が出した主張に対してあえて審判所が触れなかった理由としては、以下が考えられます。

 

 

①原処分庁が、裁決の審理の中で重要ではないと考えて主張自体を取り下げた
②事実認定はしたけれど、全体の結論に与える影響が軽微であるため、裁決書きから端折った。
③全体の結論に与える影響が極めて軽微であるため、事実認定すらするまでもないと判断した。
④見当はずれな主張であり、その事実があっても無くても判断に影響を与えないと判断した。(いわゆる、"主張自体失当"という判断)
⑤税務署の出した主張が、自己に不利な主張(本人に有利な主張)であり、自白行為としてそのまま認定した。
⑥事実認定の結果は結論に影響を与える要素であるが、他に、より重要なクリティカルな事実が複数あるため、これを書くまでもないと裁決書きから端折った。

 

 

ここで⑥ですが、私見ですがこれに該当する可能性は低いのではないかと考えています。
理由は公表されている裁決要旨です。(http://www.kfs.go.jp/service/MP/02/0203080000.html

詳細はリンク先を見てもらいたいのですが、この絵画販売取引の事業性を否定するだけなら、審判所が出している事実認定のいくつかだけで済みます。
にもかかわらず、これだけの事実認定を積み上げた上で判断をしているのですから、結論に影響を与えうる要素は全て審判書きに反映させる方針なのだと拝察できます。

 

また、⑤は少し特殊で今回だと14が該当しますが、少し本筋から外れるので詳細は割愛します。

そうすると、理由としては①~④のいずれかになりますが、たとえどれに該当したとしても、「事業性判断には影響が無いと考えて差し支えないもの」という事が出来ます。


つまり、事業性判断においては、

 

・本件業務において、顧客名簿を作成していなくても、事業性判断には影響を与えない。
開業届を税務署に提出していなくても、事業性判断には影響を与えない。
勤務先に副業届を提出していなくても、事業性判断には影響を与えない。

 

ということが合理的に導かれます。
特に3点目は示唆に富んでいますね。


この手の税務調査ではよく、「勤務先に副業の許可はもらっていますか?答えていただけないなら反面調査をします。」という発言が調査官から出てきます。
しかしながら、裁決例を解釈すると、勤務先に副業届を提出しているかどうかは事業性判断に影響を与えないので、突っぱねても全く問題ないと言えます。


さらに、以前にも書きましたが、税務調査で入手できる物件は、国税通則法で「その者の事業に関する帳簿書類その他の物件」と明記されており、勤務先の保有する副業届はこれに該当しないため、反面調査であっても入手できるものではありません。(無理やりにでも文書を入手すれば、刑法193条の公務員職権濫用罪です。ただし、ヒアリングとしての質問だけなら微妙なところです。)

 


このような質問に対しては、勤務先に行かれると困る又は調査官の違法行為の証拠を確保したい、という前提で、たとえば「過去の裁決例を斟酌すると、副業の許可を得ているか否かは事業性判断に影響を与えないと判断しています。なので、その質問は事業か否かを判断する趣旨、引いては税額を確定させる趣旨から外れる質問であり、正当な質問検査権の行使とは言えず、私は答える義務はないと判断しています。ですので、当然反面調査も認めません。もしそれでも、勤務先の副業許可の有無が事業性判断に影響を与える、と仰るのであれば、税務署からの文書提出により、正式に質問検査権の行使であることを明示して依頼し、かつ、その根拠となる法律条文判例通達裁決例をご提示ください。」とでも主張すれば良いでしょう。(「知らない。覚えていない。」と答えると、違法を認識せずに勤務先に反面調査に行くこともあるのでご注意ください。)


ただし、裁決例は全て公開されておらず、また、書く人によって判断が異なることも往々にしてありますので、小職が知らない、副業許可届が事業性判断に影響を与えた事例が存在するのかもしれません。
もしそのような裁決例をご存知でしたら、後学のため、是非ご教示いただきたいものですね。

 

 

【2.税務署は認定した事実を誤解釈することがある。】

 

次に、税務署の解釈の誤りを指摘します。
税務署は、以下の事実を認定し、審判所も事実は追認しました。

 

17.本件業務の従事者は本人と妻だけであり、妻はバイトもしていた。
18.自宅の一部で本件業務が行われており、業務に使用するために揃えている道具はある。

 

税務署はそれぞれで人的・物的設備は不十分であると解釈しており、一方審判所は、一応認められるとしています。


税務署が更正処分を出すには署内審査や国税局審査を受けなければなりません。その理由としては、間違いが起こらないように統括官や審査担当者の複数の目から見て判断するから、というものです。しかしながら、審判所で簡単にこの判断が覆されているわけですから、税務署内審査において公平な審査をしているとは言い難いです。極論を言えば、税務署内審査は調査官や統括官の判断を機械的に追認するだけの、納税者にとっては無意味な組織と言えなくもないかと。(なので、「審査も否認だと言っている」と言われたとしても、恐れる必要は全くないという事です。)

 

 

つまり、税務署の調査官や統括官は言うまでもなく、税務署や国税局の審理部門の判断も、目線がずれている可能性が大いにあることが良くわかります。
調査官から厳しく言われると、「そういうものなのか」と妙にしおらしく納得する方もいますが、事実認定に争いが無くても結論が変わることはある、といことは覚えておいて損は無いと思います。

 

 

【3.税務署が根拠事実として提出した事実は実際に存在しているものの、当該事実自体が根拠になりえなかったもの。】

 

具体的には、有償性と反復継続性です。

税務署は、売上が少なく顧客も少ないことから有償性と反復継続性が無いと判断していますが、これは明らかにチョンボレベルの大間違いでしょう。


有償は無償の逆であり、実際に対価の授受があれば満たしますし、反復継続性も、実体のある店舗を実際に継続して開いていれば満たします。
それを、売上と客が少ないことを持って満たさないと主張するわけですから、論理も何もあったものではないですね。

事実の誤解釈は一万歩譲っても、根拠事実が根拠になっていないことを統括官や審査部門が見逃した事を考えると、著しくいい加減な調査や審査をやっていることが伺えます。


このようなレベルの低いことも平気でやってきますので、その点からも審判所の審判を仰ぐことは重要だと思います。

 

 

【4.どうしても覆せなかったもの。】

 

