【第4回】:幻の作戦「嵐」発進 ― 晴嵐と伊400型の最終章
戦局が厳しさを増す1945年、伊400型潜水艦は、密かに“史上初の本土空襲”を狙っていた。
その目標――それは、パナマ運河。
大西洋と太平洋を結ぶ戦略上の要衝を破壊することで、アメリカ海軍の機動力を分断し、日本への圧力を少しでも遅らせようとしたのだ。
そのために開発されたのが、**潜水艦に格納された航空機「晴嵐」**だった。
海中からの空襲という逆転の一手
伊400型は3隻が建造され、そのうち2隻(伊400、伊401)は実戦投入可能な状態にまで仕上がった。
パナマ運河作戦「嵐」計画では、以下の流れが想定されていた:
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伊400型がハワイ沖に潜伏
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夜間に浮上し、甲板上で晴嵐を展開
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機体はカタパルトで発進し、数千キロ離れたパナマ運河を攻撃
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攻撃後は着水し、海上で潜水艦に回収される
世界初の「潜水艦による航空攻撃」という、まさに奇策だった。
実現しなかった決死の突撃
だが――。
パナマ攻撃の作戦が目前に迫った1945年7月、日本はすでに壊滅的な状況にあり、作戦は延期、最終的に中止となった。
戦局がさらに悪化し、ターゲットはウルシー環礁に停泊する米艦隊へと変更されたが、その出撃の直前、終戦の玉音放送が響く。
伊400型と晴嵐は、一発も撃つことなく歴史の影に消えていった。