ある程度の学識がある方々なら現代における「お金」の転換期は紛れもなく1971年のニクソン・ショックと呼ばれる金本位体制の崩壊であることは認識していると思う。

 

それまでの金本位制度の下では、たとえ景気が悪くなったとしても、各国の中央銀行が保有している金(ゴールド)の量の分しかお金を発行できないという制限があった。

 

 

金本位制は1816年にイギリスに始まり1844年にイングランド銀行が金と交換可能なポンドを兌換紙幣(金1オンス=3ポンド17シリング10ペンス)としたわけだが、この金本位制度の下では各国はお金を自由に発行できず、必ずそれに相当するだけの金(ゴールド)を保有していなければならなかった。

 

しかしながらこの金本位制度にはデメリットが有り、経済が発展した場合にはそれに伴いお金の流通量も増えるわけだが、金本位制度の下では自由にお金を発行できない。経済の発展に相当する量の金(ゴールド)を保有していなければお金を発行できないからだ。

 

そのため通貨・紙幣の発行量を金(ゴールド)との兌換に関連付けてしまうと、金(ゴールド)の総量イコール経済活動の対価となってしまい、世界の金(ゴールド)の保有量は限定的であるためにお金の総量が不足し経済発展の伸びに頭打ちが来てしまうこととなる。

 

 

そこで前述の通り1971年に米国が金本位制を捨て変動相場制に移行するわけだが、これにより中央銀行が無限に紙幣(お金)を発行できることとなった。

 

特に米国は近年のリーマンショック以降、紙幣の発行量を激増させており市場には大量のお金が流通することになる。

 

 

下記はそのマネタリーベース(紙幣の発行量)の推移だ。

 

 

 

 

上記の例にあるように米ドルはたった一年でその発行量が2倍以上になった。

 

これが市場に流れれば通常はインフレ(物価の上昇)が起こるわけだがそれを抑制するほどの富の独占が起こり、一般にはそのお金は行き渡らず一部の大金持ちが現れる状況に繋がっている。いわゆる貧富の差が大きく開く結果となった。

 

ちなみに米国では人口の15%にもなる約5000万人が健康保険にも入れず病院にも行けない貧困層が存在すると言われている。

 

米国はドルを世界の基軸通貨にし、世界のオイルダラーと呼ばれてきたように石油をドルでしか買えないようにしてその通貨による支配力を強め、日本においても中央銀行である日本銀行は無限にお金(円)を発行して間接的に国外の外資企業にその紙幣を渡し続けている。

 

円の国内マネタリーベース(流通量)は増えていなくても国民の年金資金などによる政府の株式投資などでは紛れもなく外資ファンドに間接的に私たち国民の資産である円が国外に流出し米ドルなど外貨に変わっていっていることは明らかである。

 

日本国内においても銀行は現行法の下でも保有する預金の約7倍のお金を信用創造して市場に流通させており、私たち国民も手持ち資産の何倍ものお金を借り入れ、住宅や自動車、学費などに当てて運用している。

 

つまり、本来はないものをあるものとしてお金が無限に創造され膨らみ続け市場で流通しているのだ。

 

 

かつての金本位制度の下ではお金を発行するにはそれに相当する金(ゴールド)の現物を買わなければ発行できなかったわけだが、1971年の金本位制度から変動為替制度に移行してからはその必要がなくなり無限に好きなだけ通貨を発行できるようになった。

 

これによりマネー(お金)のバランスが崩れ、更に歪んだ社会になってしまった。

 

この歪を象徴しているのが世界の上位1%の超富裕層の資産が2021年には世界全体の個人資産の37.8%を占めるようになったという事実である。

 

上位のたった1%の超富裕層の人間が世界全体の個人資産の37.8%の富を独占しているのだ。

 

 

日本でも公務員などの過剰な待遇に限らず、家族経営の中小企業などでも社長など経営者はどんどん裕福になり、その反面従業員の給与は年々減り続けるといった現象も起こっており富の独占が顕著に現れてきている。

 

金(ゴールド)の現物が足らないなら銀や銅など鉱物は他にもあり、バランスを保つための様々な兌換の手段(現物資産)はあったと思うが、それら現物資産をお金の発行量に代用するのは富の独占を企む者たちにとっては不都合だったのかもしれない。

 

例えば私たちが3千万円の住宅をローンで銀行から借り入れし購入した場合、実際は3千万円(プラス金利)の借金であるが、その家を資産として担保にして別の借り入れを起こすことが出来る。つまり借金で物を手に入れ、その手に入れたまだ自分のものでない物を担保にして更に別の借り入れが出来る。そうやって次々とお金が生み出されていく。これが「ないものをあるものとして次々と信用創造の下で生み出していく仕組み」というものである。

 

これまでの金本位制度の下ではお金の発行量にはそれ相応の金(ゴールド)の現物を所持していなければお金の発行はできなかったが、現代では銀行は無限にお金を刷って市場に放出できる。

 

これにより現代では数千兆円の単位を超える「京」の単位に膨らんだお金がデリバティブ取引などの先物市場で取引されている。

 

 

牛一頭の交換のためにお金、

 

一俵のお米を持ち運びできないから代わりにお金、

 

このように、かつては価値の交換手段として目の前に実在する現物の代用として用いられていたお金が、現代ではその概念を超えて実在しないものに対して無限に発行されるようになった。

 

お金も金(ゴールド)という実在するものに関連付けをして発行していた時代までは良かったのだが、金本位制度から変動相場制に移行してからは信用力のある紙幣を発行する中央銀行が自由に無限に紙幣を発行し、その結果お金が独り歩きし世の中を支配するようになった。

 

信用創造という、ないものをあるものとして扱うことを始めてから、ある意味ではお金は世の支配者となったのかもしれない。

 

 

今の金融市場の歪を見れば1971年の通貨の金本位制度の崩壊と変動相場制への移行は歴史的転換点であったことに疑いの余地のはない。

 

 

 

 

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