最後に、こちらの主張が認められなかった項目と原因を分析します。

 

裁決を見ると、著しく経済的合理性に欠け営利性は乏しい、多額の損失が発生しているのに積極的な広告は行われていない、本人は社員で管理職であり投入された精神的・肉体的労力の程度は限定的、という複数の要因が見受けられますが、根っこは一つだと思います。

 


その根は、「事業計画を提出できなかったこと」に尽きると考えています。

 


もし適切な事業計画を提出してその通りに実際に遂行していることを示すことが出来れば、本件業務の将来性がはっきりしてきます。
そうすると、今は赤字であるが将来の収益獲得がはっきりするため、事業を続けることに合理性があることになります。
積極的な広告は赤字改善の一手段ですが、それをやるかどうかは別にしても赤字改善策は講じていることになります。
精神的・肉体的労力の投入程度については、税務署も審判所も「管理職だからできないだろう」という推定の域を出ていませんので、事業計画を遂行して実際に改善がみられるようになれば、精神的・肉体的労力の投入程度も認めざるをえなくなります。

 


つまり、事業計画の策定・提出は今回主張が認められなかった事項のスタート地点であり、これが出せず、次のステップに行けなかったことが一番の敗因ではないかと分析しています。
俗っぽく言えば、「事業継続できるとか労力投入してるとか言ってるけど、それに見合った理由や成果が無いじゃない。その理由は本件業務で稼ぐ気が無いから、つまり事業と考えてないからじゃないの?」という話です。


逆に言うと、事業計画さえ出せていれば結論は変わった可能性があるということでもあり、もし事業性否認に傾いている被調査者の方がいれば、是非事業計画は作成してみてください。

 


以上、3回にわたって執筆しましたが、これらの結論と根拠を実質無料で提供してくれるのが国税不服審判所です。
対税務署の不服申し立て(再調査請求)は、ほぼ無意味と言えますが、今は飛び越して直接国税不服審判所に行けますので、納得いかないのであればここの判断を得ておくことは、その後の事業経営においても有用ではないかと考えています。

 


結果を覆すのはなかなか難しいですが、やる価値はあるものだと思っています。
もし、税務調査の結果に納得できず、文句を言うことを考えている方がいらっしゃれば、その段階からの業務受注も引き受けますので是非ご連絡ください。


ここまでご覧いただき、ありがとうございました。

 

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こんにちは、公認会計士・税理士のたけよしと申します。
前回の続きとなります。簡単におさらいしますと、小職が対応した税務調査の被調査者が、その結論に不服があり、国税不服審判所に審査請求を行った、というお話です。

 

まず、話の前提と言いますか、当局と被調査者(審査請求人・本人)で争いが無い事実は以下のとおりです。

 


・本人は、某大手企業の管理職で給与所得者。
・勤務形態は平日の7.5時間で、土日は休日。
・給与収入は毎年1000万円超
・本人は、とある商売(以下、「本件業務」といいます。筆者注 具体的な業種は開示できませんのでご了承ください)を自宅の一部で始めた。
・本件業務に一般的に必要となる道具は揃えており、看板やメニュー表もある。
・本件業務の使用人は、本人の妻だけ。
・本人の妻は、本件業務をする上で役に立つ資格を取得している。ただし、本件業務を行う上で必須の資格ではない。
・本件業務の売上は、年間10万円を超える程度。
・本人は、本件業務に関する事業計画の文書やファイルを保持していない。
本人は、本件業務を事業所得として申告し、事業所得の赤字と給与所得を損益通算して還付を受けている。
・税務署による税務調査の結果、本件業務は事業に該当せず雑所得に該当し、損益通算不可という更正処分が出された。
・本件業務が事業所得を生じる事業に該当するかどうかは、営利性、有償性、継続性、反復性、自己の危険と計画による企画遂行性、活動に費やした精神的労力、活動に費やした肉体的労力、人的設備、物的設備、資金調達方法、その者の職業、経歴・社会的地位、生活状況及び当該業務により相当程度の期間安定した収益を得られる可能性の有無、を総合的に検討して社会通念に照らして判断する。

 

 

次は、税務署の主張(事実)です。以下が、税務署が提出した事業ではないという証拠・根拠になります。

 

<業務の態様>
1.HP等の大々的な広告宣伝がされておらず、もっぱら広告宣伝は口コミである。
2.看板は屋内に設置されており、外壁等には看板が無く、客観的に本件業務が行われている外観を有していない。
3.事業計画を作成していないため、事業計画の立案を行っていたと認められる事実が無い。
4.顧客名簿が作成されておらず、顧客管理をしていたと認められる事実が無い。
5.所得税法229条の開業届を出していない。
6.本人の妻はアルバイトをしていた時があるが、妻はアルバイト先の勤務を優先している。

 

<人的・物的設備>
7.本件業務の従事者は本人と妻だけである。
8.本件業務は自宅の一部でなされている。


<職歴、社会的地位>
9.某大手企業の管理職として平日昼間は勤務しており、給与が1000万円以上ある。
10.勤務先である某大手企業に対して、副業届の提出をしていない。


この事実を元にした、税務署のあてはめ・結論が以下のとおりです。

 

11.売上が年間10万円程度で客も少ないことから、営利性は極めて乏しい。
12.売上が年間10万円程度で客も少ないことから、有償性は極めて乏しい。
13.売上が年間10万円程度で客も少ないことから、反復継続性は極めて乏しい。
14.必要経費を本人が負担していたことから、本件業務が自己の計算と危険において実行されていたことは認められる。
15.一方、広告宣伝は口コミだけであり、本人は事業が急激に拡大することを恐れていると申述していることから、企画遂行性は乏しい。
16.本人は、某大手企業に平日昼間は勤務しており、管理職であるため、本件業務へ投入された精神的・肉体的労力の程度は限定的なものにとどまる。
17.本件業務の従事者は本人と妻だけであり、妻はバイトもしていたため、人的設備は不十分。
18.自宅の一部で本件業務が行われており、業務に使用するために揃えている道具はあるが、大したものではない。

 


では、これに対して審判所がどのように事実認定及び判断をしたかを見てみましょう。番号は、税務署の主張で記載した番号と整合しています。また、数字の次の記号は以下のとおりです。

 

