人の記憶は無くならない。
一方で消え続けていくのも記憶の性質。
全てを記録できる訳でもなく、不要なものばかり蓄積していく。
不完全な記録、消えては新たにインプットし、失うためだけに繰り返している。
…なぜシャワーを浴びる度にリセットされるような仕組みではないの?
それならばどれ程生きるのが楽なことかしら…
どうせ死が待っている、死ぬまでに満足したい、死ぬために満足したい。
それが、自然ではないの?
でも、より完璧な死、より完全な生の軌跡こそが大切なものではない。
私は、いつか失われる日まで生きなければならない。
その日が今日なら幸いね、だけど死の理由がないから明日にしましょう。
理由がないのは嫌。
…だけど、その明日はいつ来てくれるのかしら…
自分のなかの理由はあるけれど、誰かに理解してもらえるような理由は未だに見つからない。
それがなければ、それがあっても、私は死へ羽撃たけないのよ…
さて、帰らなければ…
帰る場所は何処だったかしら…
…帰る場所なんて、もう無い。
だけど帰らなくては…
帰らないと…
……………
