4月9日。
よく晴れた日だ。
そう思いながら空を見上げ、歩いていた。
その時、
「うわっ!」
何かに躓き、コケそうになった。
「中学生になってもドジだなー、真火は」
「何すんだよ!」
コケそうになった原因である幼馴染の早川夏雁を睨みながら、
俺―炎道真火は怒鳴った。
すると夏雁はもう一人の幼馴染である来瀬菜津(長身)の
後ろに隠れ、
「菜津~。真火が苛めてくる~」
「…お前が足引っ掛けるからだろ」
文庫本に目を落としながら興味なさげに呟いた。
「なぁ~つぅ~。冷たすぎだよ~。俺泣いちゃう~」
「…泣けばいいだろ」
冷たくされてもなお、作った甘い声で菜津に話しかけるも、
またもやスルーされている夏雁。
そんな二人にため息を吐きつつ、俺は言葉を紡いだ。
「あのなぁ、俺ら今日から中学生なんだぞ?
もっとしっかりしろよ」
「真火に言われたくな~い」
「確かに」
「んなっ、菜津まで!?」
あまりのショックに、変な声を出してしまった。
そんな俺のことを気にも留めず、夏雁が
「お前の姉ちゃんに頼まれたぜ?真火の面倒みてやってね~って」
と、ニヤニヤしながら言った。
あのクソ姉貴め…。
内心相当いらつきつつ、
「お前らに面倒見られなくても、一人でしっかりできるっつーの」
「俺らがいないとさっきみたいにコケちゃうよ~?」
「っるせぇよ!」
いつものようにバカ騒ぎをしながら俺たちは歩く。
後ろからの視線に気付かずに。