○:本人に有利な認定・判断 ×:本人に不利な認定・判断 △:本人に有利とも不利ともいえない認定・判断 ★:そもそも触れていない 

 

 

<業務の態様>
1.△HP等の大々的な広告宣伝がされておらず、もっぱら広告宣伝は口コミである、という事実は認められる。
2.△看板は屋内に設置されており、外壁等にも看板が無く、客観的に本件業務が行われている外観を有していない、という事実は認められる。
3.×事業計画を作成していないため、事業計画の立案を行っていたと認められる事実が無い、という事実は認められる。
4.★(顧客名簿については裁決では触れず)
5.★(開業届については裁決では触れず)
6.★(妻がアルバイトを優先していたかどうかについては裁決では触れず)


<人的・物的設備>
7.△本件業務の従事者は本人と妻だけである、という事実は認められる。
8.△本件業務は自宅の一部でなされている、という事実は認められる。


<職歴、社会的地位>
9.×某大手企業の管理職として平日昼間は勤務しており、給与が1000万円以上あり、安定した収入を得ていると同時に当該給与収入が各年分の所得の大部分を占め、本人と妻の生活の資とされていた、と認められる。
10.★(勤務先に副業届を提出したかどうかについては裁決では触れず)


11.×売上の20倍以上の経費が計上されており、多額の損失が数年継続していることから、本件業務は著しく経済的合理性に欠け、営利性は乏しい。
12.○売上や顧客数は少ないながらも年度ごとに増加していることから、有償性は一応認められる。
13.○売上や顧客数は少ないながらも年度ごとに増加していることから、反復継続は一応認められる。
14.★(項目自体、裁決では触れず)
15.×多額の損失が発生しているのに積極的な広告は行われておらず、赤字改善の手段を講じていたと認められないし、売上増大のための事業計画の策定も行ったとは言えないため、企画遂行性は希薄。
16.×(税務署の主張をほぼそのまま採用)
16-2.×本人は週37時間以上の労力を費やしたと主張しているが、(37時間が真実かどうかは別として)赤字改善の事業計画や多店舗視察の記録を残しておらず、その長い時間に見合う成果物が無い。
17.○本件業務の従事者は本人と妻だけであるが、実際に本件業務に従事しており、人的設備があることは認められる。
18.○自宅の一部で本件業務が行われているが、業務に使用するために揃えている道具は実際に設置されており、物的設備があることは認められる。
19.×赤字改善手段を講じていたと認められず、事業計画の策定を行ったと認められず、損失金額が年々増加していたことからすると、相当程度の期間安定した収益を得られる可能性が存するとは言い難い。
20.総括すると、有償性、反復継続性、人的物的設備は認められるが、営利性は乏しく、企画遂行性は希薄で、精神的肉体的労力の程度は勤務先の業務に支障を来たさない程度の相当限定的なものにとどまり、一方で某大手企業の管理職として安定収入があり、本件業務に相当程度の期間安定した収益を得られる可能性が存するとは言い難い。
以上から、事業所得ではない。


 


これをどのように解釈するかですが、それは次回に記載します。

 

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こんにちは、公認会計士・税理士のたけよしと申します。
先日、過去に小職が税務代理人として税務調査対応をさせていただいた方からご連絡をいただきました。

経緯を簡単に話しますと、税務調査の結果は否認・更正処分となってしまい、その時点で税務代理サービスは打ち切りとなっていたのですが、小職が知らないところで一人で国税不服審判所に審査請求を行い、その結果が返ってきたというご報告をいただいたものです。

 

 

ご本人様からは個人が特定されない限りでブログ記事にしても良いという御好意をいただいていますので、ブログ読者への情報提供も含め記事を書こうと思います。

 

 

【国税不服審判所とは?】


まず、難しい法律的な話抜きで国税不服審判所について説明します。

税務調査を受けられた方は判ると思いますが、税務署や国税局が実施する税務調査が完了して、当局側が指摘する税務的な間違いがあった場合、修正申告を勧められます。


納得するしないは別にして、修正申告して納税すると終わりですが、当局側の指摘に納得しない場合は、更正処分が下されます。

更正処分とは、当局側が調査に基づき「あなたの税金は●円だから、この金額を払いなさい」と"一方的に"通知し、被調査者に納税義務を負わせる手続きになります。
この更正処分は、当局側が被調査者の主張を半ば無視して一方的に出すため、文句を言うことができるという救済措置があります。

 

文句を言う流れは2種類あり、


・更正処分を出した税務署・国税局に文句を言う ⇒ 認められなかった ⇒ 国税不服審判所に文句を言う ⇒ 認められなかった ⇒ 地裁へ
・更正処分を出した税務署・国税局をすっ飛ばして、国税不服審判所に直接文句を言う ⇒ 認められなかった ⇒ 地裁へ


というどちらかを取ることになります。

 


つまり、国税不服審判所は税務調査の結果に納得できなかった被調査者の文句を受け付ける組織の一つとお考えください。
そして、国税不服審判所にはいくつか決まりごとがあります。具体的には、

 

・更正処分を出した税務署・国税局と組織的に独立している。(第三者的目線から検討する。)
・審判官一人で決めることはできず、三人以上の合議制で決定し、最終的には審判所長の決裁を得る。(合議体で検討する。)
・審判所が出した結論に対して、国側は不服をいう事が出来ない。(更正処分を出した税務署・国税局を拘束する。)
・司法判断(裁判所への提訴)を仰ぐ前に、必ず審判所の裁決を得なければならない。(行政内の最終判断機関)

 

という特徴があります。


ここからは小職の私見・感想ですが、今回、ご本人様から審判所裁決文のコピーもいただきました。


結果としては棄却という残念な結論になりましたが、内容読んでみますと、意外なほど税務署の主張が退けられており、意外なほど証拠評価や法律解釈を重視していると感じました。

一部、法律解釈がおかしいのではないかという点もありますが、税務署の調査官よりも、法律的考え方を熟知している小職に、考え方が近い立場であるとも感じています。


調査期間中には、小職が色々と法律条文判例通達を出し、解釈や事実あてはめを色々と主張しましたが、どうも調査官や統括官には響かず(というより理解しようと努力すらせず)、結論だけは否認で変わらないという対応をしていました。
税金は法律で決まるにもかかわらず法律の話ができる相手がいない残念な状態であり、もし審判所の方が調査現場に出ていれば、結論は別として小職も納得はできたのではないかと今にしては思います。


