あちこちの(人様の)ブログで「親知らずが親知らずが」と書き散らしていたにんじんです。Lunaさんから(人様のブログのコメント欄で)「顛末記が聞きたいな~」と温かいお言葉をいただきましたので、1年3ヶ月ぶりに長屋の扉を開けてみることにしました。
 ああ、なんて久しぶり。鍵のおき場所も忘れてしまっています。パスワードなんだっけなんだっけ。あ、思い出した。※※※※※でした。
 がらがらがら。おじゃましまーす。どかどかどか、じゃなくて、おずおずおず。

 さて、顛末記というからには、そもそもの話ですね。
 そもそもわたくし、顔を出していない立派な親知らずを上下左右きっちりと4本抱えておりました(生えてないけどレントゲンにはしっかり写る)。それでも特に痛んだりすることもないままアラフォーの最終コーナーまできてしまい、普段は親知らずのことなんて考えたこともなかったのです。ところが昨年かかりつけの歯科医に、歯並びが変わってきていると指摘されてしまいました。これはどうやら親知らずが悪さをしているのではないかと。
 「このまま放っておくと、どんどん押してきて歯並びガタガタになっちゃうよ~。抜いておいたほうがいいよ~」と脅され、観念して仕事が暇になる4月に抜きましょうということに。
 もちろんわざわざ南の島で抜いてきたわけではありません。ごく常識的に、かかりつけ医の紹介状を持って、大学病院の口腔外科を訪れました。おずおずおず。

<抜歯当日>
 担当医はものすごく淡々とした先生。ここの予約も1ヶ月前にしか取れなかったぐらい込み合っていたので、きっと月に何十本も親知らずを抜く職人のような先生なのでしょう。レントゲンを眺め、淡々とリスクを説明されます。
 「下の歯は水平に生えていて、骨に埋もれていますので、骨を削って歯を割って抜くことになります。神経に近いのであごや舌に麻痺が残るリスクが、わずかですがあります」
 「ええー聞いてないよ(心の声)」
 「上の歯を抜く際ですが、まれに上あごを貫通し、副鼻腔炎を起こすことがあります」
 「えええーー(以下同文)」
 「リスクをご承知の上で治療を受けられる場合はこちらの承諾書にサインをお願いします」
 うむむ、いわゆるインフォームド・コンセント。これで「患者はリスクを知らされ、納得の上で治療に同意した」ということになるわけですね。いえ、別に舌がマヒしたり上あごに穴が開くことに納得したわけじゃないんですけど、ここで「コワいのでやめときます」という人はあまりいないでしょう。ビビりつつもサイン。
 うーん、どんな手術でもこうしたやりとりは交わされるのでしょうが、そしてそれは法律上やむをえないことなのでしょうが、できればもう少し親身な説明をしてほしいなあ。大体患者なんて弱い立場でびくびくしてるんだからさあ。まあ病院側としては「説明をした」という事実が一番大切なんでしょうから、無理は言えませんけど。ぶつぶつ。
 さて、いよいよ抜歯です。「1本ずつにしますか? 上下一度に抜きますか?」と聞かれ、4回も通うなんてヤダーと思い、迷わず「上下で」オーダー。
 「どっちからいきます?」
 「えーと、(どっちでもいいんだけど、いやどっちもいやなんだけど)じゃあ左で」
 まずは麻酔。前歯はグリンちゃんによると鼻の穴から注射針が出たような痛さだそうですが、奥歯はさほどではありません。でも「そんなに?」と思うぐらい何本も打ちます。感覚がなくなったところで処置開始。痛みはないのですが、ぎゅいんぎゅいんぎゅいんと骨を削っている音は聞こえるし、ハンマーで歯を割る音はごおんごおんと頭に響くし、生きた心地がしません。それでも約40分後、ようやく「終わりました」の声。ちくちくと傷を縫い合わせ、休むまもなく上の歯にうつります。あごが疲れるー。
 上の歯は割ったり削ったりはなかったのですが、なんだか「みしみしっ」「ばきばきっ」と不吉な音。まさか上あご貫通してないよね?ないよね?とびくびく。まあ耳元だから大きく響くのでしょうが…途中で痛くなってきて麻酔を追加してもらい、約15分後に無事抜歯。またちくちくと縫合して終了です。職人先生は汗をふきつつ、「結構大変でした」と淡々とおっしゃっていました。
 あーやれやれ終わった終わったとそのときは思ったのですが、本当に大変なのは(もちろん)それからでした。

