セロトニン・デンティストリーのブログへようこそ。
まず
免疫のお話から。
免疫反応は体内で段階を経て進行します。
- 敵を発見する
樹状細胞やマクロファージが細菌やウイルス、アレルゲンなどの異物を見つけて食べる。 - 敵の存在を報告する
異物を食べた樹状細胞は、リンパ節に移動してナイーブT細胞に異物の情報を伝える。 - 活性化する
情報を得たナイーブT細胞は活性化されて、ヘルパーT細胞やキラーT細胞に分化・増殖する。 - 撃退指令を出す
ヘルパーT細胞は、攻撃担当細胞(キラーT細胞、B細胞など)に敵をやっつける指令を出す。 - 敵を撃退する
指令を受けた攻撃担当細胞は、それぞれの方法で敵をやっつける。キラーT細胞は敵に接着しパーフォリンという分解酵素をふりかけて殺し、B細胞は抗体を作って敵に投げつけて捕まえる。
出典『アレルギー発症の本当の仕組み 免疫反応の“はじまり”を解き明かす』
このように免疫反応には様々な体内の細胞が関わっているのですが、初期の段階では主にT細胞と呼ばれる免疫細胞が活躍することになります。
このリンパ節で活性・増殖したT細胞がメンタルに影響するらしいのです。
メンタルと言えば
ヒトの心をつくりだす三大神経伝達物質
《ドーパミン》《ノルアドレナリン》《セロトニン》が思い出されると思います。
このどれが働きすぎても働かなくても、ヒトとしての心や行動のバランスが崩れることは今までも何度か取り上げていますが、改めて詳しく記載します。
《成長・発展には“意欲”が必要 ~心の三原色①ドーパミンの働き~》
ドーパミンは「意欲」を司り、「学習」へと導きます。根本的には食欲や性欲といった生存本能に関わる欲求をもたらすのがこのドーパミンの働きです。私たちが目標や夢に向かってチャレンジや努力ができるのは、まさにドーパミンが働いているからこそ。また、同時に夢や願望が叶った時の高揚感や快感をつくりだすのもドーパミンの役割です。裏を返せばドーパミンの働きが弱いと、生存・成長に関わる様々な欲が出ず、不活発な行動となるのです。現代の特に若い人に見られがちな「○○レス」はその象徴かもしれません。
また、一度ドーパミンによる快感を経験し、再度同じような快感を求めてもかなわない場合や、さらに上の夢や目標を持ったもののなかなか達成できない場合には、ドーパミンが暴走してしまいます。具体的には、イライラしたり、感情的になりキレやすくなったり、薬物や買い物、アルコール、ギャンブルなどのいわゆる依存症や欲求不満はこのドーパミンの暴走の表れです。
《進むためには“注意”が必要 ~心の三原色②ノルアドレナリンの働き~》
外部からの刺激に対し「危険」や「不快」を察知し、適切な行動へと導くのがノルアドレナリンの役割です。この働きは適度な集中力と緊張感を必要とする「仕事」を効率よく的確に進めていくために必要とされます。このことはノルアドレナリンが弱まると危機管理ができなくなることを意味しています。身を危険にさらすことになるわけです。
またこのノルアドレナリンが過剰に反応すると、外部からの刺激に対して過敏になり、怒りっぽく落ち着かない状態になります。この状態が続く、もしくは極度の場合、うつ病やパニック障害、対人恐怖症などの精神疾患に繋がりかねません。
《ヒトとして生きるためには“調和”が必要 ~心の三原色➂セロトニンの働き~》
このようにドーパミンやノルアドレナリンはヒトが種の保存や成長を促すために必要な脳内物質ではあるのですが、時として働き過ぎや逆に働かなくなることがあります。それぞれの神経の働きは生まれてからの経験や習慣もありますが、特に働き過ぎ、すなわち「暴走」は他者とのトラブルのもとともなります。暴走しないようにするにはその舵取りが必要となります。それが三つ目の三大神経伝達物質・セロトニンなのです。セロトニンはドーパミンやノルアドレナリンの暴走を抑えるのみならず、広く脳内の“調和”を担っており、脳全体に神経を伸ばしています。
また同時に外部との“調和”も大切なセロトニンの役割です。心においては「他者からその感情を読み取り自分のことのように感じる」いわゆる【共感】がセロトニンによりもたらされます。重そうな荷物を抱えた人を見て手伝おうという気持ちになるのはこの【共感】が働くからです。この働きは他の動物にはほとんど見られず、ヒトならではの脳の働きであると言われています。
