「おかげさま」と「ありがとう」 | 泉福寺ごえんさん日記

泉福寺ごえんさん日記

真宗大谷派の寺院こ住職をしております。
何気ないことや、思ったこと感じた事を書いてます。
普段のごえんさんでごじゃります。

「おかげさま」


夏が来ると「冬がいい」と言う


冬が来ると「夏がいい」と言う


太ると「痩せたい」と言い


痩せると「太りたい」と言う


忙しいと「暇になりたい」と言い


暇になると「忙しい方がいい」と言う


自分に都合のいい人は「善い人だ」と言い


自分に都合が悪くなると「悪い人だ」と言う

 
借りた傘も 雨が上がれば邪魔になる


金を持てば 古びた女房が邪魔になる


所帯を持てば 親さえも邪魔になる

 
衣食住は昔に比べりゃ天国だが


上を見て不平不満の明け暮れ


隣を見て愚痴ばかり

 
どうして自分を見つめないのか


静かに考えてみるがよい


一体自分とは何なのか

 
親のおかげ


先生のおかげ


世間様のおかげの固まりが自分ではないか


つまらぬ自我妄執を捨てて


得手勝手を慎んだら


世の中はきっと明るくなるだろう

 
「俺が」、「俺が」を捨てて


「おかげさまで」、「おかげさまで」と暮らしたい。





「ありがとうの握手で流した涙」


 
 
1991年、本田宗一郎さんは


亡くなっています。







生前、宗一郎さんは、


こんなことを言っていたそうです。


「素晴らしい人生を送ることができたのも、


 お客様、お取引先のみなさん、


 社会のみなさん、従業員のみなさんの


 おかげである。

 
 俺が死んだら、世界中の新聞に


 “ありがとうございました”


 という感謝の気持ちを掲載してほしい」
 
 
実は、宗一郎さんは結構早く、


社長を引退しているんです。


66歳で引退し、


いわゆる「会長職」にも就いていません。


「終身名誉顧問」にはなったんですけれども


仕事からは、一気に離れたそうです。


で、社長を辞めた後、


宗一郎さんは何をしたかというとですね、


日本中にある、ホンダの事業所…


販売店から工場から…当時、


700カ所あったそうですが、


その700カ所すべてを回って、


すべての従業員一人一人と握手して、


「ありがとう、ありがとう、


 いつもありがとう!」


と言い続けていたそうです。

 
 
しかも、中には、


2~3人しか働いていないような、


ものすごく田舎の販売店もあったのですが、


…そんなところも全部回ったそうです。


そして、その後、


海外事業部も全部回ったそうです。


全部まわって一人一人と握手して…


何年もかかったそうです。


周りの人たちは、



「ホンダの創業者が直々に握手しにいけば、


 社員のモチベーションはあがりますよね。
 

 仕事をもっと頑張ってくれて、


 業績も上がりそうですよね。

 
 だから握手しに行くんですね」


って言っていたそうです。


でも、実はそうじゃないんです。


宗一郎さんはそんなこと、


どうでもいいんです。


自分がお礼を言いたいから


まわっているだけだったんですって。
 
 
ある日ね、田舎の販売店をまわった時に、


車の整備をしていた人が、


「宗一郎さんが来た!」


って聞いて、喜んで走ってきたんですって。


握手してもらいに。


で、握手をしてもらおうと思って


自分の手を差し出した瞬間に、


「アッ!」って言って、


パッと自分の手を引っ込めたんですって。


なぜかと言うと、


手が油まみれだったんですね。


仕事中に急いで走ってきたから、


「今、洗ってきます!」


って、手を洗いに行こうとしたら、


宗一郎さんはその社員の背中に向かって、


「その油まみれの手がいいんだ!」


って言って、


その整備士を引き止めて、


握手したそうですよ、両手で。


でね、嬉しそうにその手をながめて、


目を細めて、


手の油のにおいをかぐんですって。


そんなの見てたら感動しますよね。


泣きますよね。
 
 
宗一郎さん、


こんなことも言っていたそうです。


「握手すると、みんな泣くんだ。


 そして、その涙を見て、自分も泣くんだ」

 
って。


すごいですよ、この人。


だから、本気ですよ。


この「ありがとう」は。


本当に心からみんなに


感謝しているんですよ。


本気で「おかげさま」「ありがとう」


って言おう