<抜歯当夜>
 その日はバスと電車をのりつぎ、買い物までして自転車で帰宅。結構元気。でも麻酔が切れてくるとともに、だんだん痛みが強くなってきました。カロリーメイトをやっとのことで流し込み、痛み止めと抗生物質を飲み、頬に冷えピタを貼り付けてベッドへ。家族の夕食は店屋物ですませてもらいました。
 でも10時ごろ起きて再び痛み止めを飲みにいくと、食べたあとが散らかしっぱなしじゃないのさっ! ムキッ。今日ぐらいお皿洗ってくれたっていいじゃないよーとブツブツ言いながら片づけていたら、オットが降りてきて「ああ、あとでやろうと思ってたんだよ」ですって。「あとっていつよ。もう10時じゃないよ」とケンカを売る気力もないので、「そう……」と力なく答え、痛み止めの効いているうちにシャワーを浴びて、あとはひたすら眠りました。

<2日目>
 腫れた腫れた、腫れました。まるでパタリロ。ああ情けない。冷えピタを二枚ならべて貼って、マスクをして、何とか朝ごはんの支度。ぼーずは能天気に
 「ママ今日あんまりしゃべんないねー」って、気づけよこの腫れに。ちょっとマスクをずらして見せてやったら、
 「だ、大丈夫なの? それ治るの?」とビビっておりました。
 「治らなかったらどーするー?」と言ってみたら、
 「それは困るだろうねー」(←他人事かよ)
 「ははは、そりゃ困るよなー」(←オット)
 ムキーッ。一生パタリロだったらどうすんのさ。
 役に立たないオットとぼーずを追い出して一息。しかしここで問題がひとつ。わたくし今年は地区の委員になり、今日から4日間新入生の下校のお世話をしなくてはならないのです。大丈夫でしょうか? ピカピカの1年生ちゃんたち、こんな顔の腫れたおばちゃんを見て泣き出したりしないでしょうか? 
 下校時刻は11時半(早っ。大変ですね、新入生ママは)。マスクをしてなるべく髪で左頬を隠すようにすると、幸いそれほど目立ちません。まあ昨今マスクのおばちゃんもめずらしいものでもないし、ピヨピヨちゃんたちは自分のおしゃべりに忙しく(そうだよねーいっぱいしゃべることあるもんね)、泣かれずにすみました。それにしてもかわいい1年生の姿には心なごみます。うちのぼーずだってつい5年前にはねぇ…。
 午後はかかりつけ歯科医院に消毒へ。
 「ははは、腫れたねー。でもまあ普通程度だよ」
 そ、そうなんですか。傷口はきれいだそうで、さすが職人の技。帰宅後は部屋を暗くして、CDを小さな音でかけ流しつつ、ずっとベッドで丸まっていました。みなさん、抜歯の痛みにはyasさんご推薦のamiinaの「Kurr」がおすすめですよ。ぜひご家庭に一枚。さすがに痛みが解きほぐされるところまではいきませんけれど。いててて。

