日本で草食男子が増加している理由は
「恋愛ルールの機能不全」 だと思います。




有名な社会学者・山田昌弘先生は、
『個性が多様化したことにより恋愛の正解が一つではなくなり、
個々に適した対応が迫られ、恋愛が面倒なものへとハードルが上がったから。』
と、草食男子の増加要因を説明されていますが、
私はそれは誤りだと思います。

個性が多様化しているとはいえ、それは諸外国ほどではなく、
以前の恋愛観・男女観は、マジョリティーとしてまだ色濃く残っています。
なので、戦略的にその多数派をターゲットにすれば、
以前ほどではないにしろ、相手を捕まえることは比較的容易なはずです。
実際、今でもそうやって恋愛を享受している層はしっかりいるわけです。

故に、山田先生がおっしゃるように、
草食男子たちは女性への個別対応を面倒と感じているのではありません。




注目すべきは、ターゲット(女性)の多様化ではなく、男性自身の多様化です。
それぞれがそれぞれの求める付き合い方や恋愛観を持つようになってきた。
たとえそれを明確に意識していない人でも、
何となく「多数派の恋愛観とは少し違うな」という意識が出始めた。
100人いれば100通りの付き合い方があって良いはずです。

それにもかかわらず、
機械的な愛情表現・儀式的な面など、
恋愛におけるルールは依然画一的なまま。


だから草食男子たちは、
ルール厳守の恋愛に対して、面倒・義務的だと感じてるようになったんです。



今の結婚制度も、古い法体系が時代に即さず、未婚率の上昇を招いています。
これと全く同様に、恋愛のルールも完全に時代遅れになっているんです。

フランスが、人生観の多様化に対応するため、
PACS(=結婚より規則が緩く同棲よりも法的権利を享受できる新しい家族組織)
を導入し、結婚制度を現代化させたことで、
多くの人が積極的に子育てを行えるようになり、少子化阻止に成功しました。

恋愛のルールも価値観の多様化に対応させなければ、
どんどん恋愛をする人は減るでしょう。

以上のように、
価値観の多様化
⇒古い恋愛ルールが機能不全
⇒草食増加

と繋がったわけです。





また、古い恋愛ルールが機能不全になっている理由は他にもあります。
第一に、経済的な理由、B/Cの逆転です。

恋愛における画一的なルールは、テレビ・小説・雑誌など、
上の世代(バブル以前に思春期を迎えた世代)
が発信する情報により若者にもたらされます。

しかし、彼らの恋愛は経済絶好調の時代の話ですので、
今やろうと思えば多大なコストがかかります。

今の不況時代の若者にとっては、
恋愛にかかるコストというデメリットが、
恋愛によって得られるメリットを逆転してしまった
んです。





第二に、そもそも論として、
人を好きになれる機会が減っています

人を好きになれば、
義務とは感じずに古いルール通りの行動ができる層はかなりいます。
ようは、好きになっていないからルールに従えないのです。

では何故好きになれる機会が減ったのか?

それは、現代の人間関係全般として、
地域コミュニティーのような限定的な共同体中心の社会から、
個と個が直接ネットワーク的に繋がる社会に移行してきた
からです。

共通の組織体に所属し、共有する時間が長ければ、
恋愛感情は生まれやすい傾向にあります。

しかし、様々な場所で様々な人と接する現代人は、
他者と薄く広く接しがちな傾向にあります。だから、
片思いができる機会が激減している。

現状の日本における恋愛は、
告白から始めることがマジョリティーのルールです。
だからなかなか片思いという状態まで気持ちが昇華できない環境にある現代人にとっては、
参入ハードルが高く、恋愛に参入できないのです。

古いルールの代名詞がこの「告白」
今日のネットワーク型社会では、
片思いにまで達した人しか恋愛市場に参入できないという「告白」の習慣は、
完全に機能不全を起こしてまっています。


ちなみに、「付き合う」という「動作」を表す言葉は、
諸外国語では殆ど使用されません。
「付き合っている」という「状態」を表す言葉だけ。
形式を重視し実質を重視しない日本独特な告白文化があるからこそ生まれた表現。






以上の論説を図にまとめてみるとこうなります。

・価値観が多様化した
・日本の経済力の低下した
・コミュニケーションがネットワーク型になった

 ↓
古いの恋愛ルールが機能不全
 ↓
草食男子増加




草食男子がダメというなら、
それを産んでいる古い恋愛ルールを見直さないとダメなわけです。