さて、このような国税不服審判所の裁決ですが、ここへ訴え出る費用は何とゼロ円です。
もちろん、紙代、印刷代、郵便代はかかりますが、今回の裁決を見て、ここまできちんと法律や事実を整理してくれる審判所のサービスを利用しないのはもったいない、という考えに小職の考えは大きく変わりました。


不服申し立てを勧めると、どうしても経営者としては「国に逆らうと目を付けられ、後で何されるか判らない。」と考えてしまうと思いますが、同じような税務調査は将来必ずまた来ますので、今回問題になった事項については法的に白黒つけておいた方が将来のためと思います。

 

結果が喜ばしければそれでよし、逆である場合はたとえ地裁で訴訟をしなくとも、「この問題はこういう結論になる。その理由はこうだ。」という理屈がわかりますので、それに対応して実務を変更すれば将来の税務調査でもめることは無くなります。
結局のところ、「なあなあ」な状態で税務調査を終わらせてしまうから将来また再発するわけで、その防止が無料で出来るというのであれば、これは是非不服審判所を利用した方が良いですね。


具体的な内容については次回となります。

 

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こんにちは、公認会計士・税理士のたけよしです。
あまり記事に書いていませんでしたが、今日は相続に関する税金と法律の話です。


みなさんは、もし、次のような督促状が来たらどう対応しますか?(かなり簡略化した督促状です。)
主人公はXさんです。



督促状 平成30年1月31日

亡A相続人X殿

平成29年1月1日に死亡したAには、以下の税金の未納があります。
よって、国税通則法第5条第1項に基づき、相続人である貴殿に納付を求めますので、至急、税務署までご連絡ください。

平成●年分 ●●税  10,000,000円

B税務署


<Xさんの前提>
・Aは確かにXの伯父であり、Xの父親の兄である。
・ただし、Aとはずっと疎遠になっていてここ数年会っていなかったが、葬式には出席した。
・Aには奥さんと子供(成人)がいて、現在も健在である。ただし、Aの奥さん・子供ともXは疎遠である。
・Aが他界して以降、Aの遺産についての話は何もしていないし、もらってもいない。
・Xの父親はAより先に他界し、Xの父親の両親(つまり、Aの両親でもあり、Xの父方の祖父母でもある)もAより先に他界している。
・「Aには奥さんと子供もいるのに、何で付き合いも無かった俺がAの滞納税金を払わなきゃならんのだ!」と憤りを感じている。



こういう時に督促状が来ましたが、普通の人であるXさんは新手の振り込め詐欺だと思いました。
そこで無視していたところ、税務署から何度も督促状が送られましたので、XさんはついにB税務署へ連絡します。


X「すみません、こんな督促状が来たんですが。(督促状の内容を説明)」

B税務署職員C「確認しました。XさんはAの相続人ですので、国税通則法第5条第1項に基づいて、Aの納税義務を引き継いでいます。従って、納付をお願いします。」

X「いや、ちょっと待ってください。国税通則法の規定を確認して、確かに、亡くなった人の納税義務は相続人が継ぐことは判りました。でも、自分は相続人じゃないです。Aの葬式に行ったときに初めて会いましたが、Aには奥さんと子供がいますので、彼女らが相続人として払うべきじゃないですか?」

C「はい、確かにおっしゃる通りですが、相続第一順位の奥さんとお子さんは既に相続放棄をされています。そして、相続第二順位であるAのご両親も亡くなられていますので、相続第三順位のXさんが相続人になるんです。」

X「え?いや、ちょっとそれ聞いてないですよ。初耳です。自分はAの遺産なんて何ももらってないですよ。じゃあ、こうしましょう。私も今ここで相続放棄します。それなら、税金払わなくていいですよね?」

C「いえ、相続放棄は家庭裁判所でやらなければならないので、この電話ではできません。」

※民法第938条 相続の放棄をしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。

X「わかりました、では今すぐ家裁に行ってきます。」

C「余計な話かもしれませんが、たぶん、Xさんは相続放棄できないと思いますよ。」

X「なぜですか?」

C「確か民法に、被相続人が死んだのを知ってから3か月以内に相続放棄しないといけないとあります。Aが亡くなったのは1年前ですから、もう3か月たってますよね?」

X「確かに経ってます。」

C「しかも、さっきAの葬式に出たっておっしゃってましたよね?ということは、Aが死んでから割とすぐにA死亡の事実をXさんは知ったわけで、もう相続放棄の期限は過ぎちゃってますよ。」

X「ちょっと何言ってるか判らないんですが。これ私が払わないとダメなんですか?」

C「納税は国民の義務ですから。親族が税金を払わずに亡くなって、あろうことか奥さんとお子さんは相続放棄して納税義務から逃げたわけですからね。まあ不運だと思いますが、しっかりXさんには納めてもらいますよ。」


この後、XさんはAの奥さんと子供に訊いたところ、確かに相続放棄を家裁に対してしたという事実を知りました。


X「たけよしさん、今日は平成30年2月28日なんですが、私はこの税金払わないとダメなんですか?



という相談です。


この相談を整理すると、XさんはAの相続に対して相続放棄できるか?という論点になります。
そして、カギになるのは以下の条文です。

民法第915条 1項
相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。
ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。


もっと掘り下げると、Xさんが、自分のためにAの相続の開始があったことを知った時(3か月の起算点)はいつになるのか、が論点です。


最高裁判所第二小法廷昭和59年4月27日判決を踏まえると、以下とされています。

1.被相続人の死亡の事実を知った。
2.具体的に自分が相続人になったことを知った。

の2つを満たした時であり、「具体的に自分が相続人になったことを知った」という状態は、
2-1.自分が相続人になった(先順位の相続人が相続放棄をした)ことを知ったことに加え、
2-2.相続財産債務の存在を一部でも知った又は知りえる状態にあった時とされています。


これを今回のケースにあてはめると、

1.被相続人の死亡の事実を知った。
⇒葬式の連絡が来た時であり、平成29年1月1日の直後になる。

2-1.自分が相続人になった(先順位の相続人が相続放棄をした)ことを知った
⇒税務署から督促状が来たとき以降であり、少なくとも平成30年1月31日以降

2-2.相続財産債務の存在を知った又は知りえる状態にあった時
⇒Aやその家族と疎遠であった事情を加味すると、税務署から督促状が来たとき以降であり、少なくとも平成30年1月31日以降