<3日目>
 起きてみると、昨日より腫れがひどくなっています。こまわりくんみたいです。口の中も腫れてしゃべれないー。そして37.5度の発熱。うげげ。解熱鎮痛剤を飲んで痛みをごまかしつつ必要最低限の家事をして、役に立たないオットとぼーずを追い出してから、ネットで情報収集。大丈夫なんでしょうか、この腫れ。一生こまわりくんだったらドウショウ。
「抜歯後の腫れは3日目がピーク。だんだんひいてきます」
 そ、そうだよね。これがピークだよね。これ以上腫れたら例える相手もいないもん。
「親知らずはなるべく若いうちに抜いてしまったほうがいい。トシとってからだと大変」
という記載にもぶつかり、思わず「おっしゃるとおり」とノンスタ風自虐ツッコミ。
 そうこうするうちに、またピヨピヨちゃんお迎えの時間。今日はマスクから顔がはみだしてしまいます。はははは。友達にも「あれ、どうしたのー?」と聞かれ、「実は親知らずを抜いて」と話すと、「ああ、わかるわかるー。腫れるよねえ」と結構経験者多数であることがわかりました。

<4日目>
 心なしか、腫れが少しだけ引いたような気がします。でもまだ微熱があり、鎮痛剤が手放せません。病院でもらった分がなくなってしまったので、イブプロフェンを買ってきました。今日で抗生物質もなくなってしまうので、感染してないかちょっと心配。
 午後、公園で遊んでいて雨に降られたぼーずが、友達5人つれて帰ってきました。どやどやどや。うちは公園の裏手にあるので、よく2次会会場(?)となるのです。
 「き、今日はおばちゃんちょっと具合悪いから、おとなしく遊んでね」
 「わっかりましたぁ~!!」
 「じゃあ奥で寝てるから、何かあったら呼んで」
 「はーーーい!!」
 もちろん6人の小学生男子がおとなしく遊べるワケもないのですが、ときどき「おい、※※※のお母さん具合わるいんだから、大声出すなよー」「あ、そっかー」などの声ももれ聞こえて、なんとなく心なごみます。

<5日目>
 かなり腫れが引いてきました! 熱も下がった。あー、よかった。ちゃんと体もがんばっているんだなあとしみじみ。抜歯してからずっとカロリーメイトとお粥ばかり食べていたのですが、やはりがんばっている体を応援しなくてはいけません。栄養バランスを考えてきちんと食べましょう。
 でもまだ噛めないので、戸棚から離乳食の強い味方だったミキサーを引っ張り出してきて、フル活用することに。頼んだぞミキサー。
 午後はピヨちゃんお迎えのあと、難関の保護者会。何が難関かというと、久しぶりのママたちとついおしゃべりしてしまうこと。「親ひらず抜いて、あんまいはべえないの~」といいつつ、ついついぺちゃくちゃ。帰ったらぐったり疲れていました。口がいたい~(←アホ)

<6日目>
 腫れはさらに引いて、やせたパタリロぐらいになりました。青黒くなっていた頬も、黄色っぽく変色。なるほど、打ち身が治る過程と同じパターンなんだ。内出血していた血液が少しずつ吸収されていくんですねー。よくみると、頬だけでなく首筋まで色が変わっています。黄色い蛍光ペンを塗りたくったかのよう。
 ところでずーっと流動食で、(せめて)ダイエットになるかなあと期待していたのですが、これがほとんど変わりませんでした(涙)。最初の2日で1キロ減ったのみ。摂取カロリーが減ると、体がそれでやっていけるように対応しちゃうんでしょうか。雪山で遭難しても人の倍は生きていられそう。まったくどこまで省エネ体質なんだか。

<7日目>
 やっとやっと抜糸です。かかりつけ歯科医でぱちんぱちんと糸を抜いてもらうと、引きつれがなくなってすっきりしました。まだ痛むけど、やっぱり1週間たつとずいぶん楽になります。あーやれやれ大変だった。
 でも帰り際、「つぎは右側だね!」と明るく言われてしまいました。そうだよ、これもう一回やるんだったよ…。とほほ。
 あ、次回はもう顛末記は書きませんのでご心配なく。字だらけのまっくろ記事に、長々とおつきあいありがとうございました~!(写真を載せる勇気はあるませんですた…)