このことからセロトニンの働きが弱まることは、ドーパミンやノルアドレナリンの暴走を抑えられなくなるだけでなく、他者との関係もギクシャクしたものになってしまい、どんどん孤立してしまうことになるのです。このような状態では真の幸福感は得られません。
また逆にセロトニンが過剰になった場合には、悟りを開いたように心が静まり、何事にも動じない無欲な状態になります。
ストレスフルな現代社会においては実際、禅などの修行を熱心にしない限り過剰になることはないと思いますが、少なくともセロトニン神経を弱らせないよう意識しておくことは現代社会においては必須と言えるでしょう。
いかがでしょうか。
この脳内の神経伝達物質は100ほどありますが、特にその中のこの3つはヒトとして生きるためにどれが欠けても多すぎてもいけないのです。
話の本題に戻りますとこの中の《ドーパミン》と《セロトニン》が免疫反応によって不足することになるという論文が出ました。
実際には
《ドーパミン》と《セロトニン》の原材料(前駆体)となるアミノ酸(チロシンとトリプトファン)が
免疫細胞である活性化T細胞が多量に取り込まれてしまうということなんです。
ということは
ノルアドレナリンの歯止めが利かなくなるということ。
先ほどの文章からその状態を抜粋すると
「ノルアドレナリンが過剰に反応すると、外部からの刺激に対して過敏になり、怒りっぽく落ち着かない状態になります。この状態が続く、もしくは極度の場合、うつ病やパニック障害、対人恐怖症などの精神疾患に繋がりかねません。」
となります。
これからの感染症が増える時期には特に注目をすべき研究です。
実際の研究は以下のようになっています。
慢性免疫活性化させた(常にT細胞にが活性化している状態の)マウス(PD-1欠損マウス)で行った実験によると
このマウスは野生型(普通のマウス)より血清中のアミノ酸濃度が低くリンパ節では高い。
すなわちリンパ節の活性化T細胞が取り込んでいることが想定される結果が出たそうです。
出典 : 免疫活性化を起因とする不安・恐怖亢進メカニズムの解明―病気で不安になる仕組みを発見―
また、
全身のリンパ節でT細胞が活性化・増殖し
この活性化T細胞が血中のトリプトファンやチロシンなどのアミノ酸を多量に取り込むことで、セロトニンやドーパミンの脳内合成が落ち、不安様行動や恐怖反応が起こるが、SSRIなどのうつ病治療薬やアミノ酸を増やした食事でその反応を抑えることも確認された
ということがわかります。
出典 : 免疫活性化を起因とする不安・恐怖亢進メカニズムの解明―病気で不安になる仕組みを発見―
このことは人間でも同様と考えると
ウイルスや菌などに接触すると体内のT細胞が活性化・増殖した場合、やはりトリプトファンやチロシンの血中濃度が下がり、ひいては精神面にも影響が出るということ。
この時期、風邪のウイルスが蔓延し、インフルエンザなどの抗原に囲まれつつ
日照時間が短くなったり寒くて家に引きこもりがちになることでセロトニン不足になりやすい時期です。
セロトニン不足に対して
マウスの実験のように薬を使うのは可能な限り避けたいところ。
では
マウスのようにトリプトファンの多く含まれる食品(大豆、チーズ、カツオ、バナナなど)を食べればセロトニン不足は補えるのか?
…ということに関しては人間に(特に現代人に)おいてはNoでしょう。
よほどの栄養不足や偏食でない限り、日本の現代人のトリプトファン不足はないそうです。
とくに日本食にはトリプトファンが豊富に含まれています。
現代人におけるセロトニン不足の背景は
原材料不足ではなく生活習慣によるセロトニン神経自体の減弱化です。
まずは
感染症にかからないこと。
マスク、うがい、手洗いは必須ですが
歯科的には
歯石を取ったり、歯磨きを念入りにして、歯肉炎・歯周炎のお口の感染予防にも力を入れていただきたいところです。
そして
1. 太陽光
2. リズム運動
3. 他者との触れ合い
を心がけて
努めてセロトニン神経を活性化させておくことも大切です。
来る感染症の季節に心も身体も備えましょう。