以上から、最も遅く見積もっても(最も税務署側に有利になる解釈をしても)、平成30年1月31日が起算点になる。
そして今は平成30年2月28日であり、3か月たっていないので相続放棄可能



ということで、晴れてXさんは相続放棄を行い、1000万円の納税義務から免れることが出来ました。


亡くなった親族の滞納税金の負担については割とよくある論点ですが、司法書士の知識を持つ自分としては能力・経験をフルに発揮できる真骨頂の事例と思いご紹介しました。


ところで、何かのコメントで見ましたが、
税金について税理士に相談するのは、相談料が無駄。税務署に行けば丁寧に教えてくれる。」
という意見を持たれている方がいました。(「そう思う」もたくさんついていました。)


しかし、今回の事例では税務職員Cは「相続放棄できますよ。」とは絶対に言いませんし、相続放棄を勧めることは絶対にありません
なぜなら、税務職員は国家公務員であり国家の代理人ですが、そんな人間が国家の収入が減るような方法を積極的に教える行為は、言ってみれば国民に対する叛逆行為に当たるからです。



先ほどのコメントですが、小職なりに一部修正すると、「税務署に行けば丁寧に、"国が得をしてあなたが損をする簡単な方法を"教えてくれる」ということになります。
節税方法を税務署が教えてくれないのは上のような理屈であり、相談料が無駄だと感じる人は、税務職員の言うとおりにすると損をするという道理が見えていない(又は、その損が大したことないと感じる)人の意見だろうと思った次第です。
個人的には、1000万円は高いと思いますけど、相談する人によるのでしょう。


このような法律を絡めた相談を小職は得意としておりますので、お困りごとありましたらお気軽にご相談ください。
今日はここまでです。


 

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こんにちは、たけよしです。
確定申告期間真っ最中ですね。殆どのサラリーマン・OLの方には関係ない話ですが、この時期はなんだかんだで毎年忙しくなりますね。


税理士として特に時間を取られるのが、所属の税理士会や支部で行う無料での確定申告支援です。
先日、会の仕事として参加してまいりましたが、今回はその時に感じた雑感をお話ししようと思います。



まず、確定申告支援がどのようなものかをご説明します。
平たく言えば、税理士会が公共公益のために行う完全無料の確定申告支援のことです。
場所は市や県の施設を借りてやりますが、来場者が多いので大規模な立食パーティーの会場位の広さになります。


実施時期は会や支部によって異なりますが、1月から申告期限の3月半ばまで複数日開催され、無料で税務支援を受けられる対象者は、年金所得者や少額の事業・不動産の収益がある方です。
なので、数百万レベルで事業所得がある方や、給与が数千万レベルで医療費控除やふるさと納税申告をしたい人は受けることができません。(貴方たちは金があるんだから、自分で税理士雇いなさいよということです。)


相談に来られる方の属性ですが、感覚的には9割くらいは年金所得がある方(不動産収入や給与がある場合も含まれる)で、残り1割が純粋に事業を始めてすぐの小規模事業の方や不動産収入+給与の方です。
年金所得がある方が9割ですので、年齢層は65歳以上で会場がほぼ満たされます。


我々税理士が何をやるかと言いますと、細かい分担はありますが、メインはPCを使っての申告書の作成、及びその場で電子申告による提出です。
相談者の方は年金の源泉徴収票や医療費明細、生命保険の控除証明書などをお持ちいただき、それを事前に整理した上で我々の待つPCへ移動し、こちらで入力・提出し、「今年は●円の還付(又は納税)になりますよ。」と説明して控えを渡すイメージです。


以上が概要ですが、これを聴いて「自分も年金の申告面倒だから行ってみようかな?」と思いますか?


同じように考える人はとても多いようで、(地域によって違いはあると思いますが)小職の地域は平日1日で200人の方がいらっしゃいます。
朝9時スタートで17時までですが、日によっては人が多すぎて捌けないために10時で受け付け終了とか、ざらです。(みんなイライラしているので、受付で激怒しているご老人もまあいます。)
小職も過去何度もやりましたが、大体1日で25人くらいしか捌けません。
15時くらいになって来場者に「今日どのくらい待ちました?」と聞くと、「6時間くらいですね。混むのを見越して9時過ぎに来たんですが。」という有様です。


こちらもスピーディーに処理していきますが、待つ時間6時間に対してこちらの作業時間は15分それで3000円の還付になるというのがよくあるパターンですね。
会場には学校の卒業式のごとく椅子が並べられて、ひたすら自分の番号が呼ばれるのを待つんですが(ただし、退室は可能)、時期が1月2月の一番寒い時期ですから、会場によっては冷えるところもあると思います。



ここからは小職の意見ですが、正直なところ、自分が年金取得者の立場であれば、仮に税務申告書を自分で作成できなかったとしても、この相談には行かないと思います。
税金申告は還付になる限りは申告しなくてもOKなので、3000円をもらいに寒い中6時間待つのは、あまりにも時間を無駄にしていると思うからです。(3000円に6時間は見合わない。)
そして、税理士の控室でも「こんな数千円のために何時間もよく待つよね。申告しなければいいんじゃないかと思うけど。」とよく話題になるので、表立っては言えない話ですが、他の税理士も大なり小なり感じていると思います。


今回こういう疑問を、来場者にストレートにぶつけてみました。
「今年の還付も3000円くらいですね。還付になるなら申告しなくても問題ありませんので、6時間待つよりはご自身でやられるか、はたまた申告しないというのも手だと思います。」


すると来場者の方は、
「実は去年もここで税理士の先生に同じように言われたんですよ。ただ、その時私は腹が立ちました。私たち年金者は、生活が苦しいので一杯のラーメン程度でも惜しいんです。先生にしたら大したお金ではないかもしれませんが、私たち年金者には重要なお金なんです。だから、申告しなくてもいいというのは、(年金者の苦しい生活をきちんと理解していないようで)腹が立つんです。」と笑いながらですがお話しくださいまして、同時にお叱りを受けました。



まあこういう話を聴くと、普通の税理士は「そうなんですか、大変なんですね。税金還付は権利ですので、そこまでおっしゃるならやっていいと思います。」と答えるんでしょうね。


