藤井聡太竜王(王位・叡王・棋王・王将・棋聖=20)が渡辺明名人(39)に3勝1敗として史上最年少名人獲得まであと1勝に迫った、将棋の第81期名人戦7番勝負第5局が31日午前9時からの2日制で長野県高山村「緑霞山宿 藤井荘」で始まった。初日はじっくりした展開から、56手目を後手の藤井が封じて終えた。
午後6時30分の段階で手番の側が行う封じ手の15分前、渡辺が右桂を活用して決断を迫った。手番が回ってきた藤井は、時間をいくらでも使って考えたい局面で、20分考慮して立会人の田中寅彦九段(66)に「封じます」と告げた。
序盤、かど番の渡辺が工夫を凝らした。藤井の「雁木(がんぎ)」に対し、なかなか見ない「菊水矢倉」の陣形にした。金銀の位置を低くして玉を最下段に置くため、王手がかかりにくく耐久力がある。20年に棋聖、昨年王将、今年3月に棋王と続けて藤井に奪取されている。「最後のとりで」の名人だけは死守したいとの意地も含めた、巧みな指し回しだ。
藤井にとっては悩ましくてつかみどころがない形だろう。攻めの糸口になりそうな地点は、自陣のキズにならないようにと察知した渡辺に早々と消されている。
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