【第19回】幻に終わった国産戦闘機 ― 日本が追い求めた“もう一つの空”

日本の航空自衛隊といえば、F-15JやF-2といったアメリカベースの機体が主力。
しかし、そこに至るまでには、「完全な国産戦闘機」を目指した数々の試みが存在しました。

その中でも代表的なのが、**「FS-X計画」**です。


FS-X計画とは?

1980年代、老朽化するF-1戦闘機の後継として、
日本は**「次世代の支援戦闘機を独自開発しよう」**と動き出します。

目的は、

  • 対艦攻撃

  • 地上支援

  • 高機動性

  • 最新の電子装備

これらをすべて国産技術で実現すること。
つまり、「F-15とは違う役割」を日本独自の視点で埋めようとした計画です。


ところが…アメリカとの政治的摩擦

当初、日本は完全な国産化を想定していましたが、
アメリカが強く反発。
「独自開発は、日米の防衛技術共有に反する」との圧力がかかり、
最終的には、F-16をベースにした**共同開発(という名の制約付き開発)**へと路線変更されました。

これが、のちの「F-2」になります。


幻の“純国産”試作案

FS-X計画では、**三菱重工が独自に設計した「三菱FS-X原案」**が存在しました。

特徴は…

  • エンジン2基(双発)

  • F-15に近い高機動性

  • ステルス要素も意識

  • 大型レーダーと国産電子機器

まさに「日本版の第4世代後半機」。
しかしこれは、政治の壁によって表舞台に立つことはありませんでした。


なぜ国産機は難しいのか?

  • 開発コストが膨大

  • エンジン技術の壁(国産は難航)

  • 同盟国(米国)とのバランス問題

  • 防衛産業の国内規模の限界

このような課題から、日本は現在に至るまで、
アメリカ技術に依存しながらも“部分的国産”という妥協を続けています。


そして未来へ:F-X(次期戦闘機)

しかし日本はあきらめていません。
現在進行中の**F-X(GCAP:日英伊共同開発)**では、
かつての“幻の純国産機”の夢を、国際協力という新たな形で実現しようとしています。


次回は、そんな日本の「国産戦闘機の系譜」を振り返りながら、
その源流とも言える**初の国産超音速機「T-2」**と、
**国産初の実戦機「F-1」**にスポットを当てます。

“幻の機体”だけじゃない、実際に空を飛んだ国産戦闘機の物語へ。