しかし、小職の感じ方はこれと異なり、


「私は生活が苦しいので、ラーメン1杯分でも2杯分でもとにかく金が欲しい。金がもらえるなら6時間待つことは厭わない。」という主張に加え、


「私は金が欲しい。だけどPC作業の習得や税金の勉強など面倒なことは一切したくない。待つのはやむを得ないが、誰かにやらせて金だけが欲しい。」という主張、さらに、


「私は金が欲しい。だけど責任が発生するのはいや。なので、時給1000円でも働くのはいや。責任を一切負わずに金だけが欲しい。」という本心が聞こえてきてしまいます。

こういうタイプの人はまた、詐欺に引っかかり易いのではないかとも思います。(余計なお世話だということは重々承知ですが。)


もっというと、生活が苦しい(と自己判断で思う)けれど、平日丸一日無為に待つ時間はあるし、バイトや労働をするほど金が無いわけでもないという水準であり、生活が苦しいという言葉が現実に適合しているのかどうかは疑問を感じます。
司法書士の研修で過去に司法書士事務所へインターンに行った時に、自己破産の相談に来られた方の調書記録を見たことがあります。
それを読むと、本当に生活が苦しいレベルというのは、身体を壊して仕事がほとんどできず収入が少ない、借金しないと食べるものにも困る、生活保護申請に行ってみたけれど役所の職員が話を聴いてくれず門前払いされた、という状況を言うのだと小職は理解しています。


まあ、たかだか無料の確定申告相談に来る人にこう感じるのは、小職の心が荒んでいるからなんでしょうかねぇ。。。


また、個人的にですが、

・今年から初めて年金をもらうので、どういう申告になるのか知るために来た。
・還付になる場合は申告しなくてもいいと知らなかった。毎年ここに来てやらないといけないものだと思っていた。
・納税になるか還付になるかどうか微妙なので、きちんと申告しようと思って来た。
・この無料相談では、税理士が確認したという収受印を押してもらえる。それがあれば税務調査のリスクが下がると思うから毎年来ている。

という理由であれば、むしろ時間かけて来た方が良いと思います。(どのケースも経験あります)


ところで、ちょうど今、ソフトバンクユーザーだと金曜日に吉野家の牛丼が1杯無料でもらえるというキャンペーンをやっています。
このキャンペーンを目当てに、普段は1杯380円の牛丼をタダでもらうために人が殺到して、店舗によっては2時間待ちが発生し、付近の道路の交通整理まで必要になったというニュースもありました。
この日にしか買えない限定メニューがもらえる、とかなら別ですけど、普段もお金を普通に払えば殆ど待たずに買えるものにそこまで並ぶのか、というのが正直な感想です。
(念のため補足しますが、いつもより少し待つくらいでタダでもらえるなら、自分も並びます。空いている店舗が近くにあるならそっちに行きます。あくまで、2時間待ちコースの行列ができているのに、その最後尾には付かないということです。)


並んでる側はルールに則って利益をもらいに行っているのだから批判される言われは一切ありませんが、金曜日に吉野家に並ぶソフトバンクユーザーは、おそらく将来この会場に来るんだろうな、とも思いました。


ここまで、やや上から目線になってしまいましたが、小職も会の主催する申告相談対応要員の一人として来ていますので、「つべこべ言わずに、会の方針に従って早く捌け。」と言う声が聞こえてきそうなことは理解しますし至極当然の指摘であり、個人的な考えがどうであれ、そうすべきだと思います。

その一方、思想良心は完全に自由でありますし小職の頭の中は支配されませんので(逆に、支配されて何も考えずにできれば楽なんでしょうが・・・)、あれこれ思いながら来年も6時間待ってイライラしている来場者に、「今年は3000円の還付になりますよ。」と言うのだろうな、と思いながらその日は帰りました。
 

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たけよし:info@zeicho-shinryo.com

 

 

 

こんにちは、たけよしです。
今年に入ってからいくつかご相談いただいていますが、ブログでこの件に触れないわけにはいかないと思い、注意喚起も含めての記事です。

 


去年から今年にかけて、随分と仮想通貨がもてはやされるようになり、「億り人」という仮想通貨で一発当てた人が本やテレビの取材を受けるようになりました。


ラッキーだったのか読みが当たったのか、どうやって儲ければいいのかはとりあえず置いておいて、みなさんきちんと税金のことは考えているのでしょうか?

 

特に今年の急落で文字通り破産する人もいるのかもしれませんが、脅しではない怖い話を質問・対話形式でしてみたいと思います。

 


参考文献:http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/joho-zeikaishaku/shotoku/shinkoku/171127/01.pdf

 

 

「仮想通貨とは、税務的にどのような扱いになるのですか?」

⇒個人で売買を繰り返している場合、原則として雑所得になります。
雑所得なので、仮想通貨取引で損が出たとしても給与や事業所得と損益通算することはできません。


例外的に、個人事業主が取引の決済として仮想通貨を使用している時や、仮想通貨の売買で生計を立てていることが客観的に明らかな場合(デイトレーダーのような状態)は、事業所得となる余地はあります。

 

 

「仮想通貨の売却による税率は何%くらいですか?」

⇒他にどれくらいの所得があるかによりますが、最高で住民税と合わせて55%の累進課税です。
例えば、他に給与や年金や不動産等の収入が全くない人が1年間で1億円稼いだ場合、所得税が約4000万円、住民税が約1000万円になります(簡便化のため、基礎控除のみ考慮しています。)。

 

 

「仮想通貨で家電を買ったのですが、課税されますか?」

⇒利益が出ている限りにおいて、課税されます
イメージとしては、商品購入前に仮想通貨を現金に交換し、その現金で家電を買ったとみなされ、家電の値段と仮想通貨の取得価額の差額に課税されます。

 

 

「仮想通貨Aで仮想通貨Bを買ったのですが、課税されますか?」

⇒家電のケースと全く同様に課税されます。

 

 

「仮想通貨を現金で買った時は課税されますか?また、仮想通貨が分裂したときは課税されますか?」

⇒これはどちらも課税されません。あくまで等価交換した扱いになり、所得が発生していないためです。

 

 

