「俺は思うんだ、シュン。

 誰かを本気で好きになると、そのひとのすべてが欲しくなる。心も、体も、未来も、いまも、過去も。そうだろう?心を独り占めしたいから嫉妬する。体と体をひとつにつなげたいからセックスする。未来が欲しいから結婚をする。いまの、この瞬間も離れたくないから、一つ屋根の下で暮らす。」


重松清 『カシオペアの丘で』






「いつも一緒にいて、くっついて、同じものを見るっていう愛し方じゃない愛し方、あるんだよ。シュンはそれに気づいたんだと思う。っていうか、恵理さんが、それを教えてくれたのかもしれない。」


「くっつきすぎると息が詰まる。同じ方角を向いて、同じものを見てると、相手のことが逆によくわからなくなる。ちょっとだけ離れて、好きなひとを見つめる、見守るっていう愛し方だってあると思うんだ」


重松清 『カシオペアの丘で』