深夜の帰宅。
学生としては少し許される時間じゃないかもしれないけど、僕の親は寛大だ。
もちろん、何の理由もなくこんな時間に帰宅したなら怒られるだろうけど。
「……うん、大丈夫。勉強になることが多くて、時間を忘れてただけだから。それじゃあ」
離れて過ごす親へ簡単に報告を入れると、持ち帰った資料を机の上に広げる。
目に入ったのは、彼女からもらった目覚まし時計。
(こんな時間じゃ、もう寝てるよね……)
去年までは枕元にあったそれも、何となく作業が進む気がして机の上に置いてある。
1時過ぎを差している時計が正確なことを確かめるように携帯を開いて、僕は溜息を吐いた。
先月から、ゴールデンウィークの予定よりも今日のことを気にしていたヒトミちゃん。
けれど、どうしてもスケジュールを調整することが出来なくて、学校を休んでまで制作現場に行くことになった。
おかげで今日は、同じマンションに住んでいるのに1度も会えずじまいだ。
(明日は早起きして、ヒトミちゃんのランニングに付き合おうかな)
ただ単に体調を崩した僕と違って、ヒトミちゃんは努力してキレイになった。
折角だからと、お互いに体型を維持するためトレーニングは続けていたけれど、最近は僕が忙しくなって付き合えなかったし。
そうしよう、と決めて広げた資料を片づけていると、マナーモードにしたままだった携帯が揺れる。
「え、ヒトミちゃん?」
――透クン、遅くまでお疲れ様!
ギリギリまで待ってたんだけど、当日に言えそうもないので明日にするね。
朝ご飯作りに行くから、楽しみに待ってて!――
あえて何のことかは触れてないけれど、しきりに今日の予定を聞いてきたのだからわかる。
小さな頃からずっと側にいて、いるのが当たり前すぎて、特別なことなんてしなくなりそうなのに。
(しかも、ついこの春まで格好良い人たちに囲まれていたのに)
魅力的になって言い寄られることも多いだろうに、ヒトミちゃんは僕といてくれる。
一応付き合ってる……のだろうけど、未だに実感がないなんて言えば怒られるかな。
好きになった頃から変わらず明るくて可愛い彼女が、幼なじみの壁を越えて隣にいることが不思議でならない。
だけど、これを夢にはしたくない。
去年の僕が宝物を1つ手に入れたのなら、今年の僕には何が出来るだろう。
やれば出来るということを教えてくれた君だから、僕ももう少し自信を持ちたい。
君と一緒に、ずっと笑い合っていたいから。