国税庁が出している情報はここまでです。
ここまでは別に怖い話は何もありませんね。ただし、上記から派生する論点については非常に怖いものがあります。

 

 

 

 

「じゃあ、仮想通貨Aでは利益が出たけれど、仮想通貨Bでは損失が出ました。これはネットすることはできますか?」

⇒所得税法35条2項2号から、これは可能だと思われます。
また、仮想通貨を売買するのにパソコンやスマホを使った場合、経費割合を考慮する必要がありますが利益の範囲内でパソコンやスマホの取得や維持にかかった支出は経費にすることはできると思われます。


「所得税法
第三五条
1 略
2 雑所得の金額は、次の各号に掲げる金額の合計額とする。
一 その年中の公的年金等の収入金額から公的年金等控除額を控除した残額
二 その年中の雑所得(公的年金等に係るものを除く。)に係る総収入金額から必要経費を控除した金額」

 

 

「それは良いですね。私は趣味で"せどり"(本の投機的売買)をやっているのですが、仮想通貨の損失とせどりの利益をネットできますか?」

⇒同条項では、その年中の雑所得に係る総収入から経費を控除した金額(に課税する)とされており、取引の性質に応じて区別して損益を計算するようにという記載が無いことから、これはネットできると思われます。

 

 

「そうですか、良いことだらけですね。では、ある年に仮想通貨を売買しましたがうまくいかず、確定した損が出てしまいましたが、これを次年の利益と相殺できますか?」

⇒これはできません。株式や先物は租税特別措置法で損失の繰り延べなどが特別に規定されていますが、仮想通貨にはそのような規定がないため、翌年の利益と相殺できません。


例えば、

・X1年に100万円の損が確定した。
・X2年に150万円の利益が確定した。

 

という場合、X1年は損失なので税金はかかりませんが、X2年は150万円に対して税金がかかります。150-100=50万円に課税ではありません。

 

 

「そうなんですね、ちょっと残念です。株や先物の話が出てきましたが、株や先物は利益の20%(復興税除く)に課税され、利益が10万円でも1億円でも20%のようですが、仮想通貨の税率も20%ですか?」

⇒いいえ、これも特別な手当てがされていないので、上にも書いたように累進課税が適用され、最高税率は55%です。

 

つまり、損を出したときは将来の利益を減殺するようなメリットが無いにもかかわらず、利益が出たときは最高55%で課税される、かなり税制的には搾り取られる商品と思われます。

 

 

 

「うーん、そうですか。では、含み損や含み益はどうなりますか?」

⇒含み損や含み益の状態は、仮想通貨が別の物に変わっていないため、等価交換した状態が維持されています。
端的に言うと、含み損益の状態であれば課税や損失の切り捨ては無いので、例えば、

 

・X1年末に100万円の含み損があった。
・X2年中に、この100万円の含み損を確定させた。
・同じX2年中に150万円の利益が確定した。

 

という場合は、X2年は50万円に対して税金がかかります。

 

 

「判りました。ちょっと気になることがあります。実は、過去に10万円で買ったビットコインがあったんですが、平成29年はビットコインがかなり暴騰して1億円程度儲けました。さすがにビットコインはもう終わりだろうと思い、平成29年中に全額を別の仮想通貨であるリップル(時価1億円分)に変えたのですが、平成30年に入って全体的に暴落しちゃったんですね。もうこれ以上資産が減るのは我慢できないと思い、全額を100万円で売却しました。トータルだと90万円の利益になりますが、この時の課税関係はどうなりますか?

⇒それは大変運が悪かったですね。
この場合、H29は1億円-10万円の9,990万円に課税になります。一方、H30は含み損が9,900万円あるので、そこまでは税金はかかりませんよ。

 

 

「え?すみません、聞き取れなかったのですが、いくらに課税ですか?」

約1億円ですね。

 

 

「いやいやいや、それはおかしいですよ。私は10万円でビットコインを買って、リップルに変えたとはいえ最後は100万円に落ち着いたんだから、90万円に課税ですよね?」

いえ、約1億円に課税です。なぜなら、ビットコインをリップルに変えたとき、税務上は時価で売却したとみなされるためです。そして、平成29年から平成30年になり、年をまたいでいるので相殺できません。
もし、暴落が30年ではなく29年に起こっていて、かつ、29年中に処分したならば90万円に課税ですけどね。

 

 

「たけよしさん、マジでそれおかしいですって。だって、私は現実世界で何も買ってないんですよ?確かに1億円稼いだときはタワマン1室にフェラーリでも買ってやろうかと思ってましたけど、実際に何も買ってないんですよ。それどころか、仮想通貨が暴落して文無しに近い状態になってるのに、それで1億円に課税はおかしいでしょう?」

⇒おかしいと感じる気持ちは判りますが、これが税金の世界なんですよ。
例えば、私がビットコインで1億円利益を出して、それを全部換金して全額宝くじに突っ込んだとしましょう。
当然殆ど当たらず、100万円くらい手元に残ったとしますが、その時に「オレは確かに1億円稼いだが今手元に残っているのは100万だ。だから、1億円への課税は勘弁してくれ」という主張が通ると思いますか?

 

要は、稼いだ利益をどういう使い方をするかという問題であり、1億円を寄付しようがパチンコに突っ込もうが宝くじに突っ込もうがリップルに突っ込もうが、一時的でも稼いだ利益が1億円である以上、1億円に課税ですよね。
お金を失ったのは自業自得でありそこまで国税は親切じゃない、ただし同一年を除く、という感じですよ。


裁判まで行くとどうなるか判りませんが、少なくとも税務調査入ると1億円に対して課税求められますよ

 

 

「知りませんでした・・・。ちなみに、税額はいくらくらいですか?」

⇒さっきも言いましたけど、所得税と住民税合わせて、約5000万円ですね。
国税の世界は、知らないは理由にはならないんですよ

 

 

「・・・・・・すみません、常識的に考えても私のサラリーマンの稼ぎでは払えないんですけど。・・・税金から逃げる方法ってありませんか?」

⇒良く聞かれますけど、こう考えてみてください。

あなたと国税で、宝探しゲームをします。
宝を隠すのはあなたで、宝を探す鬼役は国税です。
宝を隠し通せたらあなたの勝ちです。


ただし、以下の条件が付きます。

・宝を隠す場所は、土の中のどこかにしか隠せない。
・国税は、土を掘るための重機や金属探知機など、何でも何台でも使って良い。
・国税は、人を何人投入しても良い。
・制限時間は7年。

