三浦春馬くんは、うつ病だったか、それはもう誰にもわからない。
診察を受けることももうできないし、診断名がつくことももうない。
これは、うつ病とたたかった私が、経験をもとに想像したこと。
亡くなった人のことを詮索するのも失礼だし、亡くなった人のことをとやかく言うのも違うと思う。
彼にどうこう、ではなく、あくまで彼のニュースを知って私が感じたことについて。

「ぜんぜん気がつかなかった」とか「直前までふつうに仕事してた」とか「順風満帆なのになぜ」とか「友だちたくさんいたのに」とか、病気を前にしたら、私の場合は全く意味がなかったということ。

休職も退職も複数回している私だけど、診断書つけて休職願、退職願出すと必ず言われる、「せつこ先生が!?ぜんぜん気がつかなかった。どうして?」。

仕事に行けば、駅でふらふらでも、ニコニコのせつこ先生のスイッチ入れるから。むしろ人よりニコニコだから。ほんとは、職場を出れば、ずっと希死念慮が頭から離れない。

知ってほしい。うつ病の人は、「死のう!」と思って電車に飛び込んだりはしてない。電車に吸い込まれるの。高い建物は登らされて下に吸い込まれるの。
気持ちなんてそこにはなくて、脳の病気だから、頭が勝手にへんな風に働くの、自動的にからだを動かそうとするの。それが、ずーっと続くの。刃物持ってこよう!えいや!と、ことには至らない。ぼーっとしてるうちにそうなるの。
これ、本人のせいだと思いますか?本人が自分で自分の命を断ったって思いますか?

私は全くそう思いません。うつ病が、脳の病気がそうさせているので、ガン細胞にからだを蝕まれて亡くなってしまうというのと同じだと思ってます。病気が命を奪います。
自分で自分の命を断つのでは、ありません。

とても具合が悪かった何年間かで、いろんな手段でなんどもやらかしました。救急車にも複数回のり、ICU、閉鎖病棟にも短期で入院。

でも、たぶん驚かれるけど、それでも仕事は行ってました。入院したことも「祖母が具合悪くて田舎に様子見に行って1週間お休み」って嘘ついて、退院してすぐ仕事行きました。
救急車に乗っても、一泊したら、次の日は出勤してました。
それでも、誰も気がつかず、いつもニコニコでがんばりやさんの真面目なせつこ先生だと思ってた。だから、いよいよ、起き上がれない立てないほど、調子が悪くなって、休職すると驚かれる。

なぜそこまで休まないか?一日でも休んだら、休職したら、退職したら、そんなダメ人間、そこで人生おしまいだ!って思い込んでいるからです。体調不良の年休も罪、休職も罪、退職なんて大人としてもう完全におしまい。
なぜ、そう思うのか?病気だからです。うつ病が偏った思考しかさせなくする、脳の病気だからです。

自分が死んで、まわりを悲しませることはさけたかった。迷惑かけることもわかってた。だけど、息を吸って吐くだけでも、つらかった。自分の存在がつらかった。誰にも迷惑かけず、悲しませず、自分が消えて自分から逃げ出したかった。できることなら、自分が消えたら、みんなの記憶からも自分が消えたらいいと思ってた。悲しませたくないし、迷惑かけたくないし、とめられなかったと責めてほしくないから。

そんな思いがずっとずっとせめぎあいつづけては、なんども繰り返し、命を繋いでは、【失敗】と手帳に記してました。
死ねなかったら失敗。
病気です。一発で決められないで、また失敗した、と。

今は、ほんとに、あのときなんども失敗続きでよかったと思います。だって、病気も治療すれば、時間かかっても、よくなるから。

私は、人見知りもしないし、誰とでも仲良く話せるし、リーダーシップもとれて、学力もそこそこ、家庭も普通、仕事も公務員。
なんにも、悩むことなんてないんです、ひとからみたら。
だけど、ほんとは、人の顔色必要以上に伺って疲れちゃうし、常に正しい答えとそこへの最短ルートを探してた。
友だちだっているし、悩みだって話してた。でも、自分の人生を閉じたくなる瞬間、電話帳みても電話したくなる人はいない。
この友だちに電話したら、話をきいてくれて、私のことも偏見の目でみないでいてくれるかもしれない…けど、その電話で今の決意が鈍ったら?だめ、今日、この苦しい人生を閉じるって決めたんだから。

これが、うつ病の心理状態です。


この八方塞がりになる病気、わかりますか?病気が、そうさせるんです。

ここからは、ただの想像なので、彼のことを病気と決めつけているわけではないです。
私が休職したって、たいした迷惑はかからない。でも休めなかった。
それが、彼は?とんでもない仕事上の影響と、とんでもないお金が動いてたことでしょう。海の向こうの人とまで仕事してた。「死ぬくらいなら休め」って、これ休めないって思っちゃっても自然です。
私だけに限らず、多くのうつ病の人は、ニコニコ悩みなさそうに、なんなら人の悩みをきいてあげるの得意だと思います。それが、彼は俳優です。そりゃなおわからないでしょう。キラキラのステージやたくさんのカメラの前で仕事します。そりゃスイッチもすっごく入れるでしょう。
私は、「ニコニコのせつこ先生」を頑張ればがんばるほど、「希死念慮にとりつかれる本当の自分」との落差が広がっていき、広がればひろがるほど、本当の自分のときが、底無し沼になってった。
彼は?あんなに素晴らしいいっぺんにたくさんの人にエネルギーをプレゼントする仕事、一人の時間との落差、想像できません。


私は、独り暮らしをはじめたところでしたが、(中略)うつ病と診断され、アパートもそのままにとりあえず、休職して実家に強制送還されました。そこから、ながいたたかいがはじまり、実家でも自分の部屋では寝せてもらえなくなりました。母の隣に布団を敷き、父は玄関に布団を敷いて寝ました。そうやって、今があります。(ほかにもいろいろ治療とかあるけど)

独り暮らしのままでは多分今はない気がします。

私は三浦春馬さんを、三浦春馬くんと呼ぶ、年齢の近い世代。彼のちょっと上です。30歳なんて、まだまだこれからいかようにもなったと思うし、10年先でもいいから、キンキーブーツ観たかった。だけど、そうは病気がさせてくれなかったのかな、と私は想像します。

だから、彼を責めることなんて、たまたま運良く生きてる私にはできないし、ただただ、彼が今穏やかにこころもからだも休めていることを願うばかりです。


うつ病と一口にいっても、人それぞれ。これはあくまで私の経験から感じたこと。他のうつ病の人は違う症状もあると思う。
でも、うつ病は脳の病気で、本人の意思とか心とか考えとか、そういうことじゃないということを、世の中に知ってほしいなぁ。