この宝探しの勝負に勝てると思えるなら、逃げられると思いますよ。


現実的な話をしますが、仮想通貨がここまで世間で話題になった以上、今年の国税は仮想通貨を調査の最重点項目に挙げているはずで、調査官向けの研修をみっちりやっています
仮想通貨を狙い撃ちで調査をすることが見込まれますし、仮想通貨はネット取引がメインである以上簡単に足もつきます。

相手が本気で狙っているところなのに、言い方は悪いですがあなたのような税務の素人が、事後的な工作のみで隠し通せると思うのは、宝くじで10億円当てる以上に難しいものだと思ってください。

予想ですが、今年の申告期限であるH30.3.15を過ぎると、仮想通貨の儲けを申告していない個人が脱税で逮捕されるニュースが出ると思いますよ


ところで、不動産ってお持ちですか?


「不動産は、投資用のマンションを5室持っています。」

⇒そうですか、では滞納処分に係る差し押さえが入る可能性が高いですね。
租税債権は最強の一般債権(国税徴収法8条)なので、あなたの総財産に対してかかってきます。
当然、居住用でない投資用マンションは格好の対象ですね。

 


「それなら、先に売却してしまいましょう。」

⇒売却しても構わないですけど、借入金の返済はできますか?

 

 

「いや、全額はできないです。今売ってしまったら借金だけ残ると思います。」

⇒それなら、実質的に売る意味ないですね。そうなると、家賃収入は国税に全て持って行かれると思ってください。
まあ、預金も銀行調べれば一発なので、これも持って行かれるでしょうね。

 

 

「何だかお先真っ暗で話が全然頭に入ってこないんですが・・・。じゃあ、こうしましょう。マンション5室持ってても仕方ないし、どうせ国税に取られるなら奥さんと子供にあげてしまいましょう。預金も併せて。贈与税が云々というのはあるかもしれませんが、一文無しになるよりましですよ。

⇒ちなみに、国税通則法42条で民法424条を準用しているんですが、民法424条に詐害行為取消権というものがあるんですね。
要約すると、債権者(国税)の利益を害する目的で資産を減少させる行為をした場合、債権者は裁判でそれを無かったことにできるという規定です。

今回、奥さんと子供への贈与は明らかに税逃れなので、詐害行為認定される可能性は高そうですね。
つまり、そんな安易な方法で逃げることはできないということになります。

 

 

「(投げやりに)わかりましたよ。じゃあ、自己破産します。破産しちゃえばすべての債務は消えるので、国税もざまーみろってことですよね♪」

⇒残念ながら、どこまでも安易としか言えないですね。
破産法253条1項に、破産しても免責されない債務というのがあります。
この1号の筆頭に、租税債権というのがあるんですね。

つまり、自己破産しても租税債務は消えないので、文字通り死ぬまでお国のために税を納めることになります。


破産法
第二百五十三条 免責許可の決定が確定したときは、破産者は、破産手続による配当を除き、破産債権について、その責任を免れる。ただし、次に掲げる請求権については、この限りでない。
一 租税等の請求権(共助対象外国租税の請求権を除く。)

 

 

「・・・・・・世の中何でこううまくいかないんですか!本当に私は何も買ってないですし散財していないんですよ。うちには奥さんと小さい子もいますし、年老いた両親もいて今後は介護にもお金がかかる。それなのに、今後一生滞納税金を払い続けるなんて自殺するしかないじゃないですか!」

⇒この期に及んでさらに追い打ちをかけるようで恐縮ですが、租税債務は相続の対象になります
おそらく、今のあなたが亡くなったとして正味の財産は無いと思いますが、遺族が相続放棄をしなかった場合、その税金は奥さんとお子さんが負担することになります。

 

相続放棄の期間は民法915条1項から3か月とされていますので、あなたの葬式からきっかり3か月後に、あなたの奥さんとお子さんのところに徴収職員が来ると思いますよ。
あなたに租税債務があることを奥さんやお子さんが知らずにあなたが富士の樹海に行ってしまわれた場合は、どうなるか判りますよね。

 

 

「・・・仮に私が自殺しても、自分の一族に国税が襲い掛かるということですね・・・」

⇒あと、仮に奥さんやお子さんがうまく相続放棄できたとしても、次はご両親、その次はご兄弟や甥御さんや姪御さんが相続人になりうるので、彼らにまで租税債務が及ぶことがあります。
もし、どこかで相続放棄を失敗した場合は、あなたの一族で5000万円を負担することになりますのでご注意ください。

 

仮想通貨でこんなに大損したなんてあまり他の人には言えないでしょうし、特に家族には口が裂けても言えないと思いますが、ご家族はご存じないですよね?

 

 

「たけよしさん、何とかしてください!」

 

 

 

 

以上は創作ではありますが、この相場の流れを見てみると悲観的な夢物語とも言ってられなくなってきますね。
税制も含めて、自分自身で理解できないものには投資しない、これが鉄則だと思います。

気休めかもしれませんが、仮想通貨に関するご相談も乗りますので、気になることがあればご連絡ください。(ただし、有料となります。)

 

 

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こんにちは、公認会計士、税理士のたけよしです。


よく、ブログ記事からお問い合わせをいただきますが、当方からメールを返信できないケースがいくつかあります。


特に、携帯電話やスマホからのお問い合わせに多いようです。



この原因として、迷惑メールの規制強化があるようです。

パソコンからのメール拒否等の端末側の設定もありますが、迷惑メールと判断された場合、迷惑メールフォルダにも届かない、というケースもあるようです。



そこで小職からのお願いですが、お問い合わせのメールには「@gmail.com」のドメインから返信しておりますので、このドメインを受信できるように設定をお願いいたします。


または、フリーアドレスをご登録いただいても当方は受信できますので、携帯電話・スマホのアドレス以外のアドレスをご登録いただくことをお勧めします。


以上、お手数をおかけしますがよろしくお願いいたします。



※実例として、@docomo.ne.jpや@ezweb.ne.jp宛のメールが送れず、送信エラーになるケースが多いです。ご相談される場合は、携帯メールは避けてパソコンメールから送信されることをお勧めします。




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